工場勤務の変則的なシフトでも残業代が発生するの?

2020年05月20日
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工場勤務の変則的なシフトでも残業代が発生するの?

政府主導で働き方改革が推し進められているとはいえ、すべての企業の労働環境が急激に改善されたとはいえません。中小企業のなかには、長時間労働や当たり前のようにサービス残業を強いる企業もあります。

松山労働基準監督署内に設置されている「松山総合労働相談コーナー」では、あらゆる分野の労働問題についてアドバイスを提供しています。電話での相談や女性相談員による対応といった心強いサービスもあるので、不安や疑問があれば気軽に相談すると良いでしょう。

長時間労働や残業代の未払いは、労働者にとって深刻な問題です。
特に、シフトで働くことの多い工場勤務では「残業代がもらえない」といったトラブルが少なくありません。

もし、こんなトラブルに直面しているのであれば「どうせ解決しない」「仕方がない」と放置するのではなく、法令に基づいた解決を目指しましょう。
今回は、特に工場勤務における残業代の考え方や計算方法、未払いの残業代を請求する方法や流れについて、松山オフィスの弁護士が解説します。

1、未払い残業代が発生する5つの代表的なケース

「残業代が支払われない」という悩みは、いくつかのケースに分類されておおむね次のいずれかに当てはまります。

  1. (1)固定給部分に残業代が含まれている

    従業員の実労働時間が把握しにくい営業職などでは「固定給の部分に残業代が含まれている」というケースがあります。

    固定残業代と呼ばれる方法ですが、この方法を採用する場合は求人票や雇用契約書に「固定給に残業代◯時間分、◯万円を含む」と明記する必要があります。この記載を超えた時間の残業については残業代が支払われるべきですが、「記載があれば残業代を支払わなくて良い」といった誤った認識の会社も実は珍しくありません。

  2. (2)年俸制で残業代が支払われない

    年俸制を採用している会社では「年俸なので残業代は発生しない」と誤解していることが多いようですが、年俸制でも所定の労働時間を超えた勤務に対しては残業代が発生します。

    同じように「1日あたり◯万円」といった日給制でも、所定の労働時間を越えた勤務には残業代が発生します。

  3. (3)管理職なので残業代が支払われない

    労働基準法には労働時間や休憩・休日などの規定について「監督もしくは管理の地位にある者には適用しない」という定めがあります。(労働基準法第41条2項)

    この規定を理由に「管理職には残業代を支払わない」とする会社もありますが、労働基準法による「監督・管理の地位にある者」の定義と会社内の「管理職」は必ずしも一致しません。

    工場勤務では、職長や班長といった少単位のリーダーも管理職として扱われる会社がありますが、実は労働基準法上では管理職に該当しないケースも少なくないのです。

    経営に関与していない、他の従業員と同様の職務内容であるなどの場合は、社内で管理職と呼ばれる立場にあったとしても残業代が発生するケースがあります。

  4. (4)残業時間の集計が正確ではない

    残業代は「残業時間」に基づいて算出されます。

    本来、労働基準法の趣旨に従えば残業時間は1分単位で集計されるべきであり、15分単位や30分単位といった方法で残業時間を切り捨てる集計方法は違法となります。

    例外的に1か月単位で30分未満の端数を切り捨て処理することは認められていますが、これ以上の切り捨ては労働者にとって不利益となるため違法です。

  5. (5)一定時間を超えると残業にカウントされない

    「1か月の残業時間は45時間まで」といった規定があることを理由に、これ以上の残業をカウントしないといったケースもありますが、明らかな違法行為です。

    平成31年4月には、働き方改革関連法によって時間外労働の上限が45時間に規制された趣旨は、「規定を越えたので残業時間にカウントしない」のではなく「規定を超える残業をさせない」という趣旨のものになります。

2、残業代の計算方法とは? 工場勤務のシフトで残業代は変わる?

残業代はどのように計算されるのでしょうか?
残業代の計算方法の基本や、工場勤務におけるシフトで残業代が変わるのかについて解説します。

  1. (1)残業代の計算方法の基本

    残業代の計算は、次の計算式で算出します。

    • 時間外労働の時間×1時間あたりの賃金×割増率1.25


    1時間あたりの賃金は、基本給を1か月の所定労働時間で割ると算出できます。
    所定労働時間とは、いわゆる「定時」で働いたときの総計で、会社の就業規則によって定められています。

    ただし、労働基準法では1日につき8時間、1週間で40時間までが上限と定められているため「当社は所定の労働時間が10時間だ」といった規則を定めることはできません。

  2. (2)夜勤では深夜労働が加算される

    工場勤務では、朝から夕方までの日勤勤務のほか、昼から夜間まで、夕方から早朝までといった夜間勤務のシフトが導入されることもありますが、基本的な考え方は変わりません。
    会社が就業規則で定めた所定労働時間内は基本給に含まれ、これを越えた労働時間には残業代が発生します。

    また、所定労働時間が8時間を越えている場合は、法定労働時間を越えているため超過分が残業代の支払い対象となります。

    ただし、午後10時から翌朝午前5時までの間の勤務は、たとえ所定労働時間内でも割増賃金が発生することが考えられます。一般的に「深夜手当」や「夜間勤務手当」などと呼ばれており、1時間あたりの賃金が1.25倍になります。

  3. (3)24時間勤務や3交代勤務の場合

    工場勤務では、一昼夜を通しての24時間勤務や3交代勤務といったシフトが採用されていることがあります。24時間勤務を終えて翌日・翌々日が休みの3交代勤務では、24時間勤務のすべてが基本給になるわけではありません。

    労働基準法で制限されている1日あたりの労働時間は8時間までなので、残りの労働時間はすべて残業扱いとなる余地があります。

    また、基本勤務に含まれているとしても、午後10時から翌朝午前5時までは夜間割増賃金が発生するので、この間は時間外割り増し1.25倍と夜間割り増し1.25倍を合計して1.5倍が支払われます。

    ただし、就業規則で変形労働時間制の採用が明記されている場合は、1週間あたりの平均労働時間が40時間までであれば法定労働となります。

    変形労働時間制では、月単位・年単位で残業時間を算出するため、計算が複雑になります。
    「残業代チェッカー」などのツールを活用して、未払い残業代がないかをチェックしてみましょう。

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3、未払い残業代を請求する流れとポイント

残業代の考え方や計算方法を詳しくみると「これまでに残業代が発生していたはずだ」というケースもあるでしょう。では、未払いの残業代がある場合、どのように請求すれば良いのでしょうか?

  1. (1)未払い残業代を請求する場合の流れ

    未払い残業代を請求する場合は、次のような流れになるのが一般的です。

    • 未払い残業代を計算する
    • 会社に未払い残業代の支払いを交渉する
    • 会社が支払いを拒んだ場合は裁判所で労働審判や訴訟を提起する


    未払い残業代の請求には、根拠となる「未払いとなっている残業代はいくらか?」を明確にする必要があります。
    残業時間・残業代は、労働基準法の規定に照らして就業規則や実際の勤務状況から算出することになるため、労働関係の法律や労務に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

  2. (2)未払い残業代の存在を証明する証拠

    未払い残業代の存在を証明する証拠としては、次のようなものが挙げられます。
    労働相談や弁護士への相談の際にも必要になるので、入手できる限りそろえておきましょう。

    • 就業規則
    • 給与明細
    • タイムカード
    • 勤怠管理表
    • 勤務表・シフト表
    • 時間外勤務の指示書や命令を示すメッセージなど
    • 端末のログイン・ログアウトの履歴
    • 残業の存在を記録した手帳など
    • 同僚などの証言


    残業時間や残業代の算定、会社との交渉にも証拠が必要ですが、会社が未払い残業代の支払いを拒んで裁判に発展した際には具体的な証拠の提示が求められます。
    ここで挙げたものだけでなく、会社の運用方法によっては別のものが証拠となるケースがあるので、幅広い証拠収集を心がけましょう。

4、未払い残業代の請求を弁護士に相談すべき3つの理由

未払い残業代の請求は、自分ひとりで対処するよりも弁護士に相談するのが賢明です。
ここでは、未払い残業代の請求を弁護士に相談すべき3つの理由を解説します。

  1. (1)未払い残業代を正確に把握できる

    未払い残業代を請求するには、正確な残業時間や1時間あたりの賃金などを算出する必要があります。ところがこの計算は、就業規則や労働基準法の規定と複雑に絡み合っているため、容易ではありません。

    弁護士に相談することで、正確な残業代や過去の未払い分が把握できます。

  2. (2)会社との交渉を任せることができる

    未払い残業代の請求は、現に勤務している会社や、過去に勤務していた会社を相手取って請求することになります。請求しようにも遠慮がちになってしまったり、会社から相手にされなかったりといったケースは珍しくないでしょう。

    弁護士に交渉を一任すれば、遠慮なく請求ができるうえに、会社の対応も誠実なものになることが期待できます。

  3. (3)訴訟などの手続きのサポートが受けられる

    会社が未払い残業代の支払いを拒んだ場合、裁判所の判断に委ねることになります。訴訟などの手続きは、裁判所が指定した平日におこなわれるため、仕事を休んで出廷する必要があり、労働者にとっては大変な手間となります。また、訴訟になれば証拠の提出や資料の作成なども大きな負担になるでしょう。

    弁護士に依頼すれば、労働者の代理人として裁判所への証拠資料の提出や出廷などが可能になります。裁判所の手続きは難しい点が多くありますが、弁護士が代理人となれば、その心配をする必要がありません。

5、まとめ

製造業などをはじめとした工場勤務では、長時間労働が課せられたり残業代の未払いが常態化していたりといったケースが珍しくありません。また、変形労働時間制を採用していることを理由に適正な残業代が支払われていない会社も存在しています。

工場勤務で未払い残業代を支払ってもらいたい、未払い残業代があるはずだが会社が対応してくれないといったお悩みがあるようでしたら、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでご相談ください。未払い残業代の算出や請求を含めた労働トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、労働者の利益を勝ち取るため徹底的にサポートします。

工場勤務の未払い残業代トラブルを解決するには、まずは実際の労働時間や賃金、就業規則などを詳しく調べる必要があります。未払い残業代に関する相談は何度でも無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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