離職票が手元に届かないのは違法? 理由や正しい対処法

2024年06月20日
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離職票が手元に届かないのは違法? 理由や正しい対処法

愛媛県の労働力調査によると、愛媛県の令和5年10~12月期の完全失業者数は、13000人でした。失業保険の給付を受けるため、いろいろと準備をしている方もいらっしゃるでしょう。

失業保険の給付を受けるためには、雇用保険被保険者証や離職票など、ハローワークにいくつかの書類を提出しなくてはなりません。しかし、「離職票が退職後2週間以上たっても届かない」「離職票を会社に請求しても拒まれた」などの事情によって、「離職票」を提出できないケースがあります。

本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・離職票の概要や必要な理由
・会社が離職票を交付してくれない理由や違法性
・離職票が手元に届かないときの正しい対処法

離職票の交付や会社とのやり取りでお悩みを抱えている方に向けて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。


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1、離職票はなぜ必要なの?

  1. (1)離職票とは

    離職票は、労働者が退職し、失業給付を受給するときに必要となる書類です。離職票は、「雇用保険被保険者離職票-1」「雇用保険被保険者離職票-2」とわかれており、離職票にはマイナンバーや離職理由、給料の額などが書かれています。

    離職票は、まず会社がハローワークに資料を提出することから手続きが始まります。そしてハローワークから会社に離職票が交付され、会社から本人に届くという流れで入手できるものです。離職票が手元に届くまで、退職後10日前後かかります。

  2. (2)離職票は失業給付を受給する場合に必要になる!

    離職票は、失業給付を受給するときに必要になる書類です。そのため、すぐに転職したり起業したりする場合には、失業期間がないので離職票の交付を受ける必要はありません。

    ハローワークでは、離職票の記載をもとにして失業給付の内容を決定します。したがって離職票が手元に届かず提出できない場合には、失業給付を受給することができなくなってしまいます。

2、会社が離職票を交付しない! これは違法?

  1. (1)離職票を交付しないのは違法!

    雇用保険法には、会社は離職票の交付を拒むことはできないことが明記されています。(雇用保険法第76条3項)

    離職票の交付を拒んだ場合には、会社に6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されることになっています。そのため会社が理由なく離職票を交付しない場合には、違法行為となります。

  2. (2)離職票を交付しない理由とは

    退職から2週間程度経過しても会社から離職票が届かない場合には、交付を求めていかなければなりません。
    しかし、そもそも会社が離職票を交付しない理由には、どのような理由が考えられるのでしょうか。

    まず1つ目は、離職票が必要なことをご自身が会社に伝えていないことが考えられます。

    通常は、退職時には離職票が必要かどうか会社から聞かれます。しかし自ら離職票が必要であることを会社に伝えていなければ、会社は交付する手続きを行わない場合もあり得ます。

    離職票は前述のように失業保険を受給する場合に必要になるものですが、転職などで失業保険を受給しない場合には必要のない書類であるためです。

    2つ目は、会社またはハローワークのどちらかで手続きが止まっていることが考えられます。
    会社が離職票の交付に向けた手続きを失念していたり、ハローワークが繁忙期で交付が遅れていたりすることがあるかもしれません。

    3つ目は、意図的に会社が離職票の交付を拒んでいることが考えられます。
    コンプライアンスの意識の高い会社であれば可能性は低いものの、退職者への嫌がらせなどから意図的に離職票の交付を拒んでいる場合もないとは言い切れません。

    このような場合には会社が理由なく離職票の交付を拒んでいるケースに該当し、雇用保険法に違反するものとして罰則の対象となる可能性があります。

3、離職票が2週間経過しても届かない場合の対処法とは?

  1. (1)会社に確認・催促する

    離職票が退職してから2週間程度経過しても手元に届かない場合には、まず会社に確認してみましょう。会社に確認することで「離職票の交付の手続きが始められているのか」「手続きがどの程度進んでおりどこで滞っているのか」などを知ることができるでしょう。

    交付の手続きが始められていないことが分かった場合には、交付を請求し手続きを進めてもらう必要があります。

    なお、会社には、退職日の翌日から10日以内にハローワークに離職票の交付に向けた必要資料を提出しなければならない義務があります。会社が交付の請求を受けながらハローワークに資料を提出していない場合には、雇用保険法に違反していることになります。

    ちゅうちょすることなく会社に交付の手続きを進めるよう求めていくことが重要です。

  2. (2)ハローワークに確認・相談する

    会社が滞りなく手続きを進めていることが分かった場合には、会社を管轄するハローワークに問い合わせて手続きの状況を把握しましょう。

    なお、ご自身の失業給付を管轄するハローワークでは、会社が離職票の交付を拒んでいるような場合には相談することができます。相談後、ハローワークから会社に離職票の交付手続きを行うよう催促してもらえる可能性があります。

    一定期間経過しても会社から離職票が届かない場合には、離職票なしで失業保険給付の仮手続きを行うことができる場合があります。

    ただし、仮手続きを行っても、認定日までには離職票を提出する必要はあります。詳しくは、仮手続きの有無も含めてご自身の管轄のハローワークで直接確認してみるとよいでしょう。

  3. (3)弁護士に相談する

    離職票の交付を拒む会社は、コンプライアンスの意識が低い会社であることも想定されます。こういった会社との交渉は、ご自身だけで交渉しても相手にしてもらえず、門前払いされてしまうことも考えられます。また、離職票の問題だけに止まらず、サービス残業を強要されていた、未払い賃金があるなど、ほかの労働問題も発生している場合があります。

    離職票の問題をはじめ、労働問題について弁護士に相談した場合は、弁護士が労働者の代理人となって、解決に向けて会社と交渉をします。

    弁護士が相手となると、会社も真面目に対応しなければならないと認識するケースが多く、解決に向けて交渉が進むことが多いものです。

    もし会社との交渉がまとまらなかった場合でも、弁護士は労働審判や訴訟などの法的手続きを進め、解決に向けて動いていきます。

4、離職票に記載された離職理由に納得できない場合はどうすればよい?

離職票の交付を受けた場合でも、記載された離職理由に納得できない場合があります。
たとえば解雇されて「会社都合」による退職であるのに、離職票の記載には「自己都合」による退職と書かれているケースです。

離職理由の違いは、失業給付として受け取れる金額や受給開始日、受給期間などに大きな違いを生じます。もし「会社都合」であった場合には、「自己都合」の場合より失業保険の給付総額が多くなるなど、給付内容が優遇される措置が講じられます。

そのため離職票に記載されている離職理由に納得ができない場合には、そのままにしておくことのないようにしましょう。

離職票に記載された離職理由に納得できない場合には、ハローワークに異議申し立てを行って訂正を求めることができます。また、弁護士に相談して解決することも検討するとよいでしょう。

5、まとめ

離職票は、失業保険を給付するための重要な書類です。離職票が届かないときには、会社に連絡して交付を請求したり、進捗(しんちょく)を確認したりすることが大切です。会社が離職票の交付を意図的に拒んでいるような場合には、弁護士などに相談して離職票の交付を求めていく必要があります。

ベリーベスト法律事務所 松山オフィスでは、本コラムで解説したような離職票の問題をはじめ、労働問題全般のご相談をお受けしています。労働問題でお悩みの場合には、どうぞ弁護士までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています