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残業時間の切り捨ては法律違反? 正しい計算方法を弁護士が解説

2021年07月05日
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残業時間の切り捨ては法律違反? 正しい計算方法を弁護士が解説

愛媛労働局が公表している「令和元年度個別労働紛争解決制度の運用状況」によると、令和元年度の愛媛県における総合労働相談件数は、1万3594件で、前年度よりも1261件増えています。平成30年度の総合労働相談件数は、1万1621件で前年度より712件増加していることからも、近年、愛媛県内での労働相談件数は、増加傾向にあることがわかります。

自分の給料明細を確認したところ、実際に働いた時間よりも給料明細上の残業時間が少ないと感じている方もいるのではないでしょうか。残業時間の計算において、「30分未満は切り捨て」などのルールが設定されていることもあり、実際の労働時間と異なることもあるようです。このような労働時間の切り捨ては認められるのでしょうか。

今回は、残業時間の正しい計算方法について、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。

1、残業時間の計算単位

残業時間の計算に関して法律上はどのようなルールが定められているのでしょうか。以下では、残業時間計算の基本と端数処理について説明します。

  1. (1)労働時間管理の基本

    使用者には、実労働時間、時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間を把握し、把握した時間にしたがって賃金を支払う義務があります(労働基準法108条、労働基準法施行規則54条1項5号)。

    厚生労働省でも、使用者に対して労働基準法の遵守を求めるために「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」といった通達により、以下のような項目を講ずるべき措置の一部として掲げています。

    ① 労働日ごとの「始業・終業時刻」を把握(確認、記録)すべきこと

    ② 始業・終業時刻の確認方法として次のいずれかの方法によること

    • 使用者が自ら確認し、記録すること
    • タイムカード、ICカードなどの客観的な記録で確認すること

    ③ 自己申告制によらざるをえない場合には、次のいずれかの措置を講ずること

    • 労働者に実態を正しく記録し、適切に申告することを説明する
    • 自己申告の労働時間が実態に合致しているかの実態調査をする
    • 適切な申告を阻害する目的で時間外労働の上限枠を設定するなどの措置をしない。社内通達などの措置が適正な自己申告を阻害する要因になっていないかを確認して、阻害要因となっている場合には改善すること

    ④ 労働時間の記録は3年間保存すること

    ⑤ 労使協議組織の活用
    このように労働基準法および通達が正確な労働時間の管理を要求していることからすると、労働時間管理の基本としては、日ごとに1分単位で計算することが原則であるといえます。

    したがって、15分単位や30分単位として、それに満たない端数を切り捨てることは、違法な労働時間管理となります。もっとも、端数を切り上げて扱うことは、労働者に不利になることはありませんので、そのような扱いは適法です

  2. (2)残業時間計算における端数処理

    残業時間計算にあたっても上記の労働時間管理の原則は当てはまりますので、残業時間計算にあたっては、1分単位での計算が原則となります。

    しかし、行政解釈では、1か月の残業時間を1分単位で計算して生じた合計時間数に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満の端数は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げる処理は、常に労働者にとって不利とはならず、事務作業を簡単にすることを目的としたものであると認められることから違法ではないとされています(昭和63年3月14日基発150号)。

    したがって、1か月単位での残業時間計算においては、上記のような端数処理をしたとしても、違法にはなりません。

  3. (3)端数処理にあたっての注意点

    残業時間の端数処理が認められているのは、あくまでも1か月単位での残業時間計算にあたって端数が生じた場合ですので、1日単位や1週間単位での端数処理は問題となる可能性があります。そのため、日々の労働時間の記録について、30分未満の端数を切り捨てにするなどの処理は認められません。

    また、行政解釈上適法とされる端数処理は、30分未満の端数を切り捨てにして、それ以上を1時間に切り上げる場合です。30分未満の端数が生じた場合を切り捨てにして、それ以上の端数はそのままという扱いについては、労働者にとって不利になりますので、そのような取り扱いも認められないと考えられます

2、残業代計算の具体例

では、原則どおり残業時間を計算した場合と残業時間の端数処理をした場合で具体的な残業代はどのように異なってくるのでしょうか。以下では、原則どおり1分単位で計算をした場合と残業時間の端数処理をした場合に分けて説明します。

  1. (1)通常の1分単位で計算をした場合

    月給32万円、1年間の勤務日数が240日、1日の所定労働時間が8時間として、ある月の残業時間が25時間45分であったとします。

    残業代を計算するにあたっては、「1時間あたりの基礎賃金」を計算する必要があります。通常の月給制の場合には、1時間あたりの基礎賃金は、「月給÷1か月あたりの平均所定労働時間」によって計算します。実際には支給手当の性質により基礎賃金は変わりますが、ここでは単純化するため月給32万円の全てを単価に組み入れるものとして計算して考えます。
    上記の例では、以下のような計算になります。

    1時間あたりの基礎賃金=32万円÷(8時間×240日÷12か月)=2000円

    したがって、通常の1分単位で計算をした場合の残業代は、2000円×25時間45分=5万1500円となります。

  2. (2)残業時間の端数処理によって計算した場合

    行政解釈によると1か月単位で計算をした場合に残業時間に端数が生じた場合には、30分未満を切り捨てにし、30分以上を1時間に切り上げるという扱いは適法となります。

    そのため、上記の例で残業時間の端数処理をした場合には、1か月の残業時間は26時間になります。したがって、残業時間の端数処理によって計算した残業代は、2000円×26時間=5万2000円となります。

3、未払い残業代があることがわかったら

未払いの残業代があることがわかった場合にはどのようにすればよいのでしょうか。

  1. (1)未払いの残業代は会社に請求可能

    会社の残業時間の取り扱いとして、1日ごとに労働時間の端数処理をしている場合や、60分に満たない部分をすべて切り捨てにするなどの方法がとられている場合には、違法な端数処理となる可能性があります。このような場合には、適法な残業時間の計算方法によって残業時間を算出し、残業代を計算した結果、未払いの残業代が生じている場合には、会社に対して残業代を請求することが可能です。

  2. (2)未払いの残業代を請求するための証拠

    実労働時間の管理は、本来は使用者の義務ですので、使用者が労働者の労働時間管理を適正に行っていかなければなりません。しかし、サービス残業が広く行われている実態もありますので、実際には、使用者が適正な労働時間管理を行っていない例も多く存在します。

    そのため、実労働時間に基づく残業代を請求するためには、労働者の側で実労働時間を立証していかなければなりません。立証方法には特に制限はありませんが、使用者が否定することができないような客観的な証拠を確保することが重要となります。
    具体的には、以下のような証拠が考えられます。

    ① タイムカード
    タイムカードやICカードなどによって労働時間管理がなされている場合には、タイムカードやICカードが実労働時間を立証する客観的な証拠となります。

    ② 日報
    タイムカードがない場合やあっても打刻漏れの補充として日報が提出されている場合には、その記載から、実労働時間の立証をすることが可能です。労働者としては、将来残業代を請求する可能性も踏まえて、日報には具体的な労働時間と労働内容を記入し、コピーを取っておくとよいでしょう。

    ③ メモ
    労働者が作成した労働時間メモも実労働時間の立証に役に立つことがあります。しかし、労働者自身が作成したメモだと、その信用性が問題になることがありますので、できる限り実際の業務内容を詳細に記載しておくなどの工夫が必要です。

    ④ その他
    その他にも、事業場の錠の開閉記録や、パソコンの電源を入れた時間・電源を切った時間を記録したログデータなども証拠として活用することができます。

  3. (3)残業代請求の時効

    客観的な証拠をそろえて残業代請求をすることができる場合であっても、時効期間が経過してしまえば、残業代の請求はできません

    残業代請求の時効は、労働基準法の改正によって、従来の2年から5年に変更されました。しかし、いきなり5年の時効期間にしてしまうとさまざまな影響が出てしまうことから、段階的な引き上げとして、当面の間は3年間が時効期間となります。

    したがって、令和2年4月1日以降、発生する残業代については、3年間で時効になります。

4、残業代の未払いは弁護士へ相談

未払いの残業代を請求しようと考えている場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)正確な残業代計算が可能

    残業代請求にあたっては、今回説明した残業時間の端数処理以外にもさまざまな問題があります。正確に残業代を計算するためには、労働基準法などの法律の知識だけでなく、多数の通達の理解も必要になってきます。これらの専門的知識に乏しい労働者では、正確な残業代を計算することが難しいといえます。

    弁護士に依頼をすることによって、正確な残業代計算ができるだけでなく、残業代計算にあたって必要となる証拠収集も任せることができます

  2. (2)会社との交渉を一任することができる

    未払いの残業代が生じていたとしても会社が素直に支払ってくれるわけではありません。残業代を請求するためには、労働者個人が会社と交渉をしていかなければなりません。しかし、労働者と会社では、交渉力などの面において労働者が圧倒的に不利な立場にありますので、労働者個人が交渉を進めていくことは容易ではありません。

    弁護士であれば、労働者の代理人として会社と交渉を進めていくことが可能です。会社側が言い逃れできないように客観的な証拠に基づいて説得的な主張を展開していくことによって、交渉による早期解決を期待することができます。仮に、交渉で解決することができなかったとしても、弁護士であればその後の労働審判や訴訟手続きについても任せることができるので安心です。

5、まとめ

労働時間の計算は1分単位での計算が原則であり、端数処理は認められないのが原則です。残業時間については、例外的に端数処理をすることができる場合もありますが、通達に基づくルールを満たした場合に認められるに過ぎません。

労働時間の端数処理がなされている場合には、違法な端数処理であることもありますので、不安がある場合には、一度弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。残業代請求に関するご相談は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでお気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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