離婚問題は司法書士に相談すべき? 弁護士との違いとは
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松山市統計書(令和元年度)によると、松山市内では年間900組前後の夫婦が離婚しているとされます。いわば、離婚は身近に起こりうる出来事といえます。
しかし、離婚の際には多くの問題を一つ一つ手探りで解決していかなければならないため、当事者にかかる負担は決して軽くはありません。
負担を軽減するためには、専門家に相談することがひとつの方法になります。もっとも、どの専門家に相談すればよいか分からないという方も少なくないでしょう。
本コラムでは、離婚問題を司法書士に相談する場合と、弁護士に相談する場合の違いについて解説していきます。
1、司法書士とは? 弁護士との違いは?
まず「司法書士」と「弁護士」の業務内容の違いについて、確認しておきましょう。
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(1)司法書士とは
司法書士と聞くと、まず「登記」が思い浮かぶかもしれません。
不動産の登記や会社の登記などは、司法書士のメインの業務ともいえます。しかしそれ以外にも法律の専門知識を持つ専門家として、裁判所等などに提出する書類の作成や作成の相談を受けることもできます。
なお司法書士のなかでも法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」は、簡易裁判所を管轄とする訴額が140万円以下の事件に関して、依頼者の法律相談に応じ訴訟代理人としての業務も行うことができます。 -
(2)弁護士とは
弁護士は、法律の専門家であり、裁判のときに訴訟代理人として活動などを行う存在であることは周知の事実です。
しかし訴訟代理人としての業務に限られず、依頼者の代理人として相手と交渉するなどの裁判外の業務も行うことができます。
弁護士の業務内容は幅広く、司法書士が業務として行うことができる内容についても対応することができます。
つまり法律問題を解決するために、幅広く対応できる相談先が弁護士ということになります。 -
(3)司法書士と弁護士の違い
司法書士に依頼したときには、弁護士に依頼するときよりも費用を抑えられる可能性があります。その反面、司法書士には業務に取り扱えないものもあるため、依頼内容に応じてどちらに相談すべきかを慎重に判断する必要があります。
特に大きな違いとして挙げられるのは、依頼者の代理人として相手と交渉することができるかどうかという点です。代理人として交渉できるのは弁護士のみに認められる業務になるので、司法書士や行政書士などの他の資格では対応できません。
また司法書士は、訴額が140万円を超える法律トラブルにつき裁判所で訴訟代理人として活動することはできなかったりすることも大きな違いといえます。
2、離婚問題における司法書士と弁護士の違い
離婚は、「協議離婚」が一般的ですが、離婚協議がうまくいかないときには、裁判所が関与する「調停離婚」「裁判離婚」をすることになります。
具体的に、それぞれのパターンで、司法書士と弁護士ができる業務にどのような違いがあるのかをみていきます。
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(1)協議離婚での違い
協議離婚では、夫婦で離婚や離婚の条件について話し合います。そして話し合いによって合意ができた場合には離婚届を提出しますが、離婚条件については後の紛争を防ぐためにも「離婚協議書」などの文書にしておく方が望ましいです。
この「離婚協議書」について、弁護士は作成および作成の相談に応じることができます。一方で司法書士は、登記に関する添付書類として使用される場合に限り、離婚協議書の作成が認められると解されています。
なお離婚協議書を作成するためには、相手との離婚条件の交渉が必要になることがありますが、依頼者の代理人として交渉することが許されているのは弁護士だけとなります。
また離婚の際に取り決めた慰謝料・養育費・財産分与などの支払いが滞った場合でも、弁護士であれば、代理人として相手に支払請求する書類などを作成・送付することが可能です。 -
(2)調停離婚・裁判離婚での違い
協議離婚が成立しないときには、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」(離婚調停)を申し立てて、夫婦が調停委員を交えて話し合いして合意を目指します。しかし調停でも離婚に合意できないときには、離婚請求訴訟を申し立てることになります。
これらの申立書の作成は、裁判所に提出する書類の作成にあたるので、弁護士だけでなく司法書士も対応可能です。
もっとも離婚調停や離婚裁判で、依頼者の代理人として活動できるのは弁護士に限られます。認定司法書士であっても、簡易裁判所が管轄にならない、これらの調停や裁判に代理人として活動することはできません。
3、離婚問題を弁護士に依頼するメリット
離婚問題にお悩みで専門家への相談を検討している場合には、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に相談したときには、以下のメリットを得られる可能性があります。
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(1)制約なく幅広い業務に対応できる
認定司法書士は簡易裁判所を管轄とする、訴額140万円以下の事件について法律相談を受け、訴訟代理人になることはできます。しかし離婚問題は、管轄や訴額の面を考えると、司法書士が解決まで完全にサポートすることは難しいケースも少なくありません。
弁護士に依頼したときには、業務に制約がないため、問題解決までサポートが受けられるというメリットがあります。 -
(2)相手との交渉を任せられる
離婚問題では、夫婦の関係性によっては、相手の顔をみたり話し合いをしたりすることが非常に大きなストレスになることがあります。弁護士は、依頼者の代理人となり、相手と話し合いを進めることができるので、交渉を任せることができます。
そのため、精神的な負担が軽減できることも大きなメリットといえます。 -
(3)トラブルの予防策を講じることができる
離婚協議書などの書面を作成する際に、弁護士が関与していれば、記載内容についての高度な法的チェックが受けられます。また入れておいた方がよい文言などもアドバイスできるので、後日の紛争を防げる可能性も高まります。
また、合意内容を公正証書にしておくなどの後日のトラブルの予防策を講じることが可能になります。 -
(4)トラブルが生じてもスムーズに法的対応ができる
予防策を講じていても、離婚時に取り決めた養育費の支払いが滞るなどのトラブルが生じることはあります。そういったトラブルに対しても、弁護士は、強制執行や財産開示手続などの適切な法的対応を行うことができます。
4、相談するときにはどんな準備が必要?
実際に離婚問題を弁護士に相談するときには、次のような準備をして相談にのぞむとよいでしょう。
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(1)情報を整理し、離婚理由を明確にする
離婚問題を弁護士に相談するときには、離婚を決意していることが前提となります。離婚自体を迷っているなどというケースでは、離婚カウンセラーなどに相談したほうが良い場合もあるでしょう。また、DVを受けていて身に危険が迫っている、といった場合であれば、即座に警察などに相談しましょう。
離婚を決意しているのであれば、離婚理由を可能な限り明確にするべきです。なぜなら相手が離婚に応じないときには、最終的に裁判によって、民法で定められた法定の離婚原因が存在するかどうか、の判断を求めることになるので、離婚の理由は非常に重要な情報になるためです。
理由と合わせて、そこに至った経緯や家族構成などの情報もメモして準備していくと、弁護士に要点を伝えやすくなり、相談時間を有益に使えます。 -
(2)夫婦の財産を明確にし、要求をまとめる
離婚の際には、夫婦の財産を清算することになります。清算するにあたっては、夫婦にどのような財産がどれだけあるかを把握しておかなければなりません。
そのため相談前から財産を明確にできるようであれば、プラスの財産のほかに住宅ローンや借金などのマイナスの財産も含めて把握しておくとよいでしょう。
そのうえで、請求する財産分与、養育費などを弁護士と共にまとめることをおすすめします。
弁護士であれば、一般的な相場を踏まえつつ、ケースごとに必要な金額を算出し、相手と交渉することができるからです。 -
(3)証拠を集めておく
たとえば相手の不倫が理由で離婚を決意しても、相手が不倫を否定して離婚に応じない場合があります。しかしこのような場合でも、不倫の事実を示す証拠があれば、相手も離婚や慰謝料の支払いを認める可能性が高くなります。
また最終的に裁判で争われたときでも、証拠の存在は判決に大きく影響します。
そのため相談時点で収集できている証拠があれば、そろえておくとよいでしょう。
5、まとめ
本コラムでは、離婚問題を相談する場合における司法書士と弁護士の違いについて、解説していきました。離婚問題は、業務内容に制約なく依頼者を最後までサポートできる弁護士に相談することがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所 松山オフィスでも、弁護士が丁寧に話をうかがい、離婚問題をスムーズに解決できるよう全力でサポートしています。
おひとりで悩むことなく、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています