家や店に張り紙を貼られた! 嫌がらせは罪に問える? 損害賠償は可能?
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令和2年の春、新型コロナウイルスの感染拡大により外出自粛が求められ、飲食店や小売店など多くの店が営業を自粛しました。
そんな中、感染防止策をとるなどして営業を続けた店に「自粛しろ」などと張り紙をされる被害が相次ぎました。いわゆる「自粛警察」です。
張り紙などの嫌がらせは、昔から私たちの身近で起きていますが、度を超えると事件に発展することがあります。
ではどのような嫌がらせが罪に問われるのでしょうか??被害を受けた場合はどう対処すればいいのでしょうか??詳しくご説明します。
1、張り紙による嫌がらせは罪に問われる?
日本人は憲法で表現・言論の自由が認められており、自分の意見を自由に発信することが可能です。
しかし、相手の権利を侵害するなど、行きすぎた行為があれば罪に問われます。
刑事罰や損害賠償の対象となりうる行為を確認していきましょう。
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(1)許可なく張り紙をすれば軽犯罪法違反
どのような内容であれ、他人の家や店舗に許可なく張り紙をしたり、ペンキで落書きをしたりすることは、軽犯罪法違反です。
刑罰は「1日以上30日未満の拘留または1000円以上1万円未満の科料」です。 -
(2)営業を妨害すれば強要罪や威力業務妨害罪
「営業を自粛しなければ火をつける」などと脅迫する内容の張り紙をし、営業を妨害した場合には威力業務妨害罪(刑法第234条)、休業など義務のないことをさせた場合は強要罪(刑法第223条)に該当する可能性があります。
威力業務妨害罪の刑罰は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、強要罪は「3年以下の懲役」です。 -
(3)建物を傷つければ建造物損壊罪
店の壁に中傷の落書きをするなどした場合には、建造物損壊罪(刑法第260条)や器物損壊罪(刑法第261条)に該当する可能性があります。
建造物損壊罪の刑事罰は「5年以下の懲役」、器物損壊罪は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」です。 -
(4)名誉を傷つけたり悪口を言えば名誉毀損罪、侮辱罪
「ぼったくり」「住人は不倫している」などと張り紙をし、公然と相手の名誉を傷つけると、名誉毀損罪(刑法第230条)にあたる可能性があります。なお、書かれた情報が真実か虚偽かどうかは関係ありません。
「バカ」などと悪口を書いて公然と相手を侮辱した場合には、侮辱罪(刑法第231条)に該当する可能性があります。
名誉毀損罪の刑罰は「3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金」、侮辱罪は「1日以上30日未満の拘留または1000円以上1万円未満の科料」です。 -
(5)張り紙による嫌がらせは損害賠償請求の対象になる
嫌がらせの内容によっては刑事責任だけではなく、民事責任も問われます。
自粛警察のように張り紙をして店を営業停止にさせたり、建物を使えなくしたり、相手の名誉を傷つけたりすることは不法行為であり、損害賠償請求の対象となり得るものです。
賠償請求額は売り上げの減少分や建物の修繕費といった金銭的な被害に応じて変動します。
2、張り紙による嫌がらせを受けた場合の相談先
嫌がらせは、放っておいても、反論しても、行為がエスカレートすることがあります。被害が大きい場合には、すぐに次のような窓口に相談しましょう。
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(1)管理会社や自治会
マンションや店舗に張り紙をされた場合、まずは建物を管理している管理会社に連絡をしましょう。相手が誰かわからない場合には、嫌がらせをやめるように掲示などをしてくれると期待できます。
相手が同じマンションの住人といった場合には、被害者が直接話をすると火に油を注ぐ可能性があるため、管理会社から相手に話をしてもらいましょう。
また近隣で同様の被害が相次いでいる可能性がありますので、自治会に情報共有をしておけば、周辺への注意喚起や見回りをしてくれる可能性があります。 -
(2)警察
上記のとおり、張り紙による嫌がらせは、犯罪に該当し得るものですので、警察に相談しましょう。
事件性が低かったり、証拠が無かったりする場合は、警察は動いてくれないこともありますので、相談の際は張り紙の現物や当時の写真、防犯カメラ映像など、証拠となりそうなものを持参しましょう。 -
(3)弁護士
張り紙による嫌がらせは、様々な法的な問題点が含まれていますので、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。弁護士は違法性の判断、相手の特定、交渉など、さまざまな形でサポートしてくれます。
相手の名前や居場所がわかっている場合には、損害賠償を求めていくことも可能です。
3、張り紙による嫌がらせを法的に解決するには証拠が必要
嫌がらせを解決するためには、証拠が欠かせません。嫌がらせをした相手や行為の内容、被害状況がわかるものを集めましょう。具体的には次のようなものです。
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(1)防犯カメラ映像
嫌がらせをやめるように説得したり警察に捜査してもらったりするためには、相手を特定することが大事です。
ただ相手が見ず知らずの人というケースも少なくありません。そこで相手を特定するために有効な手段が、防犯カメラです。
嫌がらせをしている状況が撮影されていれば、行為を示す証拠になり、顔や体格などがわかれば相手の特定につながります。はっきりと映っていなかったとしても、ほかの証拠と組み合わせて相手がわかることもあります。
嫌がらせは一度で終わらないことも多いため、防犯カメラを設置しておくことをおすすめします。 -
(2)被害内容の物的証拠
嫌がらせを受けた事実や被害内容を証明するためには、現場写真などの物証が必要です。
張り紙や落書きをされた場合には、当時の現場の写真や張り紙そのものなどを残しておきましょう。張り紙から筆跡がわかったり、指紋が採取できたりする可能性があります。
また相手が判明していて直接交渉した場合には、その際の映像や録音データがあるとよいでしょう。 -
(3)探偵の調査報告書
相手が誰かわからない場合には、探偵に調査を依頼するのも一つの手です。
探偵は張り込みや尾行などにより、相手を特定したり物証となりそうなものを集めたりしてくれます。たとえば、同じ筆跡の相手から執拗に張り紙や落書きをされるようなケースでの犯人特定では、有効的な手段です。
また、調査報告書は裁判で証拠として活用できることがあります。
ただし費用がかかりますので、依頼前にしっかりと確認しておきましょう。
4、弁護士に相談した場合の手順や流れ
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(1)解決までの流れ
弁護士に相談した場合、通常は次のような流れで対応が進みます。
- 弁護士による被害状況の確認
- 証拠の確認、相手の特定
- 相手との交渉、示談
- 交渉で解決しない場合は民事訴訟または刑事告訴
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(2)被害が大きくなる前に相談を
最初は単なるいたずらだと思っていても、嫌がらせが続けばうわさがたって近所から白い目で見られたり、店の売り上げが減少したりする可能性があります。
相手がわかっていたとしても、いきなり直接交渉をすると逆上されるかもしれません。
そのため嫌がらせを受けた場合は、弁護士にサポートを求めましょう。弁護士に依頼すれば、被害者に代わって相手と交渉をしてくれます。
法律知識や証拠をもとに話をするため、相手が嫌がらせをやめることも期待できます。相手が応じず裁判や刑事告訴をする場合にも、サポートを受けられるため、まずは相談してみてください。
5、まとめ
嫌がらせを受けた場合、困惑や憤りとともに、恐怖を感じる方は少なくないでしょう。実際、ささいなトラブルから嫌がらせに発展し、エスカレートして大きな事件になることもあります。
特に相手が自粛警察などの場合、本人は正しいことをしていると思っているため、「やめてくれ」と言っても簡単には聞き入れてくれないでしょう。お困りの方はベリーベスト法律事務所 松山オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています