妻の使い込みで離婚! 財産分与など知っておきたいポイントを弁護士が解説

2021年09月09日
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妻の使い込みで離婚! 財産分与など知っておきたいポイントを弁護士が解説

松山市が公表している「令和元年度版松山市統計書」によると、平成30年度の松山市での離婚件数は、904件でした。離婚率(人口千対)は1.77であるため、厚生労働省が公表している全国平均の離婚率(1.68(平成30年))と比較すると松山市での離婚率は全国よりも高い水準であることがわかります。

令和元年の司法統計年報によると、夫が申立人となった離婚調停1万6502件のうち、妻の浪費を理由として申し立てられたものが2001件ありました。このことからも、妻の浪費が理由で離婚をしたいと考える男性が一定数いることがわかります。

妻の浪費を理由に離婚をする場合に気になるのが、妻が浪費で使ってしまった財産を取り戻すことができるかということです。

今回は、妻の使い込みで離婚をする際の財産分与のポイントについて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。

1、使い込みを理由に離婚! 財産分与はどうなる?

妻が、夫の婚前資産、生活費、貯金などを使い込み、豪遊していたことが発覚したとしたら、妻に対する不信感から離婚を考える男性も少なくないでしょう。

しかし、そもそも使い込みを理由に離婚をすることができるのでしょうか。また、妻の使い込みがあった場合の財産分与はどのようになるのでしょうか。

  1. (1)使い込みを理由に離婚をすることはできるのか?

    夫婦の話し合いによって離婚することに合意できた場合には、どのような理由であっても問題なく離婚をすることができます。しかし、相手が離婚に同意しないという場合には、最終的に裁判によって離婚しなくてはなりません。

    そして、裁判で離婚を認めてもらうためには、法定の離婚事由が存在することが必要となるのです

    離婚事由として、民法770条1項にいくつか定めがありますが、使い込みを理由に離婚する場合には、民法770条1項5号に規定する「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するかどうかがポイントになります。

    「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは、一般的に、婚姻関係が破綻している状態のことです。婚姻関係の破綻を判断するにあたっては、以下のような婚姻生活上の一切の事情を考慮して判断することになります。

    • 別居期間の長短
    • 婚姻中の夫婦の行為や態度
    • 子どもの有無や状態
    • 婚姻継続の意思の有無
    • 当事者双方の年齢、健康状態、資産状況、性格など


    妻の浪費が「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるかどうかは、浪費の理由、内容、程度によりますので、浪費があれば常に離婚が認められるとは限りません。

    しかし、妻が夫に無断でブランド品を買いあさるなど多額の出費を繰り返したり、多額の借金を重ねたりして家計を困窮状態に陥れた場合には、夫婦の信頼関係を著しく害するものといえることから婚姻関係を継続し難い重大な事由があると判断されることもあるでしょう

  2. (2)財産分与で使い込まれた財産を取り戻すことができるのか?

    それでは、離婚が認められた場合には、妻によって使い込まれた財産を取り戻すことはできるのでしょうか

    離婚に伴う財産分与の場面を例に挙げて説明します。

    ①財産分与とは
    財産分与とは、夫婦が離婚をしたときに、離婚をした一方の者が他方の者に、夫婦が築いた財産の分与を求めることをいいます(民法768条1項)。

    財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産である夫婦共有財産です。共有財産の代表的なものとしては、以下のものがあります。

    • 現金、預貯金
    • 株式や投資信託などの有価証券
    • 不動産
    • 生命保険
    • 退職金


    他方、夫婦の協力とは無関係に形成された財産や婚姻前に貯めた財産などは「特有財産」として、財産分与の対象にはなりません。具体的には、以下のようなものがあります。

    • 親から相続した財産
    • 独身時代の現金・預貯金
    • 別居後に取得した財産
    • 住宅購入時に親から受けた援助金


    ②財産分与の割合による調整
    財産分与の割合については、原則として2分の1とされています。

    そうすると、当初は1000万円の共有財産があったにもかかわらず、妻の浪費によって財産分与をする時点では、400万円しか残っていなかった場合には、夫は200万円の財産分与しか受けられなくなってしまいます。これではあまりにも不公平な結果となることは明らかです。

    財産分与の割合については、原則が2分の1とされているだけで、個別事案で修正することは十分に可能です。財産分与の制度が、資産形成に対する寄与の割合に応じて共有財産を分ける制度であることからしても、浪費によって夫婦の財産を著しく浪費させた者に対しては、分与の割合を少なくするという考慮がされることもあるでしょう

    上記の事案では、妻の財産分与割合を低くすることで、浪費した妻と夫との間の公平性を調整することになるでしょう。

2、使い込みによる慰謝料請求は可能なのか

妻による使い込みを理由に離婚をする場合には、妻に対して慰謝料を請求することができるのでしょうか。

以下では、慰謝料請求ができるケースとできないケースに分けて説明します。

  1. (1)慰謝料請求ができるケース

    離婚にあたって、配偶者に対して慰謝料請求ができるのは、離婚するに至った原因について配偶者に有責性がある場合です。DVや不貞が有責性の代表例ですので、このような事案で慰謝料を請求できることはよく理解できるでしょう。

    浪費を理由に離婚する場合には、浪費自体は直ちに有責性があるとはいえないため、慰謝料を請求するためには、以下のような事情があることが必要になります。

    • ブランド品の購入やギャンブルなどで多額の支出をしていた
    • 夫に無断で借金をし、浪費に充てていた
    • 不倫相手との交際費用のために家計から多額のお金を支出した
  2. (2)慰謝料請求ができないケース

    他方、浪費をしたことについて配偶者に有責性が認められないケースとしては、以下のようなものがあります。

    • 妻が家計の管理が苦手であったため、一般家庭よりも支出が増えてしまった場合
    • 浪費をしたものの、財産の減少や家計への影響が少なかった場合
    • 家計から多額の支出があったものの、妻の浪費なのか、生活費の支払いのためなのかが判断できない場合

3、もしも、浪費で借金があったら支払い義務はあるのか

浪費癖のある妻による浪費によって財産が減るだけならまだしも、借金までしていたという場合に、夫には借金の返済義務があるのでしょうか

  1. (1)妻名義の借金であれば返済義務はない

    妻の浪費による借金のうち、妻が自分の名義で負った借金であれば、夫には返済義務はありません。妻が自分のカードでキャッシングをしたり、銀行から借り入れをしたりしたのであれば、妻自身に返済義務が生じますので、夫は返済する必要がないのです。

    ただし、夫名義の家族カードを利用して妻が浪費していたという場合には、カード会社との関係では夫が債務者となります。そのため、夫は妻がした浪費の借金を返済しなければなりません。

    また、夫が妻の借金の保証人になっていたという場合にも、夫に返済義務が生じるので注意が必要です。

  2. (2)日常家事債務については返済義務が生じる

    妻名義の借金であっても、日常家事債務として例外的に夫に返済義務が及ぶ場合があります

    民法761条は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う」と規定しています。

    これは、妻が日常生活に必要となる食料品や衣類の購入をする際に負債を負った場合には、日常家事債務として夫も連帯して責任を負わなければならないというものです。

    日常家事債務としてどの範囲まで責任を負うかについては、夫婦の社会的地位、職業、資産、収入などによって異なってきますが、高価なブランド品や宝石、夫婦の一方の趣味のための高額な支出などについては、日常家事債務とはいえないと判断されることが多いでしょう。

4、離婚時の相談は弁護士へ

使い込みを理由に離婚や慰謝料、財産分与を求める場合には乗り越えなければならない法的なハードルがあります。

そのため妻の使い込みを理由として離婚を考えている方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)使い込みの立証が必要

    財産が減っていた場合に、妻を問い詰めた結果、妻が浪費の事実を認めれば大きな問題はありません。しかし、妻が浪費の事実を否定した場合には、夫側がその事実を立証する必要があります

    財産が減っていたのであるから浪費があったことは明らかだと考える方もいるかもしれませんが、浪費の立証はそこまで簡単ではありません。

    法定の離婚事由に該当する浪費は、ある程度悪質なものであることが必要になりますので、妻がどのようなことに、いくら使ったのかを細かく調べる必要があります。しかし、夫が気づいた時点では、それらを立証する証拠が残っていないことも多く、浪費の立証が困難なケースもあるのです。

    証拠の収集方法や立証方法については、知識や経験がなければ適切に行うことが難しいため、弁護士の力を借りて行うとよいでしょう

  2. (2)離婚に関する手続きを一任することができる

    浪費に争いがある事案では、話し合いで解決することができず、調停や訴訟に発展することも少なくありません。

    離婚をする場合には、離婚の合意だけでなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与など決めなければならない項目が多く、それぞれの項目についてさまざまな法律上の争点が存在しています。

    そのため、浪費を理由に離婚を考えている方は、できるだけ早い段階で弁護士に相談をして、どのように離婚をすすめていくのがよいかについてアドバイスをもらうとよいでしょう

5、まとめ

浪費といえるかどうかについて、各家庭の資産や収入、経済レベルによって異なってきますので、一概には判断することができません。そのため、浪費を理由に離婚を考えている方は、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 松山オフィスでは、経験豊富な弁護士が、皆さまのご相談をお待ちしております。ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています