結婚式でキャンセル料がかかるのはどんな時? 返金される?
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松山市統計書によると、2020年の松山市内における婚姻件数は2183件でした。
担当者の営業トークに魅力を感じて結婚式場を予約したものの、後から考え直してキャンセルしたくなることがあるかもしれません。特に最近では、新型コロナウイルス感染症の流行動向が読みにくいため、開催予定日の間近に感染が拡大して、直前に結婚式をキャンセルまたは延期せざるを得ない事態も想定されます。
結婚式場との契約内容や、キャンセルのタイミングによっては、高額のキャンセル料がかかる可能性があるので要注意です。今回は、結婚式をキャンセルした場合に、キャンセル料が発生するのかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「松山市統計書(令和2年度版)」(松山市))
1、コロナ禍における結婚式キャンセル料の裁判事例
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、結婚式を直前で取りやめる利用者が相次ぎました。
式場側の配慮によってキャンセル料を無料とするケースもあった一方で、キャンセル料の支払いを巡って裁判に発展したケースも見られました。
コロナ禍における結婚式キャンセル料の裁判事例を2つ紹介します。
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(1)規定に沿ったキャンセル料を認めた事例
東京高裁令和4年2月17日判決では、2020年3月28日に結婚式を挙げる予定であったところ、3日前の2020年3月25日に利用者側がキャンセルした事案が問題となりました。
利用者側は、結婚式の開催代金として約615万円を支払っていたところ、式場側はキャンセル規定に基づくキャンセル料を差し引き、約130万円のみを返還しました。
利用者側は、約485万円のキャンセル料の返還を求めて、式場側を提訴しました。
利用者側の主張は、「新型コロナウイルスへの感染によって死亡することを不安に思わざるを得ず、挙式は不可能だった」というものです。
これに対して東京高裁は、以下の理由を挙げて規定に沿ったキャンセル料を認め、利用者側の請求を棄却する一審判決を支持しました。- 解約日における東京都内の新規感染者数は41人と少なかったこと
- 解約日は、初めて緊急事態宣言が出されるより1週間以上前だったこと
- 式が予定されていた日には、別の組の結婚式がトラブルなく行われたこと
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(2)キャンセル料を減額することで和解した事例
2022年2月21日に東京地裁で和解が成立した事案では、2020年6月に開催予定だった結婚式のキャンセル料210万円を、利用者が支払う義務があるかどうかが問題となりました。
式場側は、式当日までキャンセルが成立していないと主張しました。
これに対して利用者側は、2020年4月に緊急事態宣言が発令された際に、キャンセルを申し出ていたと反論しました。
最終的には東京地裁が和解を試み、利用者側が式場側に支払う解約料を30万円とする旨の和解が成立しました。
2、結婚式のキャンセル料が発生する場合の例
結婚式場をキャンセルした場合、キャンセル料の支払いが必要かどうかは、式場との間で締結した契約内容によります。
そのため、契約内容を精査する必要がありますが、一般に以下のいずれかにあてはまる場合には、結婚式のキャンセル料が発生する可能性が高いです。
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(1)契約上のキャンセル規定に該当する場合
式場との契約では、キャンセルの時期に応じてキャンセル料が定められているケースが多いです。
おおむね見積金額の20~80%に実費を加算した額が標準的で、キャンセルの時期が結婚式当日に近づけば近づくほど、キャンセル料は高くなっていく傾向にあります。
また、当日キャンセルの場合には、見積金額の100%に実費を加算した額のキャンセル料が発生するケースが一般的です。
式場との契約でキャンセル規定が定められている場合、基本的にはその内容に従ってキャンセル料を支払わなければなりません。
ただし、キャンセルの理由や時期などに応じて、式場側に発生した平均的な損害額を超える部分のキャンセル料は無効となります(消費者契約法第9条第1号)。 -
(2)利用者側の理由が原因で結婚式をキャンセルした場合
結婚式のキャンセルが利用者側の理由が原因の場合、契約書の規定または民法上の債務不履行に基づく損害賠償規定(民法第415条第1項)に従い、キャンセル料を払うべき、とされる可能性が高いでしょう。
なお、新型コロナウイルス感染症の流行でキャンセルした場合が「利用者都合」に当たるかどうかは、キャンセル時点での感染流行状況や、感染症に関する社会の受け止め方などを総合的に考慮して判断されていると考えられます。
3、結婚式のキャンセル料が発生しない場合の例
以下のいずれかに該当する場合には、結婚式のキャンセル料が発生しないケースが多いです。
ただし前述のとおり、キャンセル料が発生するかどうかは式場との契約次第のため、契約内容を精査する必要があります。
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(1)仮予約にとどまる場合
式場によっては、正式な契約を締結する前に、仮に結婚式の日程を確保してもらう「仮予約」ができるケースがあります。
仮予約は1週間~2週間程度に限られるのが一般的であり、他の結婚式場と比較する期間と位置づけられます。
そのため、仮予約の後に正式契約をしない場合には、本契約のキャンセル規定は適用されないことが多いです。
ただし、数万円程度の申込金を仮予約時に支払い、正式契約を締結しない場合には返金しないと定めている式場もあります。
仮予約に関する金銭トラブルを避けるためにも、事前に式場の規定を確認しておきましょう。 -
(2)式場側の事情で結婚式をキャンセルした場合
式場側の事情でキャンセルとなった場合では、キャンセル料は発生しないと定められているケースが多いです。
なお、式場都合のキャンセルにつき、利用者側にキャンセル料の負担を課す内容の契約条項は、消費者契約法違反によって無効となる可能性があります(同法第8条第1項第1号、第2号)。 -
(3)キャンセルが不可抗力による場合|ただし例外あり
「不可抗力」によるキャンセルとは、結婚式のキャンセルについての責任が、利用者側・式場側のどちらにもない場合を意味します。
不可抗力によるキャンセルの場合、民法または契約に基づく「危険負担」のルールによって、キャンセル料が発生するかどうかが決まります。
民法の原則である「債務者主義」によれば、利用者は式場に対するキャンセル料の支払いを拒むことができます(民法第536条第1項)。
ただし、式場との契約に別段の定めがあれば、民法とはルールを定めることも可能です。
従って、特に契約に定めがなければ、不可抗力によるキャンセルについてキャンセル料は拒むことができる可能性があります。
その一方で、契約中に危険負担のルールが定められていれば、その内容に従ってキャンセル料が発生する場合があるので注意が必要です。
4、結婚式のキャンセルで揉めた場合の相談先
結婚式のキャンセル料を巡って、式場との間でトラブルに発展した場合には、速やかに公的機関または弁護士へのご相談をおすすめいたします。
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(1)消費生活センター・国民生活センター
消費者庁が管轄する消費生活センターでは、「消費者ホットライン」を設けています。
また、消費者ホットラインが混雑などでつながりにくい場合は、「平日バックアップ相談」(代替窓口:国民生活センター)も利用可能です。
それぞれ、結婚式のキャンセルに関する式場とのトラブルにつき、消費者である利用者目線でどのように対応すべきかのアドバイスを受けられます。 -
(2)弁護士
すでに支払った結婚式費用の返金を求めたい場合や、式場側からキャンセル料の支払いを請求された場合には、弁護士へのご相談がおすすめです。
弁護士は、式場との契約書を法的に分析したうえで、協議・調停・訴訟などの手続きを通じて、迅速な紛争解決を目指して尽力いたします。
結婚式に関するトラブルに巻き込まれた方は、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
結婚式キャンセルに関するトラブルは、数百万円単位の大きな金額が関係するため、弁護士に対応をご依頼いただくのが安心です。
ベリーベスト法律事務所 松山オフィスは、結婚式のキャンセル等に関するトラブルのご相談を、随時受け付けております。
式場に対して返金を求めたい場合や、式場からキャンセル料の支払いを求められた場合には、弁護士が法的な観点からご対応いたします。
結婚式場とのトラブルにお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 松山オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています