解雇予告された方は知っておきたい。労働基準法上で解雇はどう定められている?

2019年05月24日
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解雇予告された方は知っておきたい。労働基準法上で解雇はどう定められている?

2018年10月の完全失業率は2.4%と発表され、昨年度と比べて失業率は徐々に低下しているものの、依然として失業率は高い水準です。
1965年の松山市民病院事件では、病院の経営秩序を破壊したとの理由で解雇された准看護婦が、地位確認と賃金支払いの仮処分を求めました。裁判では、賃金の一部は認められませんでしたが、一部が認容されました。
このように、解雇された場合も不当解雇が認められることもあります。
今回は、労働基準法では解雇はどのように定義されているのか、不当解雇と思ったらどのような対応をとるべきなのかなどを、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説していきます。

1、解雇とは

  1. (1)解雇の意味

    労働者と使用者との間には雇用契約が結ばれています。解雇とは、この雇用契約を使用者側から一方的に解約することです。

  2. (2)解雇と退職の違い

    解雇も退職も結果的には退社をします。しかし、前述の通り解雇は使用者側からの一方的なものであるのに対して、退職は労働者側からの自主的な退職の意思表示が必要であり、労働者と使用者での合意が前提となります。

  3. (3)解雇の種類

    解雇には、懲戒解雇・諭旨解雇・普通解雇・整理解雇といった種類があります。以下でそれぞれ説明していきます。

    (3)-1懲戒解雇
    懲戒解雇は、企業秩序に違反した労働者に対するもっとも重い処罰です。どのような場合が懲戒解雇に該当するかは、会社ごとの就業規則や懲戒規定等によって異なります。たとえば、会社の金品の横領や、従業員を負傷させるなど法律に抵触する行為をした際に懲戒解雇の理由となり得ます。会社によっては、禁止されている副業や起業準備で通常業務に著しい支障が出ている場合も懲戒解雇になることがあります。また、正当な理由がなく2週間以上の無断欠勤が続き、会社側が注意喚起を繰り返したのにもかかわらず改善の見込みがない場合も該当するような場合があります。

    (3)-2諭旨解雇
    諭旨解雇とは、懲戒解雇に値しても労働者功績や、将来性を考慮し、懲戒処分は避けるべきとされた場合の処置です。懲戒解雇と諭旨解雇の既定の違いは、会社によって異なります。

    (3)-3整理解雇
    整理解雇は、会社都合による雇用契約の解約です。会社の経営不振によって、やむを得ず人員削減をしなければならないときに行われます。しかし、会社側は経営不振に陥っても直ちに労働者を解雇できるわけではありません。人員削減が合理的であることや、解雇を回避する努力を行っていることが条件になります。また、適切な基準で解雇者が選定されているか、30日以上前の解雇予告がされているかなどの条件も満たした場合に整理解雇を行うことができます。

    (3)-4普通解雇
    普通解雇とは、懲戒解雇や諭旨解雇、整理解雇以外の解雇のことです。労働者に起因する理由により、労働契約の継続が困難となる場合に行います。他にも、会社が状況を改善するための努力を行ったのにもかかわらず改善の見込みがないと判断して普通解雇が手段として採られることもあります。

2、労働基準法上、解雇はどのように定義されている?

  1. (1)会社は簡単に労働者を解雇できない

    労働契約法により、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。不当解雇にあたる場合は、解雇自体が無効になることもあります。このように、会社は労働者を簡単には解雇できないようになっています。試用期間中の解雇や契約期間内の解雇、年齢が理由の解雇も不当解雇にあたる場合もあります。

  2. (2)解雇が禁止されている期間

    労働基準法により、解雇については予告期間が定められており、30日前に解雇予告することが義務付けられています。たとえば、3月31日付けで解雇する場合は、30日前までに解雇を予告する必要があります。

  3. (3)解雇が禁止されているケース

    解雇が禁止されているケースとして、

    • 通院による欠勤
    • 労災による疾病
    • 妊娠や出産
    • 会社への意見
    • 上司との不仲
    • 業務態度について注意や指導しない
    • 学歴や国籍などによる能力不足


    が一例としてあげられます。
    不当解雇が否かの判断は、職種や個々のケースによって異なります。

3、解雇予告をされたときに確認すべきこと

  1. (1)解雇予告が口頭の場合

    解雇予告が口頭の場合は、解雇日や解雇理由などが書面で残りません。そのため、会社に解雇通知書や解雇理由証明書を請求しましょう。

  2. (2)解雇予告通知書・解雇理由証明書をもらった場合

    解雇予告通知書・解雇理由証明をもらった場合は、解雇理由を必ず確認しましょう。解雇理由が、労働者の業績や能力などを理由にする普通解雇か、事業縮小による整理解雇か、違反行為などによる懲戒解雇なのかを詳しく確認しておくことがポイントです。

  3. (3)不当解雇ではないか?

    自身の解雇が、前述の不当解雇に該当するか否かを確認しましょう。不当解雇の場合は、解雇自体が無効になることもあります。

4、解雇通知書や解雇理由証明書は必ずもらえる?

  1. (1)解雇通知書や解雇理由証明書とは

    解雇予告通知書とは、会社が従業員との雇用契約を解除する旨を事前に通知するための文書であるのに対して、解雇理由証明書とは解雇の理由が明記されている書類です。

  2. (2)労働基準法での定め

    労働基準法により、解雇の際は労働者に対して30日前に解雇予告することが義務付けられています。
    会社は、従業員に対して解雇の予告や解雇の理由について、口頭で伝えることもあります。必ずしも、解雇予告通知書や解雇理由証明書といった文書の形での交付は義務付けられてはいません。しかし、従業員から会社に対して解雇予告通知書や解雇理由証明書の交付の請求を受けた場合、会社はそれに応じなければならないという法的義務があります。

5、不当解雇だと思ったときの対処法や相談先

  1. (1)不当解雇に対する対処法

    不当解雇に対しては、解雇を撤回してもらうために、証拠を集めて会社と交渉する必要があります。証拠となり得るものは下記の通りです。

    ・録音
    上司が退職を伝えたり、勧めたりしている会話をボイスレコーダーなどに録音しておきましょう。録音した日付をメモしておくことも必要です。

    ・解雇予告や理由を書面化する
    解雇を伝えられたら、すぐに解雇理由証明書を会社に請求します。解雇理由は具体的に記載してもらいましょう。

    ・メール内容を残しておく
    上司などからの退職に関するメールは重要な証拠となり得ます。メールをデータまたは印刷して残しておきましょう。

  2. (2)不当解雇に関する相談先

    次に、不当解雇に関する相談先に解説します。

    ・労働組合
    労働組合は、場合によっては会社側に解雇についての抗議と労働者側からの申し入れを行ってくれます。

    ・労働基準監督署
    労働基準監督署は、企業が労働基準法を守っているか監督する役割があります。解雇にともなって、未払いの賃金や残業代が発生している場合は企業に指導勧告を行うことにより企業の姿勢があらたまる可能性があります。

    ・都道府県の労働局
    労働局は各都道府県に設置されており、会社と従業員の労働問題のあっせんを行っています。労働局のあっせん手続きを利用した場合、紛争調整委員会が会社と従業員の間に入り、交渉がすすめられます。しかし、あっせん案には強制力はありません。そのため、会社と従業員のお互いが合意できなければ解決には至りません。

    ・弁護士
    弁護士は、解雇問題や労働契約関係などの法律の知識を幅広く持っており、不当解雇の相談から労総裁判までサポートします。不当解雇の場合も、会社との直接交渉や書類の請求を代わりに弁護士が行ってくれます。費用については、初回の相談料を無料としている法律事務所も増えています。

6、まとめ

突然、解雇を言い渡されたら納得がいかないことでしょう。
解雇とは、使用者が一方的に雇用契約を終了させることであり、労働基準法上、使用者である会社は簡単には労働者を解雇できないように定められています。
法律上の条件を満たさない場合の解雇は、不当解雇に該当することもあります。
ご自身のケースが不当解雇に該当するのかわからない場合や、解雇に納得がいかない場合は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスにご相談ください。弁護士があなたの代理人となって会社と交渉等を行っていきます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています