わいせつ物頒布等罪による逮捕後の流れとは? 松山市の弁護士が解説します
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かつて、イギリスの小説作品である『チャタレイ夫人の恋人』の翻訳書について、わいせつな箇所があるということで裁判になったことがありました。そのときは被告側の敗訴で絶版となり、伏せ字を用いた版が出版されました。
この件では小説の描写が「わいせつ」にあたるということで出版を禁じられたものです。しかし、時代の流れに応じてその判断は変わっています。本件でも、後に作品は無修正のものが刊行されています。さらには、わいせつ規制に関しても考え直すべきであるといった考えに賛否両論があります。
SNSが発達したこともあり、個人においても発表の場所が増えました。ここ松山でも、小説などを書いたりポートレートを撮影したりして、インターネット上で発表している方もいるのではないでしょうか? 芸術品だと思っていた作品がわいせつ物だと判断されたら、せっかくの作品がお蔵入りしてしまうどころか、逮捕されてしまう可能性もあります。
そこで、この記事ではわいせつ物頒布等罪の概要から問題点、逮捕された場合の対応などについて、松山オフィスの弁護士が解説します。
1、わいせつ物頒布等罪の概要
わいせつ物頒布等罪はわいせつな文書や画像を雑誌、DVDやBlu-rayなどの記録媒体に掲載して不特定多数に頒布することにより適用される罪です。ダウンロードなどの手段によってわいせつ物のデータを入手することができるようにする場合も含まれることがあります。
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(1)規定されている刑罰
刑法第175条にてわいせつ物頒布等罪は規定されています。罰則は2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料で、または懲役及び罰金を併科される場合もあります。
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(2)「わいせつ」とは?
しかし、そもそも「わいせつ」とはどのような内容を指すのでしょうか? 裁判では以下の3点を「わいせつ3要件」して提示しています。
- 徒に性欲を興奮させ、あるいは刺激させるものであるかどうか
- 一般的に人々が持っている性的な羞恥心を害するものであるかどうか
- 善良な性的道義観念に反しているものであるかどうか
これらの判断基準は現在も引き継がれていますが、具体的に要件に該当するかどうかという点について裁判で争われることが少なくないという現状があります。
2、わいせつ物頒布等罪による逮捕後
わいせつ物頒布等罪で逮捕されることになった場合、長く身柄を拘束されないためにも早いタイミングで事件が解決へ向かうようにしたいところです。
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(1)早期釈放のために必要なこと
刑事事件で逮捕されると、まず警察官による取り調べが48時間を上限に行われます。それが終わると、次は検察において取り調べが行われますが、この場合は24時間以内という制約があります。
逮捕に引き続き拘束する「勾留(こうりゅう)」が必要という判断が下されれば、裁判所に対して勾留請求がなされ、原則10日間、追加で10日間、つまり逮捕から数えて合計最大23日間拘束されることになります。
一連の流れ、それぞれのタイミングで被疑者をさらに拘束するか釈放するかの判断があります。犯罪の内容が軽微で、被疑者が十分に反省していると判断された場合は早期の釈放の可能性も考えられます。
しかし、逮捕されてから勾留が決定するまでの間、自由な接見(面会)ができるのは弁護士だけです。家族でも接見は制限されてしまいます。そこで、刑事事件の流れや法的解釈を熟知している弁護士に相談ができれば精神的な支えとなり、早い段階での釈放を実現できる手助けができるでしょう。また、裁判になっても、被疑者や家族を引き続き支えて手続きを進めることができます。
なるべく迅速に弁護士に依頼し、どのような対処を取るべきか相談するようにしましょう。 -
(2)示談による解決は可能?
わいせつな動画を頒布した場合、被害者は誰になるのかについて、考えたことはありますか。実のところわいせつ物頒布等罪は「社会公共に対する犯罪」のひとつとして規定されているため、特定の被害者がいない犯罪です。
しかし、わいせつな動画を作成する際に被写体となった人物が特定できるのであれば、その方が実質的な被害者となる場合もあります。
刑事事件において、起訴不起訴の判断や、刑罰を決める際、被害者の処罰感情は非常に重視されます。そこで、多くの刑事事件では被害者との示談交渉を行い、示談の成立と被害者から「許す」、もしくは「処罰を望まない」などの言葉をもらうことを目指します。示談を成立させることによって、被害届の取り下げや、不起訴、早期の釈放の可能性がうまれます。
なお、示談交渉は本人や、その家族には難しいものです。わいせつ画像の被写体がいた場合に実質的な被害者となりうる場合に、その方と示談したいと望んでも、被害者は加害者と直接話し合うことが苦痛だと断られる場合が多いからです。
そのようなときこそ、弁護士が力になります。法律を熟知しているだけでなく、事件に関しては第三者である弁護士との交渉であれば、被害者にも示談に応じてもらえる可能性が高まります。
示談の結果として加害者が十分に反省し、その気持ちが被害者にも伝わり、受け入れてもらえれば、不起訴処分となる可能性もあるでしょう。不起訴となれば、裁判にかけられることも前科がつくこともありません。
3、弁護士に依頼すると?
わいせつ物頒布等罪によって逮捕された場合、弁護士へ依頼することによってさまざまな助言が得られます。逮捕容疑が身に覚えのないことである場合は無罪を主張するためにも、また実際に罪を犯してしまった場合でも、できるだけ良い方向へ向かう助けとなります。
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(1)贖罪寄付
罪を犯した場合、示談などで被害者に誠意をもって謝罪し、損害を補償した場合は反省していると認められて、早期釈放や刑の減軽などが期待できます。
しかし、先ほど述べたようにわいせつ物領付罪は被害者がいない場合も多く、そもそも示談交渉ができない可能性もあります。そのような場合には、「贖罪(しょくざい)寄付」という方法も考えられます。
贖罪寄付とは、被害者がいない場合に贖罪の気持ちを示すべく金銭を弁護士会へ寄付することです。
贖罪寄付をした場合にはそれに対して弁護士会から証明書が発行され、その証明書が反省している証拠として認められることがあります。また、仮にわいせつ物を頒布することによって利益を得ていたとなれば、得た利益分等を贖罪寄付することによって、まさに反省の念を示す行為となります。 -
(2)勾留接見から裁判まで
その他、弁護士に依頼することで勾留中もさまざまな相談ができます。もちろん裁判でも心強い味方になることでしょう。
警察に取り調べを受けていると心細くなってつい、促されるままに自分がやってもいない罪を犯したと言ってしまい、罪が重くなってしまうケースもあるようです。そのような事態に陥ってしまわないよう、弁護士がしっかりとサポートします。また、万が一、裁判まで手続きが進んだ場合も適切な弁護活動を通じて、早期解決を目指します。
4、まとめ
わいせつ物頒布等罪で逮捕された場合、他の刑事事件と同じように手続きは進んでいきます。つまり、スピードが勝負になります。したがって、わいせつ物頒布等罪で逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所 松山オフィスでもアドバイスを行っています。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、不当に重い罪が問われないよう力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています