執行猶予中の再犯で逮捕! 再度の執行猶予がつくケースはある?
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愛媛県警察が公表する「令和4年中の犯罪の概況」によると、令和4年中、愛媛県の刑法犯の認知件数は4万1248件で、検挙件数は1万4175件となっています。
検挙後の刑事裁判で有罪と判断されたとき、実刑判決ではなく執行猶予つき判決を得るケースもあることをご存じの方は多いでしょう。
もし執行猶予中の再犯により再び逮捕されることになった場合には、執行猶予はどうなるのでしょうか。
本コラムでは、執行猶予とはそもそもどういうものか、また、執行猶予中に逮捕されたらどうなるのか、再犯に関する統計などとともに、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
1、執行猶予とは
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(1)執行猶予とは
執行猶予とは、刑事裁判での有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予することです。
たとえば、懲役1年の実刑判決が確定した場合には、直ちに刑務所に入り1年間懲役刑に服することになります。
一方、懲役1年執行猶予3年の執行猶予つき判決が確定した場合には、刑務所に収監されることはありません。執行猶予の期間である3年間、日常生活を送り、何事もなく過ごすことができれば、刑の言い渡しは効力を失い、刑務所に行く必要はなくなります。
なお、執行猶予期間が無事に経過した場合でも、前科が消えるというわけではありません。 -
(2)初度の執行猶予の要件とは
執行猶予つき判決を得るためには、次の要件を満たしている必要があります。
●「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない」または「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」
●言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金である
●酌むべき情状がある
2、執行猶予中に逮捕されたらどうなる?
それでは、執行猶予中に、再度、罪を犯して逮捕された場合、執行猶予はどのように扱われるのでしょうか。
執行猶予中に逮捕された場合、起訴されて有罪判決が下されると執行猶予が取り消される可能性があります。執行猶予が取り消されると、もともと言い渡されていた懲役刑と再度犯してしまった罪での懲役刑を合わせた期間刑務所に入ることになります。
しかし、執行猶予中に逮捕された場合でも、執行猶予が取り消されないこともあります。
具体的には、「再度の執行猶予」の要件を満たす場合です。この要件を満たせば、執行猶予が取り消されず、再度犯してしまった罪についても執行猶予となる可能性があります。
そのため、執行猶予中に逮捕されて起訴された場合には、「再度の執行猶予」の要件を満たすかどうかが重要なポイントになります。
3、「再度の執行猶予」がつくケースとは
それでは、「再度の執行猶予」は、どのようなときに認められるのでしょうか。
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(1)「再度の執行猶予」の要件とは
執行猶予が取り消されないために重要なポイントになる「再度の執行猶予」ですが、次の要件をすべて満たすことが前提となります。
●前回の執行猶予つき判決に保護観察が付されていないこと
●今回の罪について判決で言い渡される刑が1年以下の禁錮・懲役であること
●情状に「特に」酌量すべきものがあること
これら3つの要件すべてを満たすと、「再度の執行猶予」を得ることができる可能性があります。「再度の執行猶予」が得られた場合には、前回の罪の執行猶予も取り消されず、日常生活を送ることが可能です。
ただし、再度の執行猶予は、情状酌量について「特に」という文言がつくことからもお分かりのように、要件が厳しくなっています。そのため、「再度の執行猶予」を得ることは難しいといえます。
しかし、同種の犯罪を再度行ったわけでない場合は、「再度の執行猶予」が認められる余地があるでしょう。
同種の犯罪の再犯であっても、前回の犯罪行為と今回の犯罪行為の内容が大きく異なり、被害者との示談が成立していたりする等「特に」酌量すべき情状がある場合には、「再度の執行猶予」の獲得を目指すことも可能です。
この要件には明確な基準があるわけではないので、弁護士に相談して、有利な事情をできる限り主張し、「特に」酌量するべき情状があると認めてもらう必要があります。 -
(2)その他、執行猶予の取り消しを免れるケース
「再度の執行猶予」以外でも、以下のケースに当てはまれば、執行猶予の取り消しを免れる可能性があります。
●執行猶予期間中に逮捕された被疑事実が不起訴・無罪となる
そのため、執行猶予期間中に逮捕された場合、基本的には不起訴・無罪を目指し、それが難しい場合は、「再度の執行猶予」を獲得できるように弁護士に弁護活動してもらうことが重要になります。
4、再犯率の高い犯罪とは?
法務省が公開している「令和4年版 犯罪白書」によると、令和3年に刑法犯で検挙された17万5041人のうち、以前も刑法犯で検挙されたことのある再犯者は8万5032人で、再犯率は48.6%となりました。
また、刑法犯として検挙された成人のうち、前科を有する者(道路交通法違反を除く)は4万4015人で、有前科者率は27.5%でした。
さらに、罪名に着目すると、刑法の同一罪名の前科を有する者は14.3%で、「窃盗」「恐喝」「傷害・暴行」は前科と同一の罪名で検挙されることが多いという特徴があります。
なお、刑法以外では、覚せい剤取締法違反の同一罪名再犯率が非常に高いのが実情です。令和3年の成人検挙人員7709人のうち、同一罪名再犯者は5247人で、68.1%が再犯を繰り返しているという結果になりました。
5、執行猶予中に逮捕された場合には弁護士に相談
執行猶予中に逮捕された場合には、弁護士にできるだけ早くから相談することが大切です。ここでは、弁護士に相談・依頼するべき理由を見ていきましょう。
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(1)不起訴処分の獲得を目指す活動を行うことができる
執行猶予中の逮捕であれば、執行猶予が取り消しにならないように逮捕直後から弁護活動を行い不起訴の獲得を目指すことが理想的です。
執行猶予中の逮捕が不起訴になれば、執行猶予が取り消されるおそれはなくなります。
弁護士は、捜査機関に働きかけたり有利になるような証拠を提示したりするなど、さまざまな弁護活動を行い、不起訴処分獲得を目指します。 -
(2)「再度の執行猶予」を得るための活動を行うことができる
執行猶予中の逮捕により起訴された場合、執行猶予を取り消されないよう、「再度の執行猶予」の獲得を目指すことになります。
弁護士に依頼すれば、「再度の執行猶予」を獲得できる可能性が高まるでしょう。
たとえば、被害者との示談を進める等「特に」酌量すべき情状として有利に働く事情を検討して、執行猶予の取り消しを免れるために弁護士はできる限りサポートします。
6、まとめ
執行猶予中の傷害や窃盗などの再犯により、逮捕されることになったらどうなるのかについて解説しました。
再度の執行猶予を得たり、執行猶予の取り消しを回避したりするためにも、執行猶予中に逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に相談することが推奨されます。
ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士は、執行猶予中に逮捕された場合、可能な限り有利な結果にできるよう全力でサポートいたします。再犯でお悩みの方は、ひとりで抱え込まずにぜひ一度ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています