外国人労働者を雇用する前に知っておきたい法律をわかりやすく解説!

2019年12月13日
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外国人労働者を雇用する前に知っておきたい法律をわかりやすく解説!

最近は松山市内においても、飲食店やコンビニの店員、取引先の従業員として働く外国人が多くなったと感じている方が多いのではないでしょうか。日本では、海外市場への進出や優秀な人材の確保、労働力不足解消などを目的に、外国人労働者の雇用を積極的に行っている企業が年々増えています。もちろん、ここ、松山も例外ではなく、愛媛の中でも今治エリアに続く2番目に外国人労働者が多い地域となっています。

一方で、不法就労など在留資格に関するトラブル、労働時間や賃金など労働環境に関する問題など、外国人労働者を受け入れる企業には、法令遵守(コンプライアンス)が強く求められます。

今回は、外国人労働者の雇用を検討している中小企業経営者の方や人事担当者の方のために、関連する法律や雇用手続きなどについて、松山オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。

1、外国人労働者を雇用する際に知っておきたい法律

外国人労働者を雇用する際には、関連する法令について理解し、法的手続きに基づき採用を行い、適正な労働条件を確保しながら雇用管理を行っていく必要があります。

まずは、外国人労働者雇用に関連する主な法令について解説します。

  1. (1)出入国管理及び難民認定法(入管法)

    「出入国管理及び難民認定法」は、通称入管法または出入国管理法とも呼ばれ、出入国管理制度や難民認定制度とともに、外国人の日本国在留に関する許可要件や手続き、在留資格制度について規定しております。

    在留資格は、地位や身分、外交や研究・教育、芸術、高度専門職、技能実習などの活動内容に基づいて、分類されています。

    就労が認められる在留資格には、永住者や日本人の配偶者など就労活動に制限がない在留資格と、一般的に「就労ビザ」と呼ばれる就労活動に制限がある在留資格があります。

    外国人労働者を雇用するにあたっては、「どのような外国人労働者なら雇用してよいのか」「どのような仕事をさせてはいけないのか」「就労ビザの発給申請や期間の更新はどのようにすればよいのか」など、入管法が定めている在留資格について十分に理解しておくことが重要です。

  2. (2)労働施策総合推進法

    「労働施策総合推進法」では、一般の労働者に関する雇用管理上の措置などを定めているほか、外国人の雇入れや離職時の届出など、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職促進のための措置なども定められています。また、労働施策総合推進法に基づき、事業主が遵守するべき法令や雇用管理の内容について、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」が定められています。

  3. (3)その他の法律

    外国人労働者も日本人労働者と同様に、労働基準法をはじめ、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法、雇用保険法、厚生年金保険法など、労働者の保護や社会保障に関する法律が原則として適用されます。

2、外国人労働者を雇用した際に必要な手続き

経営者が雇用をする場合、労働者の国籍問わず、法律を遵守しなければなりません。外国人労働者を雇用するのであれば、さらに必要な手続きが増えると考えておいたほうがよいでしょう。

  1. (1)労働条件の明示

    雇用契約を結ぶにあたっては、賃金や労働時間などの主な労働条件について、書面などにより明示します。この手続きについては、労働者の国籍問わず用意したほうがよいものと理解しておいたほうがよいでしょう。

    なお、外国人労働者に対して明示する際には、母国語または使用する言語を併記するとともに、平易な日本語を使用するなど、外国人労働者が理解できるように努めることが求められています。

  2. (2)外国人雇用状況の届出

    「労働施策総合推進法」第28条では、すべての事業主に対して、外国人労働者の雇い入れ・離職時に、外国人労働者の氏名や在留資格、在留期間などについて、厚生労働大臣に届け出ることを義務付けています。

    雇い入れた外国人労働者が雇用保険の被保険者となる場合は「雇用保険被保険者資格取得届」に必要事項を記入し、被保険者となった月の翌月10日までに提出します。パートやアルバイトなど、雇用保険の被保険者とならない場合は「外国人雇用状況届出書」に必要事項を記入し、雇い入れた月の翌月の末日までに提出します。

  3. (3)雇用労務責任者の選任

    外国人労働者を常時10人以上雇用する場合は、人事課長などの中から雇用労務責任者を選任する必要があります。雇用労務責任者は外国人労働者の雇用管理やハローワーク、入国管理局など関係行政機関との連絡などを担当します。

3、外国人労働者を雇用して罰せられる場合

もし、雇用した外国人労働者が不法就労に該当する場合は、事業主も罪に問われてしまう可能性があります。

入管法第73条の2は、事業活動に関し、外国人を雇用するなどして不法就労活動をさせる行為は不法就労助長罪にあたるとし、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」を科されると定めています。事業主が不法就労であることを知らなかった場合は故意がないと判断される場合もあります。しかし、状況などから考えて不法就労の可能性があるのに、きちんと確認をせずに雇用した場合には過失があったとして、不法就労助長罪に問われることになるので注意が必要です。

外国人労働者を雇用する際には、「在留カード」などを確認し、雇用を検討している外国人がどのような種類の在留資格を持っているか、その在留資格が就労させたい業務に該当するか、在留期間の満了日はいつかなど、不法就労にあたらないかどうかを慎重に確認する必要があります。

なお、「外国人雇用状況の届出」を届け出なかったり、虚偽の申告を行ったりした場合は、「30万円以下の罰金」に処せられます。

4、外国人労働者を雇用すると助成金が受給できる?

外国人労働者を雇用した場合、日本人労働者の場合と同様に、国からの助成金を受給できるケースがあります。中小企業が対象となる助成金には次の3種類がありますが、いずれの助成金も事業主や労働者についての受給条件や受給できる額が細かく定められています。条件を確認したうえで雇用計画を立てて申請を行い、上手に活用していきましょう。

●中小企業緊急雇用安定助成金
労働者の雇用を維持するために、休業や教育訓練、出向を行った場合に受給できる助成金です。外国人労働者に日本語教育および職業訓練を行いつつ、生産性や雇用を保つことを目的とし、休業手当や賃金、出向労働者に係る賃金の一部、教育訓練費が受給できます。売上高または生産量の最近3ヶ月間における月平均値が、前年同期に比べて10%以上減少していることなどの受給条件があります。

●トライアル雇用助成金
ハローワークや職業紹介事業者などの紹介で、経歴やスキル、知識などから就職が難しい人材を一定の期間試行雇用した場合に受給できる助成金です。

●特定求職者雇用開発助成金
ハローワークや職業紹介事業者などの紹介で、就職困難な労働者を継続して雇用する労働者として雇った場合に受給できる助成金です。

5、外国人労働者の雇用管理やトラブルは弁護士に相談!

新たな在住資格である「特定技能」が2019年4月から施行され、外国人労働者の受け入れ拡大政策が進められています。労働人口の減少などの要因もあり、日本における外国人労働者は今後も増えていくことが予想されます。

一方で、技能実習生の過酷な労働環境がメディアでも頻繁に取り上げられているように、外国人労働者を雇用する事業主に対して、適切な対応や法的責任が強く求められることになるでしょう。

しかし、外国人労働者の雇用にあたっては、複雑な入管法や関連する法律を理解するとともに、法改正にもスピーディに対応していかなければなりません。さらに、在留資格の申請・確認、外国人労働者のための労働条件通知書や雇用契約書・就業規則などの整備、不法就労を防ぐための仕組み作り、労働時間や賃金・安全衛生管理の見直しなど、法律や指針に沿ったさまざまな取り組みが必要です。

また、外国人労働者と事業主や日本人労働者との間では、言語や文化、習慣などの違いから誤解や行き違いなどのトラブルがしばしば発生します。コミュニケーション不足やストレスが原因で、ケガや事故などが起こってしまうこともあります。

外国人労働者雇用を検討されている方や、雇用管理上のトラブルでお困りの場合は、早急に弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、入管法など関連する法律を遵守しながら、外国人労働者の雇用管理体制を整備するとともに、さまざまなトラブルを防止し、解決を図るための適切なアドバイスを受けることができます。

6、まとめ

今回は安心して外国人労働者を雇用するために、知っておきたい法律や手続きについて解説しました。

外国人労働者を雇用するにあたっては、入管法をはじめ、さまざまな法令を理解し、コンプライアンスを意識しながら、雇用管理を行っていく必要があります。外国人労働者の雇用についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所松山オフィスまでぜひお気軽にご連絡ください。企業規模を問わず、労働問題をはじめとした企業法務に関する知見が豊富な松山オフィスの弁護士が、問題解決に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています