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歩合制に最低賃金の保証はある? 残業代の計算方法も弁護士が解説

2021年03月22日
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  • 歩合制
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歩合制に最低賃金の保証はある? 残業代の計算方法も弁護士が解説

令和2年3月30日に、歩合給を採用するタクシー会社に対して、訴えを起こした従業員の主張が認められる判決が下されました。同社は「残業代を歩合給から引く」という賃金規則を採用していましたが、最高裁判所によって労働基準法の本質から逸脱していると判断されたのです。

歩合給は、労働者のあげた成果に基づいて給与計算をする制度を言います。ただ、企業が歩合制を正しく理解していない、あるいは悪用しているなどから、裁判沙汰になることが少なくありません。

この記事では、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が、残業代計算や最低賃金との関係性など、歩合給の基本的な内容を解説しています。

松山でも歩合制を採用している企業が散見されますので、万が一の場合に自分の身を守るための情報として、おさえていただければ幸いです。

1、歩合給と固定給の違い

最初に、歩合給のおさらいを、固定給との違いやメリット・デメリットなどからしておきましょう。

  1. (1)歩合給とは?固定給とは?

    歩合給とは、自分の力で稼いだ売り上げや、とった成績に応じて賃金が決定する給与制度です。変動給制、出来高払い制、請負給制とも呼ばれています。

    一方、固定給は、一定の労働時間に対して支給される賃金が決まっている給与制度です。月給○○円、時給○○円がそれにあたり、多くの企業に採用されています。

  2. (2)歩合給と最低賃金

    労働基準法第27条によれば、使用者は、歩合給で使用する労働者に対して、労働時間に応じて一定額の賃金を保証しなければならないと規定されています(出来高払い制の保障給)。

    したがって、雇用契約を結ぶ以上、企業は最低賃金以上の給料を支払わなければいけません。愛媛県の最低賃金は時給793円(令和2年10月3日改正)です。

    また、すべての賃金を歩合給にする完全歩合給制の導入は、違法となります。

  3. (3)歩合給が労働者にもたらすメリット・デメリット

    歩合給のメリットは、仕事の成果がダイレクトに反映されるため、努力の分だけ高い給料がもらえることです。固定給のみという給与体系より短期間で大きな収入を得られる可能性もあります。

    その反面、安定して高い給料を得るためには、一定の成果を常に出し続けなければいけません。常にモチベーションを保っておかないと給料が下がるので、精神的な負担を感じやすい制度ともいえるでしょう。

    また、業界全体の悪い流れや会社の信用力の低下などの自分の力が及ばないことが原因で成績が伸び悩み、賃金に影響が出る可能性があるのも歩合給のデメリットです。

  4. (4)歩合給がよく採用される業界

    歩合給は、一定の業種で見受けられます。たとえば、タクシー業ならお客さんから支払われた運賃の○○%を支給、運送業なら運行回数1回につき○○円支給といった具合です。

    また、各種業界の営業職も導入されやすい仕事です。不動産営業の求人募集で、成約数1件あたり○○円支給する、と記載された内容が時折見られます。

2、歩合給でも残業代は発生する?

前述のとおり、歩合給は成果に応じて給与計算が行われる制度です。

ところで、労働者の中には、「歩合給だから残業代は出ない」「歩合給の中に残業代が入っている」と言われ、長時間働いているわりに、思ったより給料がもらえていない方がいます。

これらは違法ではないのでしょうか。以下、詳しく見ていきましょう。

●原則的には発生する
まず、「歩合給だから残業代は出ない」というパターンは、結論から言うと違法です

歩合給であっても、原則として固定給のみの労働者と同様に残業代が発生します。歩合給は仕事の成果に対する賃金、残業代は時間外労働に対する賃金であって、まったくの別物だからです。

したがって、実際の労働時間が所定労働時間を超えればその分の賃金を、さらに時間外労働(1日8時間、週40時間)を超えれば割増賃金をもらうことができます

次の「歩合給の中に残業代が入っている」というパターンですが、こちらは一定のルールを守らなければ無効とみなされます。

残業代を含めたいなら、企業は就業規則に「通常の労働時間で発生する賃金と、残業によって発生する賃金」を明確に分けた文言を記載しておかなければなりません

3、歩合給の残業代計算方法

歩合給で働いていて、残業代が支払われていないときはもちろん、労働時間のわりに給料が少ないと感じていたら、一度計算するのをおすすめします。

以下、「固定給+歩合給」で働いている労働者の残業代計算方法をご紹介します。

  1. (1)固定給部分の残業代を計算する

    「固定給+歩合給」で働いている労働者の残業代は、固定給部分と歩合給部分に分け、それぞれの残業代を求めてから計算します。

    固定給部分は、賃金単価×残業時間×(割増率+100%)で計算が可能です

    賃金単価は、基本給に諸手当(通勤手当や家族手当など個人の事情に左右されるものは除く)を加えた金額を所定労働時間で除して算出されます。

    割増率は、時間外労働や深夜労働であれば25%、休日労働であれば35%、時間外労働かつ深夜労働の場合は50%と定められています。

  2. (2)歩合給部分の残業代を計算する

    歩合給部分は、賃金単価×残業時間×割増率で計算ができます

    歩合給は、労働者が働いたすべての時間によって生じた賃金とみなすのが一般的です。そのため、歩合給部分の賃金単価を求める際は、歩合給を総労働時間数(所定労働時間+残業時間)で除して求めます。

    固定給部分のときと異なり、割増率に100%を加えないので注意しましょう。これは、歩合給の場合には、残業時間に対する時間当たりの賃金(100%部分)は支払われていると考えるからです。

  3. (3)固定給部分と歩合給部分を足し合わせる

    固定給部分と歩合給部分の残業代をそれぞれ計算したら、あとは足し合わせることで1か月分の残業代が算出できます。

    ひとつ具体例を見てみましょう。

    固定給25万円、役職手当3万円、歩合給7万円で、ある月の所定労働時間が176時間の労働者がいたとします。その方が、所定労働時間に加えて時間外労働を25時間(うち深夜労働12時間)、休日労働を8時間しました。このときの残業代は、次のとおりに計算します。

    ●固定給の残業代
    固定給部分の労働単価

    28万円÷176(平均所定労働時間)≒1591円


    固定給部分の残業代

    • 法外残業:1591円×13×125%(割増率)=2万5853円
    • 休日労働:1591円×8×135%(割増率)=1万7183円
    • 深夜労働:1591円×12×150%(割増率)=2万8638円


    合計7万1674円

    ●歩合給の残業代
    歩合給部分の労働単価

    7万円÷(176+25+8)≒335円


    歩合給部分の残業代

    • 法外残業:335円×13×25%
    • 休日労働:335円×8×35%
    • 深夜労働:335円×12×50%


    合計4037円

    したがって、残業代は7万1674+4037=7万5711円となります。

4、未払い残業代や最低賃金を請求する方法

算出した残業代と給与明細の数字を比較したとき、明らかに差が生じている場合は、給与計算の中に残業代が含まれていない可能性があります。最後に、会社に対して未払い残業代を請求する手順をご紹介します。

なお、残業代を計算する中で、固定給部分の基礎賃金が最低賃金より低かった……とわかるケースもしばしばあります。その場合も同様の手順で請求できますので、参考にしてみてください。

  1. (1)証拠を集める

    最初に行いたいのが、残業代が支払われていないこと(最低賃金の場合は、それより下回っていること)を示す証拠の収集です。労働時間や給料にかかわる証拠は、できるかぎり集めましょう。

    特に重要なものとしては、就業規則、雇用契約書、給与明細、タイムカード、業務にかかわるメール、労働時間が書かれた日報などがあげられます。

  2. (2)内容証明郵便を送る

    証拠をそろえたら、賃金請求の内容を記した書類を、内容証明郵便で送ります。内容証明郵便は、書式が決まっているので、作成前に郵便局に問い合わせるかウェブサイトで確認しましょう。

    なぜ、内容証明郵便を送るのかと言うと、賃金請求を会社側にしたことを証拠として残すためです

    賃金請求には時効があり、それをいったんストップさせるには請求(催告)をしなければいけません。口頭でもできるのですが、会社との間で「言った」「言っていない」というトラブルを防ぐために、内容証明郵便を送るのが一般的となっています。

    なお、2020年3月31日までに支払われる賃金の時効は2年、2020年4月1日以降に支払われる賃金の時効は3年となっています。

  3. (3)労働審判手続を行う

    労働審判手続は、労働問題の解決するために、裁判所の力を借りて行う手続きです。会社との交渉がうまくいかなかった場合に、よく用いられます。

    具体的には、労働審判官と労働審判員が労使の間に入り、双方の言い分を聞きます。お互いに折り合いがつきそうな場合は和解(調停成立)によって解決し、3回の審理が行われても、話がまとまらなかった場合は、労働審判官が労働審判を下すというのが主な流れです。

    労働審判は、審理の回数が原則3回以内と決まっていることから、時間が長引きにくいのがメリットです。また、労働審判には出頭義務が課され、これに違反した場合には5万円以下の過料の制裁が課されます。そのため、会社が直接交渉には応じてくれなかったとしても、審理には参加してもらえる可能性が高いでしょう

    一方、デメリットとして、審判に対して異議申立てがあると結局は訴訟をすることになるため、最初から訴訟をするよりも時間がかかってしまう点があげられます。

  4. (4)訴訟を起こす

    訴訟では、裁判官の前で、適切な主張を繰り返し行い、自分の有利な判決を目指します。

    こちらの主張が認められれば、会社から本来支払われるべき残業代や、場合によっては損害賠償金を得ることが可能です。

    ただし、労働審判手続と異なり、期限が決められていないため、1年以上の長期戦になることがしばしばあります。

  5. (5)不安なら弁護士に相談を

    証拠集めや内容証明郵便の送付、労働審判、訴訟と、賃金請求をするためには、さまざまな手続きが必要です

    もし、ひとりで行うのが不安なら弁護士に相談してみましょう。事情を説明すれば、どんな証拠をそろえればいいか、どのように自分の意見を主張すれば有利になるか、的確なアドバイスをもらえます。

    また、交渉の依頼もできるので、会社との交渉で生じる精神的な負担を軽減することもできます。

5、まとめ

歩合制は、企業が従業員へ支払う賃金をおさえるために設けられた制度ではありません。雇用契約が結ばれている以上、最低賃金以上の給料を支払い、残業をしたら原則として残業代を出す必要があります。

ですので、歩合制で働く労働者は、しかるべき賃金がもらえていないなら、諦めずに請求することをおすすめします。

本記事をご紹介したベリーベスト法律事務所 松山オフィスには、労務問題に多く携わってきた弁護士が在籍していますので、ぜひご連絡ください。お話を伺った上で、ベストな解決策を見出し、サポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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