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二次創作は法律違反になる? 行為の解釈と著作権法違反のポイントを解説

2020年12月10日
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二次創作は法律違反になる? 行為の解釈と著作権法違反のポイントを解説

令和元年12月にファイル共有ソフトにゲームソフトおよび漫画作品を無断でアップロードしたとして、男性が著作権法違反の疑いで松山地検今治支部に送致されたという事件がありました。

コミックマーケット等大規模な同人誌即売会などで、同人誌や二次創作の漫画、小説が販売されており、二次創作の作品は誰でも目にするようになりました。また、SNS上などでは、好きなアニメのキャラクターやゲームのキャラクターの二次創作イラストが公開されています。

しかし、二次創作のイラストを作成、販売および電子販売する場合には、著作権法との関係で注意しなければならないことがあります。

今回は、二次創作が著作権法違反になるかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、著作権法では、多くの違反行為が親告罪

二次創作が訴訟になったということをあまり聞かない理由として、多くの著作権侵害に該当する行為が親告罪とされていることが関係しています。まずは、親告罪とは何か、著作権法上どのような罪が親告罪とされているのかについて確認していきましょう。

  1. (1)親告罪とは

    親告罪とは、被害者などから告訴がなければ公訴を提起(起訴)することができない罪のことをいいます。被害者が犯人を知った日から6か月を経過すると、告訴することができません。

  2. (2)著作権法上で親告罪となる行為

    著作権法では、著作権法119条、120条の2第3号および第4号、121条の2、122条の2第1項の罪については、親告罪とされています(123条1項)。

    これらの罪は、保護の対象が著作者人格権、著作権、出版権および著作隣接権と、すべて私的な権利であるため、刑事訴追するか否かの判断を、被害者である権利者に委ねられています。

    著作権法119条、120条の2第3号および第4号の罪については、権利を侵害された権利者が、著作権法121条の2の罪については、無断複製された国内レコード製造業者が告訴権者です。

    それぞれの罪を詳しく見ていきましょう。

    ①著作権法119条の罪
    著作権法119条では、以下の行為をしたものを処罰すると定めています。

    • 著作権、出版権または著作隣接権を侵害した者(著作権法119条1項)
    • 著作者人格権または実演家人格権を侵害した者(著作権法119条2項1号)
    • 営利を目的として、著作権法30条1項1号に規定する自動複製機器を、著作権・出版権・著作隣接権の侵害となる著作物・実演等の複製に使用させた者(著作権法119条2項2号)
    • 著作権法113条1項の規定により、著作権・出版権・著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為をした者(著作権法119条2項3号)
    • 著作権法113条2項の規定により、著作権を侵害する行為とみなされる行為をした者(著作権法119条2項4号)


    二次創作は、主に著作権法119条が規定する著作権、著作者人格権との関係が問題となります。

    ②著作権法120条の2第3号および第4号の罪
    著作権法120条の2第3号は、営利目的で、著作権法113条4項の規定により、権利管理情報に係る著作者人格権・著作権・実演家人格権・著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為をした者を処罰する規定です。

    また、著作権法120条の2第4号は、音楽レコードの還流防止措置を規定している著作権法113条第6項に関して、著作権・著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為をした者を処罰する規定となっています。

    音楽レコードの還流防止措置とは、日本国内外で同一の商業用レコードを発行している場合において、一定の要件の下で著作権者・著作隣接権者が、国外で発行された商業用レコードを、国内に頒布する目的で輸入する行為を禁止するものです。

    ③著作権法121条の2の罪
    著作権法121条の2は、規定の要件に該当する商業用レコードの無断複製およびその複製物の頒布等を処罰する規定です。

    ④著作権法122条の2第1項の罪
    著作権法122条の2第1項は、著作権法上の秘密保持命令に違反した者を処罰する規定です。

2、著作権法上で非親告罪となる行為

上記の罪以外の罰則は親告罪とはなりませんので、公訴提起に際して被害者の告訴は不要です。具体的には、以下の罪になります。

①著作権法120条の罪
著作権法120条は、著作者等の死後において人格的利益を侵害する行為を処罰する規定です。

②著作権法120条の2第1号および2号の罪
著作権法120条の2第1号は、以下の対象物に関して、規定する行為をした者を処罰する規定です。

  • 対象物……技術的保護手段もしくは技術的利用制限手段の回避を行うことを機能とする装置、技術的保護手段もしくは技術的利用制限手段の回避を機能とするプログラムの複製物
  • 禁止行為……公衆に譲渡・貸与し、公衆への譲渡・貸与の目的をもって製造・輸入・所持し、公衆の使用に供した、当該プログラムを公衆送信した、もしくは送信を可能とする行為


著作権法120条の2第2号は、業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段または技術利用制限手段の回避を行った者を処罰する規定です。

③著作権法121条の罪
著作権法121条は、著作者でない者の実名または周知の変名を著作者名として表示した著作物の頒布行為を処罰する規定です。

④著作権法122条の罪
著作権法122条は、著作権法の定める出所明示義務(引用など)に違反した行為を処罰する規定です。

⑤著作権法122条の2第2項の罪
著作権法122条の2第2項は、国外において著作権法上の秘密保持命令に違反した者を処罰する規定です。

3、二次創作は著作権法上どのような行為にあたるのか

二次創作は、法律上グレーといわれていると聞いたことのある方もいるかと思います。二次創作は、著作権法上どのような場合に問題になるのでしょうか。以下では、二次創作が著作権法上どのように扱われるかについて説明します。

  1. (1)二次創作とは

    一般的に、二次創作とは、原作に登場するキャラクターなどを利用して、二次的に創作された作品のことを指します。しかし、「二次創作」という用語は、法律上の明確な定義のある用語ではありません。

    二次創作と似たような言葉として「二次的著作物」という言葉があります。

    これは、著作権法上定義のある用語で、「二次的著作物」のことを「著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、または脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。」と定義していますが、二次創作と二次的著作物は同一の概念ではありません。

    しかし、二次創作は、原作をもとにして新たな発想を加えて創作されたものですから、二次的著作物にあたることが多いと考えられます。

  2. (2)二次創作は著作権法上違法なのか

    二次創作は、法律上グレーであるといわれることもありますが、著作権者の許可を得ていない二次創作は著作権法上違法となります。

    ①模写やトレースをした場合
    原作をもとに新たに創作をするのではなく、単に模写やトレースをする行為は、複製権(著作権法21条)侵害となると考えられます。ただし、複製については、「個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」(著作権法30条1項)場合であれば、一定の条件の下、認められます。

    SNS上に好きな漫画のイラストをアップする行為については、SNSでアップすることで世界中の誰でも閲覧が可能になる場合には、個人または家庭内での使用とはいえず、複製権侵害として禁止されます。

    ②原作を改変した場合
    原作をもとに新たな作品を作る行為は、翻訳権(著作権法27条)、同一性保持権(著作権法20条1項)侵害となる余地があります。

    「翻訳権」とは、著作者が著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案などする権利のことで、二次的著作物を創作する権利のことをいいます。
    「同一性保持権」とは、著作者が自分の著作物およびその題号の同一性を保持し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利のことをいいます。

    二次創作は、原作をもとに新たな創作を行うことですので、著作権者の同意なく二次創作をすると翻訳権、同一性保持権侵害となりますので注意が必要です。また、原作を改変した場合には、個人や家庭内での利用であっても違法になります。

  3. (3)二次創作が問題になることが多くない理由

    上記のように、二次創作は、著作権法に違反する行為であり、決してグレーな行為ではありません。しかし、二次創作は、インターネット上でよく目にすることもあるようにあまり問題にされていないようにも思えます。その理由としては、以下のようなことが考えられるでしょう。

    ●親告罪であること
    二次創作が問題となる著作権侵害は、親告罪とされており、被害者からの告訴がなければ刑事事件として起訴されることはありません。世の中には広く二次創作の作品が出回っており、よほど悪質なケースでない限り、著作者も黙認しているため、刑事事件になることは少ないと考えられます。

    このように、二次創作は違法ですが、権利者の被害申告がないため、黙認されている可能性があります。

4、まずは元となる作品のガイドラインで確認を

二次創作が著作権法上違法となるのは、著作者の許可なく行われた場合です。

作品によっては、二次創作が許可されていたり、条件付きで許可されていたりする場合もあります。著作者の許可の範囲内での二次創作については、法律上問題なく行うことが可能です。

そのため、二次創作を合法的に行うには、まずは、作品の公式ホームページなどで作品使用のガイドラインを確認するようにし、それに沿うように行いましょう。

5、まとめ

大規模な同人誌即売会などで二次創作の作品を目にする機会も多く、二次創作に対する違法性の意識が低下しています。今回解説したとおり、二次創作は著作権法上違法な行為です。さまざまな理由から事実上黙認されているケースは多いですが、著作権違反として逮捕されたり、損害賠償請求を受けたりする可能性のある行為であることを意識しておきましょう。

二次創作が問題となるケースについては、原作のイメージを著しく損なうような場合や、二次創作で大きな利益を上げたような場合が多いです。もし、二次創作で問題となりそうだと思われたことがあったら、お早めにベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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