ブラック企業の特徴と残業代を請求する方法や手順について
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昨今では、コスト削減を理由に残業代を支払わないまま従業員に長時間サービス残業をさせる、いわゆる「ブラック企業」が度々ニュースで取り上げられ、深刻な社会問題となっています。残業代を支払わないことは本来労働基準法違反なのですが、まだまだコンプライアンス意識が企業社会全体に浸透していないことや、労働基準関係法令違反に関する意識があまりない経営者や管理職も多いことから、残業代を支払わないブラック企業がまだまだ多い
本記事では、そんなブラック企業の特徴と、ブラック企業に対して残業代を請求する方法や手順について解説していきます。
1、ブラック企業の定義は
2013年の流行語大賞にも選ばれ、近年社会問題化している「ブラック企業」ですが、厚生労働省では明確に定義していません。厚生労働省のウェブサイトには、ブラック企業の「一般的な特徴」として以下のような内容が記載されています。
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(1) 極端な長時間労働やノルマを課す
社員の意に反して、朝早い時間から夜遅い時間まで働かせる、所定労働時間内では到底こなせないような量のノルマを課すなどの特徴が会社にあれば、ブラック企業と言えるでしょう。
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(2)サービス残業やパワハラが横行している
所定労働時間を超えて残業しても残業代を支払わないまま働かせる、上司が社員のいる前で部下を毎日怒鳴りつける、上司の言うことには逆らえない雰囲気がある、といったことが横行していることもブラック企業である現れだといえるでしょう。
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(3)労働者に対し過度の選別を行う
上司が、自分の気に入らない部下に無理難題を課したり、逆に仕事をまったく与えずに退職に追い込んだりするのも、ブラック企業の大きな特徴です。
2、ブラック企業と言われる会社に共通する特徴とは?
ブラック企業と言われる会社に共通する特徴には、上記のほかに以下のような特徴もあります。自分が働いている会社がこれらの特徴に当てはまっていないかどうかチェックしてみましょう。
ブラック企業の特徴
- 常時採用活動を行っている
- 不当な配置転換や異動を命じられる
- なかなか辞めさせてくれない
- 就業規則や賃金規定がない
- 精神論がまかりとおっている
3、法律で定められている労働・残業時間について
ブラック企業と言われる会社では、長時間労働が当たり前のようになっています。しかし、1日あたり・1週間あたりの労働時間や残業に関しては、労働基準法で明確に定められています。
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(1)1日8時間以内、週40時間が原則
労働基準法では、労働時間の上限は「1日8時間以内、週40時間以内」と定められています。これを「法定労働時間」と言います。
これに対して、企業ごとに定める労働時間を所定労働時間と言います。
所定労働時間は、法定労働時間を上回ることができません。 -
(2)時間外労働をさせるには36協定が必要
業務の都合でどうしても法定労働時間外や休日に労働させる必要がある場合は、事業所の代表と従業員の代表(もしくは労働組合)との間で書面による協定を締結し、労働基準監督署に届出をすることが義務付けられています。労働基準法36条に規定があるため、36(さぶろく)協定と呼ばれています。
もっとも、36協定を結べばどれだけ残業させてもいいという訳ではありません。
一般労働者の場合、残業時間の上限は次のとおりです。(厚生労働省 時間外労働の限度に関する基準:平成21年5月29日厚生労働省告示316号)
期 間 限度時間 1 週 間 15時間 2 週 間 27時間 4 週 間 43時間 1 か 月 45時間 2 か 月 81時間 3 か 月 120時間 1 年 360時間 -
(3)時間外労働には割増賃金が支払われなければならない
法定労働時間を超えて従業員を働かせる場合は、働いた時間分の基本時給に対し25%上乗せした割増賃金を支払うことが企業に義務付けられています。
また、22時から翌朝5時まで深夜残業をさせた場合はさらに25%増、法定休日に労働させた場合は35%増の割増賃金を支払わなければならないことになっています。
また、割増賃金を支払わなければならない理由が複数ある場合には、割増賃金が重複して発生します。たとえば、時間外労働が深夜残業に及んだ場合には、合計50%(25%+25%)以上の割増賃金を支払わなければならないのです。
4、ブラック企業によくある未払い残業代が発生するケース
ブラック企業では、以下のような未払い残業代が発生する傾向があります。
一般的にみてもこれが労働時間であることはあまり認知されていないので、勤務先がブラック企業ではないと思われている方も一度チェックしてみましょう。
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(1)残業代込みの給与体系になっている
変形労働時間制やみなし労働時間制を採用している企業などでは、「うちは残業代込みの給与になっているから残業代はない」と上司にいわれることがあります。
しかし、変形労働時間制やみなし労働時間制であっても、残業代を請求できる場合があります。 -
(2)始業時間前に着替えや準備、清掃が義務づけられている
サービス業関連の業界では、始業時間よりも早く来て会社指定の制服に着替えたり、開店前の準備や清掃をしたりすることが義務付けられている会社があります。
しかし、これらの時間も会社に拘束されているため労働時間であると考えられていますので、始業前の着替えや準備、清掃の時間が給与に含まれていない会社は、コンプライアンス意識の低い企業と言えるかもしれません。 -
(3)名ばかり管理職
メディアでも大きく取り上げられるのが、「名ばかり管理職(店長)」の問題です。
法律上、「管理監督者」には、労働時間や休日に関する労働基準法が適用されません。
そのため、従業員に「店長」「部長」といった役職名をつけて残業代の支払いを逃れようという企業があるのです。
しかし、管理職に見える肩書がついていても、名目だけで実質的に管理監督者にはあたらない場合、残業代を支払わないことは違法になります。
5、ブラック企業に残業代を請求するならまずは証拠を
会社に残業代を請求するのはとても勇気がいることだと思います。
しかし、思い切って残業代を請求することは、自分のためだけではなく他の同僚のためにもなります。残業代を請求するには、まず証拠集めを行うことが大切です。
残業代請求を行うのに最も有力な証拠は、タイムカードやIDカードでの入退室記録データです。また、業務で使用したメールやFAXの送信記録も客観的な証拠として採用されやすいと言えます。
6、ブラック企業に残業代を請求する4つの方法について
ブラック企業に残業代を請求する方法としては、
- ①会社と任意交渉をする
- ②労働基準監督署に申告して是正勧告してもらう
- ③労働審判で請求する
- ④通常訴訟で請求する
という4つの方法があります。
それぞれの方法について、具体的にどのように請求するのかについて説明していきます。
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(1)会社と任意交渉をする
残業時間からもらえるはずの残業代を算出した上で、会社側と交渉します。
相手がブラック企業であれば個人で交渉しようとしても取り合ってもらえないかもしれませんが、弁護士に依頼をして弁護士名義で内容証明郵便を送れば、交渉のテーブルについてもらえる可能性が高くなります。 -
(2)労働基準監督署に申告して是正勧告してもらう
また、労働基準監督署に相談に行き、会社に対し是正勧告をしてもらう方法もあります。会社側に相談者の氏名や相談内容がわからないよう配慮もしてもらえるので、安心して相談できるでしょう。ただし、昨今は残業代請求の相談件数も増えており、労働基準監督署に相談してもすぐには動いてもらえない可能性もあります。
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(3)労働審判で請求する
会社との任意交渉がうまくいかない場合は、労働審判を申立てて解決を図ります。
まず労働審判申立書を労働契約書、賃金規定、タイムカードなどの証拠資料とともに裁判所に提出します。労働審判が進む中で審判委員会から調停案が提示されるので、当事者双方で合意ができれば調停調書が作成され、労働審判が終了します。調停が整わない場合は審判がなされ、当事者双方が合意できれば審判が判決と同等の効力を持つことになります。
労働審判は、原則として3回以内の期日で終結させることになっています。
もし、審判に不満があれば審判から2週間以内に異議申し立てを行います。すると審判の効力は失われ、通常の訴訟に移行します。 -
(4)通常訴訟で請求する
通常訴訟で会社側と争う方法もあります。
最初から訴訟を提起する場合のほかに、労働審判に対して適法な異議申立てがなされた場合も含まれます。
訴訟になると、決着がつくまで半年~1年の期間を要することになります。
しかし、通常訴訟を提起すれば、未払い残業代だけでなく、付加金と、遅延損害金(在職中は年率6%、退職後は年率14.6%)をブラック企業に対して請求できる、というメリットもあります。
7、ブラック企業に残業代を請求するなら松山オフィスの弁護士にご相談を
ブラック企業で働いていて、残業代を払ってもらえなくてお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでご相談ください。経験豊富な弁護士が全面的にお客様をサポートいたします。面倒な交渉や書類作成もすべて当事務所の弁護士が行いますので、かなり負担が軽減されると思います。
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(1)残業代請求に関する法律相談は何度でも無料
当事務所では、残業代請求に関する法律相談は何度でも無料です。
また、着手金も無料で、報酬は会社側から得られた経済的利益の中から一部をいただく形になっているので、最初の段階でお客様に大きく経済的負担がかかることはありません。 -
(2)労働問題専門チームがお客様をサポート
ベリーベスト法律事務所では、オフィスの枠を超えて構成された労働問題専門チームを設けており、日々全国の弁護士・スタッフが緊密に連携を取りながら問題解決にあたっております。全国の弁護士と協力しながら解決することが可能ですので、どうぞ安心して当事務所のサービスをご利用ください。
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