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弁護士費用は相手に請求できる? できない?

2023年04月17日
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弁護士費用は相手に請求できる? できない?

2020年に松山地方裁判所が処理した民事訴訟事件は604件、松山簡易裁判所が処理した民事訴訟事件は1417件でした。交通事故や離婚などの法律トラブルを訴訟(民事裁判)で争うことになった場合、弁護士を代理人として解決を目指すのが一般的です。

弁護士に依頼する際には費用が発生しますが、「相手のせいでトラブルになったのだから、相手に弁護士費用を請求したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。実際には、訴訟の際にかかる弁護士費用は、相手に請求できるケースとできないケースがあります。

今回は、訴訟の弁護士費用を相手に請求できるかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。

(出典:松山市統計書(令和2年度版)(松山市))

1、弁護士費用は原則として、相手に請求できない

これまで蓄積されてきた判例に照らして、訴訟への対応に関して支払った弁護士費用は、たとえ勝訴したとしても、原則として相手方に損害賠償を請求できないと解されています(最高裁 令和3年1月22日判決、大審院 大正4年5月19日判決)。

弁護士費用を訴訟で負けた側に負担させることは、「敗訴者負担」と呼ばれる考え方です。
敗訴者負担の考え方を採用することは、一見公平なようにも思われますが、巨額の弁護士費用を投じた側が勝訴した場合には、敗訴者の側にとって不当に酷な結果を招く可能性があります。

もし負けたら、相手方の弁護士費用まで支払わされることを考えると、当事者は訴訟の提起を思いとどまってしまうかもしれません。
正当な権利を持つ側が、訴訟という手段を実質的に失うことは望ましくないでしょう。
そのため、訴訟の弁護士費用については、原則として敗訴者負担の考え方が採用されていないのです。

2、例外的に弁護士費用を請求できるケース

ただし例外的に、以下に挙げる場合については、相手方に対して弁護士費用の損害賠償を請求できる可能性があります
この場合も、全額ではなく、認容額の1割程度の金額にとどまるのが一般的です。

  1. (1)不法行為に基づく損害賠償を請求する場合

    不法行為を受けて起こした損害賠償請求訴訟において、原告が勝訴した場合には、被告に対して弁護士費用を請求できると解されています。

    不法行為に基づく損害賠償のケースで、訴訟の弁護士費用が「不法行為と相当因果関係に立つ損害」に該当すると判示したリーディングケースが、最高裁 昭和44年2月27日判決です。

    日本の法律上、訴訟追行を本人が行うか、弁護士を選任して行うかについては、当事者が選択できる事柄です。
    最高裁はそのことを認めつつ、一方で専門化・技術化された訴訟において、「一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能」であること、および不法行為の損害賠償義務者から履行を受けることは容易でないことを指摘しました。

    そのうえで、「事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる」額の弁護士費用については、不法行為と相当因果関係に立つ損害であると判示しました。(※「」内は判決を引用)

    この最高裁判例が基準となり、現在の訴訟実務では、不法行為に基づく損害賠償請求が認容された場合、認容額の1割程度の弁護士費用を賠償額に加算されることがあります

  2. (2)労災に基づく損害賠償を請求する場合

    法律構成上は、不法行為ではなく債務不履行でありながら、弁護士費用の損害賠償請求も認められると解されているのが労働災害(労災)のケースです

    労災に関する弁護士費用の損害賠償請求は、最高裁 平成24年2月24日判決で認容されました。
    同判決の事案は、労働者が使用者の安全配慮義務違反(労働契約法第5条)を理由として、債務不履行に基づく損害賠償を請求したものです。

    最高裁は、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求において、労働者が主張立証すべき事実は、「不法行為に基づく損害賠償を請求する場合とほとんど変わらない」と指摘しました。

    そのうえで、不法行為に関する前掲・昭和44年最高裁判決を引用して、事案の難易・請求額・認容された額その他諸般の事情を考慮して相当と認められる額の弁護士費用については、安全配慮義務違反との相当因果関係が認められる損害であると認定しました。

    したがって、労災に当たるケガ・病気・障害・死亡に関して、会社に損害賠償を請求する場合は、合理的な範囲の弁護士費用を会社に対して請求できるものと解されます

  3. (3)弁護士費用を損害に含める契約上の合意がある場合

    契約においては、債務不履行が発生した場合に、合理的な弁護士費用を損害賠償の範囲に含める旨の特約が存在するケースがあります

    このような特約がある場合には、債務不履行を受けて起こした損害賠償請求であっても、請求認容額の1割程度の弁護士費用の請求が認められる可能性があります(東京地裁 平成27年10月27日判決など)。

    ただし、契約で定めた弁護士費用の全額が認められるとは限らず、あくまでも合理的な範囲の金額に限られる可能性が高い点にご注意ください。

  4. (4)専門性が高い訴訟の場合

    医療訴訟や建築訴訟などは、専門家による知見や経験則を用いた主張・立証が必要となる点が特徴です。

    このような専門性が高い訴訟については、弁護士による訴訟代理が事実上必須であることから、請求認容額の1割程度の弁護士費用の請求が認められる傾向にあります

3、訴訟を提起する際に、弁護士費用以外にかかる費用

裁判所に訴訟を提起する際には、弁護士費用のほかにも、裁判所に納める費用を準備しなければなりません。

弁護士費用以外の裁判費用としては、主に「訴訟費用」と「郵券代」が挙げられます

  1. (1)訴訟費用(収入印紙)

    訴訟費用は、裁判所に納付する手数料です。
    訴状に収入印紙を貼付して納付します。

    訴訟費用の金額は、請求額に応じて以下のとおり決まっています(民事訴訟費用等に関する法律4条1項、別表第一)。

    請求額 訴訟費用
    100万円以下の部分 10万円までごとに1000円
    100万円超500万円以下の部分 20万円までごとに1000円
    500万円超1000万円以下の部分 50万円までごとに2000円
    1000万円超10億円以下の部分 100万円までごとに3000円
    10億円超50億円以下の部分 500万円までごとに1万円
    50億円超の部分 1000万円までごとに1万円


    なお、財産上の請求でない場合や、請求額の算定が不可能または極めて困難な場合は、請求額は160万円とみなされます(同法4条2項、7項)。
    したがってこの場合、訴訟費用は1万3000円です。

  2. (2)郵券代(郵便切手)

    郵券代は、裁判所が訴状の送達などを行う際に使用する郵便切手(の代金)です。
    実際には、郵便切手を現物で納付することになります。

    当事者の数などによって変動しますが、数千円分程度の郵便切手の納付が求められるケースが多いです。

4、実際に訴訟を提起した場合の手続きの流れ・期間

訴訟手続きは、おおむね以下の流れで進行します。

① 訴訟の提起
裁判所に訴状や証拠資料を提出して、訴訟を提起します。
訴状等の提出先は、原則として被告の普通裁判籍(住所地など)を管轄する裁判所ですが、請求内容などによっては別の地域の裁判所に訴訟を提起できる場合もあります。
請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所または地方裁判所、140万円超の場合は地方裁判所の管轄です。

② 訴状・期日呼出状の送達
訴状を受理した裁判所は、被告に対しては訴状と期日呼出状を、原告に対しては期日呼出状を送達します。
期日呼出状には第1回口頭弁論期日の日程が記載されているので、被告はそれまでに反論を記載した答弁書などの準備を行います。

③ 口頭弁論期日・弁論準備手続
裁判所の公開法廷で行われる主張・立証の手続きを「口頭弁論期日」といいます。
口頭弁論期日では、原告・被告の双方が証拠に基づく主張・立証を行い、裁判所はどちらの主張が妥当であるかを判断します。
書証の取り調べのほか、証人尋問が行われることもあります。
なお、争点が込み入っている事案の場合は、口頭弁論期日に向けた争点整理を行うため、非公開の弁論準備手続が実施される場合もあります。

④ 和解の試み
裁判所は、紛争を円満に解決するため、判決を言い渡す前に和解を試みることができます(民事訴訟法第89条)。
当事者間で和解が成立すれば、その内容を記載した和解調書が作成され、訴訟は終了します。

⑤ 判決
審理が熟した段階で、裁判所は判決を言い渡します。
控訴・上告を経て判決は確定し、当事者双方を法的に拘束します。


訴訟手続きは全体として長期化するケースが多く、半年から1年以上の期間を要するケースも少なくありません

また、訴訟手続きの内容は複雑かつ専門的なので、当事者が自力で対応することは難しいのが実情です。
訴訟を通じて、ご自身の権利をきちんと主張するためには、弁護士へのご相談をおすすめいたします

5、まとめ

訴訟の弁護士費用は、勝訴した場合でも原則として、相手方に対して請求することはできません。
ただし、不法行為や労災のケースをはじめとして、例外的に弁護士費用の一部を相手方に請求できる場合があります。

ベリーベスト法律事務所は、ご相談の段階で着手金・報酬金の仕組みをわかりやすくご説明いたしますので、安心してご依頼いただけます。
ご相談内容によっては、弁護士費用特約もご利用いただけますので、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 松山オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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