未払いの残業代は諦めずに相談を。残業代を取り返す計算方法も紹介します!
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平成30年12月18日、松山労働基準監督署は残業代を正しく支払っていなかった松山大学に対しての是正勧告を行いました。
残業代は労働時間に応じて適切に支払われるべきものです。もしも未払いの残業代がある場合、残業代の支払いを求めることができます。
未払い賃金の支払い請求権の時効は、実際に支払われるはずの給料日の翌日から3年間(令和2年3月31日までの分は2年間)です。3年以上前の残業代を取り戻すことはできませんので、なるべく早く行動を起こしましょう。
しかしながら、残業で忙殺されていて、未払い残業代を請求する方法も誰に相談すべきかわからず困っている方も少なくないでしょう。
今回は未払いの残業代を請求するためにまずやるべきことを、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
1、未払いの残業代はどこに相談するべき?
未払いの残業代は民法上の債権にあたり、会社に対して請求することになります。
現実には、法律の曲解やサービス残業の強制などにより、意図的に残業代を支払わない使用者も少なくないでしょう。まずは、自身の状況を整理し、専門の相談窓口を利用してみてください。
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(1)労働基準監督署の総合労働相談コーナー
労働基準監督署は、労働基準法など労働に関わる法律に基づいて企業への指導や立ち入り調査を行う行政機関です。労働基準監督署長は、重大な法律違反があれば、送検処分を行う権限を有しています。
全都道府県の労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーでは、労働に関する相談を受け付けており、無料・匿名での相談も可能です。また、重大な事案は労働基準監督署へ連携してもらうことも望めます。
ただし残業代未払いに対して労働基準監督署ができるのは行政指導までに止まります。個別の案件に対して、残業代を支払うように指導することはなく、職場体制・環境の改善が主目的となるため、職場が行政指導を受けたとしても、残業代を確実に支払ってもらえるとは限りません。 -
(2)労働条件相談ほっとライン
厚生労働省が外部事業者に委託して運営する労働相談窓口です。
- 電話番号……0120-811-610
- 受付時間……月~金:17:00~22:00、土日祝:9:00~21:00 (年末年始を除く)
全国どこからでも無料で、匿名での相談も可能です。夜間や土日祝にも相談できます。
話を聞いてもらうことで状況が整理でき、法律や判例の情報提供や、関係機関への紹介なども受けられるでしょう。 -
(3)弁護士
弁護士は法律問題全般の相談に応じています。
残業代の計算や各種書類の作成はもちろん、未払い賃金の支払請求の申し立てや、労働者の代理人として交渉を代行することも可能です。
法律に関わる資格は司法書士、社会保険労務士、税理士など他にもありますが、訴訟金額の制限がなく、代理人として可能な手続きに制限がないのは弁護士だけです。
弁護士に相談するメリットは、残業代トラブルが解決するまでワンストップのサポートを受けられる点と、残業代未払い以外の問題についても柔軟に対応できる点が挙げられるでしょう。 -
(4)社会保険労務士
社会保険労務士は、労務管理や給与計算、社会保険や年金等の手続きを行う職業です。複雑な割増賃金の計算についても確実なアドバイスをもらえるでしょう。必要な書類作成や任意交渉および裁判の立ち合いもしてもらえます。
ただし、弁護士のように労働者の代理をすることはできません。 -
(5)司法書士
司法書士は民法の分野に知見を持つ職業です。残業代も民法上の債権にあたることから、司法書士への相談も可能です。
法務大臣の認定を受け、簡裁訴訟代理関係業務ができる認定司法書士もいますが、引き受けられるのは140万円未満の案件に限られます。
2、残業代の未払いを請求できるケースとは
実際にどのようなケースで、未払い残業代を請求できるのでしょうか。いくつか例をご紹介します。
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(1)実際の残業時間に対し一部の残業代しか支払われない
残業代は、労働契約や就業規則で決められた所定労働時間より1分でも長く働いた時間に対して支払われる賃金です。たとえば、以下のような勤務実態があるケースは早急に相談しましょう。
- タイムカードを打刻させてから残業させられる
- 会社での残業は禁止されているが、残業を余儀なくされるほどの仕事を押し付けられている
- 会社での残業を禁止しているからと、自宅に仕事を持ち帰らされた
- 残業代が1時間単位でしかつかない。50分残業しても残業代ゼロ
なお、労働時間は分単位で計算し、端数の切り捨ては原則、認められません。
仮に毎月決まった時間を残業するとみなし(みなし残業)、あらかじめ残業代を給料と一緒に支払っている場合であっても、事前にみなされた残業時間を超えた分については、追加で残業代を請求できます。 -
(2)名ばかり管理職で残業代が支払われない
昇進を理由に残業代が支払われなくなった方は要注意です。
「管理職だから残業代は出ない」と主張する企業は、社内における「管理職」と労働基準法で決められた「管理監督者」の違いを知らずに(または意図的に)混同している可能性があります。
労働基準法で勤務時間の管理や制限を受けない「管理監督者」とは、労働者を管理または監督する立場にある人を指しますが、おおむねこのような立場を想定しています。- 経営の意思決定に関わっている
- 労働時間に対して裁量がある(出退勤の時間管理を受けない)
- 人事の決定権を持っている
- 一般社員より明らかに給与が高い(数万程度の役職手当てではなく、何十万もの差)
平社員と仕事内容が変わらない方や出退勤の時間に拘束されている方は、たとえ肩書きが部長だとしても、未払い残業代を請求できる可能性が高いでしょう。
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(3)年俸制を理由に残業代が支払われない
年俸制を理由とした残業代の未払いも少なくありません。「年俸制だから、いくら働いても一緒」というのが使用者側の主張です。
しかし年俸制でも月給制と同じように毎月給与が支払われ、毎月の労働時間や出退勤時間が決められています。仕事は同じなのに、契約の名目を年俸制にするだけで、残業代の差が出るのは合理性がなく不公平です。
毎月の所定労働時間があり、実際の労働時間を管理しているならば、年俸制でも月給制と同じように残業代を算出することができるでしょう。
3、未払い残業代の証拠を集め、未払い残業代を計算しよう
未払いの残業代を取り戻す方法としては
- 任意交渉
- 労働審判
- 訴訟
などいくつかの選択肢があります。
いずれの手段でも、未払い残業代を証明する証拠の有無が結果を左右するため、なるべく多く正確な証拠を集めましょう。証拠を集める際の注意点や残業代を計算するポイントをご紹介します。
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(1)勤怠時間のわかる証拠を徹底的に集める
残業代は成果ではなく、働いた時間に応じて支払われます。そのため、使用者側はタイムカードを打刻させてからサービス残業を強要したり、勤怠記録を改ざんしたりすることもあるようです。
労働時間の証拠が集まれば、証拠から推定される時間に応じて残業代を請求しやすくなります。そのため、以下のようなものをできる限り集めるようにしましょう。
「この時間まで働いていました」ということが証明できれば、使用者側は言い逃れできません。- タイムカード
- 電子錠のICカードによる執務室出入記録
- パソコンのログイン記録
- 自宅での作業の証拠となる、勤務時間外の業務連絡のやりとり(メールやSNS)
- 交通系ICカードの乗降履歴(自宅と職場それぞれの最寄り駅の出入場ログ、出張の記録)
- 業務日誌や手帳へのメモ
- SNSや家族への帰宅連絡
いずれも、取得日時を含め紙に印刷して保存しておくようにしましょう。パソコンやスマホのスクリーンショットによる画像の証拠も、印刷して保管してください。
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(2)証拠が集まったら正しく残業代計算を
証拠が集まったら正しく残業代を計算しましょう。
残業代は分単位での計算が原則であり、休日労働や深夜労働の時間分も上乗せされます。残業代の支払いが遅れたことによる遅延損害金も忘れてはいけません。
当事務所では、請求できる残業代の目安を算出する「残業代チェッカー」をご用意しております。
休日労働や深夜労働が含まれない状態である点にご留意いただいたうえで、どのくらいの請求額が見込めるのか今すぐ調べてみましょう。
●残業代チェッカー https://www.zangyou.jp/checker/
最終的に正確な未払い残業代の算出には、弁護士や社労士のチェックを受けることをおすすめします。
4、まとめ
民法改正により、令和2年4月1日以降、未払い賃金の請求権の時効は3年まで延長されることとなりました。しかしながら令和2年4月1日以降の賃金に対し適用されるため、それ以前の賃金は、2年の時効が適用されます。
また、未払い賃金の請求権には時効があり、請求権が消滅する前に、時効をストップさせなくてはなりません。ストップさせるには、使用者に対し内容証明郵便によって未払い残業代の支払いを求める通知を送る必要があります。
未払い残業代の相談やこういった手続きのご依頼は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスにお任せください。経験豊富な弁護士が、対応いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています