無期契約への期待もむなしく雇止め? 理由に不満がある松山の労働者は必見!
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契約社員やアルバイトなどでよく見られる有期労働契約において、次回の更新がなされず契約が終了することを「雇止め」といいます。松山市を管轄する愛媛労働局のウェブサイトで有期労働契約の雇止めに関する裁判傾向を紹介しているように、雇止めに関するトラブルは少なくありません。
そこで今回は、有期労働契約の雇止めに着目し、無期転換ルールや対象となるケースについて、松山オフィスの弁護士が解説します。
1、雇止め法理と無期転換ルール
契約途中で辞めさせられる解雇と違い、期間が決まっている以上雇止めをされても仕方がないと思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし理由によっては、会社に雇止めを撤回させることができます。有期労働契約については、雇止め法理や無期転換ルールが存在するからです。
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(1)雇止め法理とは
雇止め法理とは、一定の理由がある場合に雇止めを無効とするルールを指します。過去の裁判例の蓄積から形成されたルールですので判例法理などと呼ばれたりもします。
有期労働契約は会社が更新を拒否したときは、契約期間の満了によりその雇用が終了します。しかし、会社都合で無制約に契約の更新を拒絶することは、労働者を不安定な立場に置いてしまいます。そこで労働者を保護する観点から、裁判では一定の場合に契約終了の無効を認めてきました。そして、平成24年8月に行われた労働契約法改正で、第19条において明文化されました。 -
(2)無期転換ルール
また、条件を満たせば有期労働契約から無期労働契約への転換を申し込めることも、労働契約法第18条に規定されました。
改正の理由として、多くの会社において有期労働者が反復更新し、長期にわたり不安定で不合理な労働条件で働いている実態があります。このような状況を是正して、雇用期間につき安心して労働者が働けるようにするために、法律が改正されたのです。
2、雇止め法理の対象となるケース
労働契約法第19条では、対象となるケースを次の2つと定めています。
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(1)雇止めが無期契約における解雇と同視できるケース
過去に契約を反復更新されており、その雇止めが、「無期契約における解雇」と社会通念上同じものであると判断できる場合が該当します。
つまり、何度も更新がなされて継続して働いており、業務内容が恒常的で無期契約の社員と同視できる場合がこれに当てはまります。契約の更新を拒否することが無期契約の社員を解雇することと同一視され、解雇が相当であるとする事情がなければ契約更新の拒絶は無効になります。 -
(2)当該契約の更新を期待するに足る合理的な理由がある場合
常識的に、更新を期待しても仕方がないと思われる事情がある場合を指しています。たとえば上司から「来年も頑張ってね」「長く勤めてくださいね」などと日常的にいわれていたケースや、長期プロジェクトの責任者だったケースなどが挙げられます。このケースでは、その他の状況も踏まえて総合的に判断されます。
上記いずれかの場合に、労働者が更新の申し込みをしたうえで、雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合は、従前と同じ条件で更新されます。
なお、申し込みの方法は口頭でも構いませんが、トラブルを避けるためにも文書に残しておくべきでしょう。
3、無期転換ルールの対象となるケース
同じ使用者との間で締結した契約が、通算5年を超えて更新され続けてきた場合に、労働者が契約期間の初日から末日の間に申し込みをすることによって無期契約へと転換できます。無期契約が開始されるのは、申込時の契約が満了した日の翌日です。
3年の契約の場合で1回更新されたときは、2回目の契約期間の途中で通算5年を超えることになりますので、その時点で申し込みができます。実際に無期契約が開始するのは、2回目の契約期間が終了した後ですので、勤続7年目からということになります。
なお、無期転換の申し込みをしないことを契約書に追加することなどは、そのような契約条項そのものが無効となる可能性があります。労働者保護という法律の趣旨から、不当な条件であるとみなされます。もし、あなたの手持ちの契約書に「無期転換はしない」と記載されていたとしても、あきらめる必要はありません。
4、雇止めをされたら
実際に雇止めをされたら、使用者に対して理由を明示するよう求めましょう。使用者が労働者に対して雇止めの理由を明示することは、厚生労働省が労働基準法第14条第2項に基づいて策定した「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)」にも定められています。
明示された理由に納得できない場合は、以下の手順で対処していきましょう。
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(1)契約内容を確認する
まず、これまでの契約内容の確認をしましょう。
●契約内容
これまでの更新回数や期間、契約内容の確認を行います。雇用契約書や労働条件通知書など、採用時や更新時に交付された書面で確認できます。
更新の有無、更新される場合の基準などは明記されているでしょうか。これに当てはまらない、理由に妥当性がないといった場合、雇止めを撤回させられる可能性があります。また、雇止めの理由については、証明書を請求しましょう。労働者の請求があった場合、会社は遅滞なく交付しなくてはなりません。
●業務内容
ご自身の業務の内容についても整理しましょう。
臨時的な業務がほとんどで、正社員とは明確に違う業務に従事していた場合、有期労働者であることを認識し、更新拒否もやむを得ないと納得できるかもしれません。一方、正社員と業務内容が変わらず、更新を前提とする継続的な業務についていたような場合には、雇止め法理が適用される可能性があります。
●手続きの正当性
1年以上働いている、または3回以上更新手続きがされている場合、契約解除の30日前までに雇止め予告が必要になります。
また、更新手続きがずさんに行われていた場合も、更新を期待させる事情があったと認められる可能性があります。たとえば、更新から何か月も経過した後に、形ばかりの契約書を作成することや更新の契約書を作らずにそのまま働き続けているなどの、更新手続きが形骸化していたようなケースがこれにあたります。 -
(2)証拠を集める
次に、裁判所などからでもあなたの主張が正当であることを認めてもらうために、以下のような証拠を可能な限り集めます。
- 更新を期待した事情を示す資料(例:上司との面談記録、他の有期労働者の更新状況が分かるものなど)
- 雇止め理由の証明書
- 雇用契約書、労働条件通知書
- 就業規則の写し
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(3)弁護士に相談する
雇止めを撤回させ、契約を更新したい場合には、できるだけ穏便に動く必要があります。ご自身で直接交渉して解決できればよいですが、難しい場合も多いため弁護士のアドバイスを仰ぐほうがよいでしょう。
交渉では、継続雇用を求めることと、雇止めで働けなくなった期間に該当する未払い賃金の請求を行います。直接交渉がうまくいかなければ、労働審判や訴訟を申し立てるなどの手段があります。その場合も、依頼を受けた弁護士はあなたの代理人として対応することが可能です。あなたが直接交渉する必要はありません。
退職を前提とする場合でも必要な資料や流れは同じです。ただし、交渉次第では損害賠償金や解決金を得られる可能性があります。交渉はご自身で行うと思うような結果にならないリスクが高いため、まずは弁護士へ相談してみましょう。
5、まとめ
今回は、有期労働契約の雇止めについて、基本的なルールや対象となるケース、対処法を解説しました。次回の更新も当然になされるものと期待していたのに突然雇止めされた場合、生活の問題もありますし、簡単に納得できるものではないでしょう。
しかし、ルールに当てはまる場合には雇止めを回避できる可能性があります。まずはご自身の状況を整理しましょう。なお、不当な雇止めにあたるか否かは個別の事情によって異なります。早急に弁護士へ相談されるほうがよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所 松山オフィスでも、労働問題に対応した経験が豊富な弁護士がご相談をお受けします。会社との交渉において、あなたの代理人として対応することも可能です。ひとりで悩まず、ぜひ一度ご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています