未成年を雇用したい! 労基法による労働時間の制限などの注意点を解説
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中小企業庁の『中小企業白書』(平成31年版)によって、平成21年を境に従業員の超過不足を示す数値がマイナスに転化し、その数値は年々減り続けていることが明らかにされました。同書では、従業員数が少ない企業ほど新規求人数が急増していることも示され、中小企業の深刻な人手不足の様子がうかがえます。
このような状況から、なんとか人材を確保しようとして、未成年者のアルバイト採用をしている企業も少なくないでしょう。
しかし未成年者を雇用するとき、雇用者は、成人を雇う以上に労働基準法(以下、労基法)に注意を払わなければいけません。満18歳未満の者は深夜時間帯に労働させてはならない、などさまざまな制限があるからです。
この記事では、未成年を雇用するときに法的に注意しなければいけないことや、違反したときの罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。「これも法律違反だったなんて知らなかった……」とならないように、ぜひご一読ください。
1、労基法における未成年の扱い
最初に、労基法における未成年の扱いから確認していきましょう。
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(1)労基法における未成年者の定義
労基法では、未成年者を満20歳未満の者としています。ただし満18歳未満の場合は年少者、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了していない場合は児童と呼び、未成年者と区別しています。
たとえば平成14年5月20日生まれで、年齢を計算する日が令和2年4月20日なら満17歳なので年少者、令和2年6月20日なら満18歳なので未成年者です。
また、平成20年2月15日生まれの者の場合は、令和5年2月15日(厳密には2月14日の午後12時)に満15歳になります。したがって年齢を計算する日が令和5年3月15日なら児童、令和5年4月15日なら年少者として扱われます。
以上から、私たちが普段の生活の中で言う未成年者と、労基法における未成年者は、意味合いが異なるということがわかるでしょう。 -
(2)労基法における未成年者と年少者
実は20歳未満の労働者を雇う場合、「当人が労基法における未成年者なのか、それとも年少者(あるいは児童)なのか」は重要な問題です。
使用者は、労基法によって、すべての労働者に対して労働条件を明示したり、毎月1回以上賃金を支払ったり、休憩や休日を与えたりすることが義務づけられています。未成年者や年少者を雇うときは、それに加えて、健康や福祉を確保する観点から労基法で定められたさまざまな制限(これを保護規定という)を守らなければいけません。
ところがその制限の範囲が、未成年者や年少者によって大きく異なります。ゆえに20歳未満の者を雇うときに、その人が労基法ではどんな扱いになるのか、きちんと判断することが重要となるのです。
2、未成年・年少者を雇用する際の注意点
では、実際にどのような点に気をつけなければならないのでしょうか。未成年者、年少者にわけて見ていきましょう。
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(1)未成年を雇用する場合
未成年者を雇用するときは、特にふたつの保護規定(制限)に気をつける必要があります。
●労働契約の制限
未成年者との労働契約は、必ず未成年者本人でなければいけません。未成年者本人を差し置き、親権者や後見人と労働契約の締結をすることは、法律違反にあたります。
ただし、親権者や後見人などの同意書は基本的には必要となります。労働契約が法律行為であり、民法第5条「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」に該当するためです。
また労基法では、労働契約の内容が未成年者に不利であると認められると、親権者や後見人によって契約が解除できるとされています。したがって、親権者や後見人から解除の請求があった場合は、誠実に応じる必要があるでしょう。
●賃金受け取りの制限
未成年者の労働で発生した賃金は、未成年者が独立して請求できます。親権者や後見人が代わりに受け取ることはできないので、親権者や後見人に請求されたときは注意が必要です。 -
(2)年少者を雇用する場合
年少者を雇用するときは、未成年者で紹介したふたつの保護規定に加えて、以下の保護規定にも気をつけなければいけません。
●年齢証明書の備えつけ
年少者を雇うときは、未成年者の年齢を証明する書類を事業場に備えつける必要があります。年齢証明書には戸籍謄本や抄本などがありますが、住民票記載事項証明書が望ましいとされています。
●変形労働時間制の制限
変形労働時間制とは、1か月ないしは1年単位を変形期間とし、その中で特定の日あるいは週に法定労働時間を超えて働かせることができる制度です。
年少者の場合、この制度を適用することはできません。ただし、1週間のうち1日の労働時間が4時間以内、かつ同週内の労働時間が40時間を超えない場合は、別の日の労働時間を延長(10時間まで)することが可能です。
たとえば1週間の区切りが日~土で、月曜日8時間、火曜日6時間、水曜日4時間、金曜日に10時間、土曜日8時間といった勤務形態は認められます。
また1週間の労働時間が48時間、1日8時間を超えないのであれば、1か月ないしは1年単位の変形労働時間制が適用できます。
●時間外労働および休日労働の制限
年少者に時間外労働(1日8時間、週40時間を超える労働)をさせることは、法律違反になります。また、法定休日に労働させることも制限されています。
●深夜労働の制限
年少者を22時から翌5時の時間帯に働かせることはできません。ただしいくつかの例外があり、たとえば厚生労働大臣が必要であると認めた場合は、深夜時間帯を23時から翌6時に変更することが可能です。また交代制によって労働させる一部の事業であれば、終業時間を22時30分までにしたり、始業時間を5時30分からにしたりもできます。
●危険有害業務の制限、および坑内労働の禁止
重量物を取り扱う業務や運転中の機械に関わる業務など、危険有害業務とされる業務を年少者にやらせてはいけません。それ以外にも、衛生や福祉に有害な場所、坑内で働かせてはいけないとされています。
●帰郷旅費
解雇の日から14日以内に帰郷する年少者には、使用者から旅費を出すことが義務づけられています。ただ、本人が責任を取らなければいけないような理由での解雇で、かつ行政官庁にそれが認められている場合は、このかぎりではありません。 -
(3)児童は原則使用禁止
児童については、労働基準法第56条で、原則として働かせることはできないと定められています。
ただし、製造業や鉱業などの工業的事業以外の事業(非工業的事業)で、かつ次の要件を満たしているときは、満13歳以上の児童を雇うことが可能です。
- 児童の健康および福祉に有害がないこと
- 労働が軽易であること
- 労働時間が修学時間以外であること
- 所轄の労働基準監督署長の許可を得ていること
- 年少者と同等の保護規定を遵守していること
また映画の製作や演劇の事業の場合は、上記要件を満たせば、満13歳未満の者でも使用ができるとされています。
3、労働基準法違反になるケースと罰則
未成年者や年少者を働かせる場合、使用者は前章であげた保護規定を必ず守らなければいけません。
もし守らなかった場合、労働基準法違反になり、罰則が科される可能性があります。以下、主なケースと罰則について詳しくご紹介します。
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(1)未成年者本人ではなく、親権者と労働契約を締結した
未成年者本人を差し置いて、親権者や後見人と当人の労働契約を締結することは、労働基準法第58条違反です。この場合、使用者に、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
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(2)年少者に深夜労働をさせた
年少者に深夜労働をさせた場合、労働基準法第61条違反となり、使用者に6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、たとえ違法であったとしても、深夜労働をさせたのであれば、使用者は深夜割増賃金を労働者に支払わなければいけません。したがって、割増分を支給していなかった場合は労働基準法第37条違反となり、上記と同様の罰則が、プラスして科されることがあります。 -
(3)年少者に坑内労働をさせた
年少者に坑内労働させた場合、労働基準法第63条違反となります。このときの罰則は、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
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(4)年齢証明書の備えつけを行っていなかった
年少者や児童を使用するときは、年齢証明書の備えつけが必要です。こちらを怠った場合、労働基準法第57条違反となり、使用者に30万円以下の罰金が科されることがあります。
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(5)児童を工業的事業に就かせた
児童を工業的事業に就かせることは、労働基準法第56条違反です。使用者に1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科される可能性があるでしょう。
4、未成年の雇用について迷ったら弁護士へ
未成年者などを雇用するときには、保護規定をよく把握し、知らず知らずのうちに法律違反することのないよう十分注意を払う必要があります。
しかし実際の雇用では、「これは法的にどうなんだろう……」と悩む場面が少なくありません。少しでも迷いを感じたら、弁護士への相談をおすすめします。弁護士であれば、法的に守らなければならないことや雇用のときに用意すべき書類、契約書の作成方法などに関するアドバイスが可能です。
また、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスでは、リーガルプロテクトという顧問弁護士サービスをご用意しています。各雇用者に適したアドバイスがもらえるだけでなく、困ったときにすぐ相談できるのが特長です。料金もリーズナブルなので、ぜひご利用を検討してみてください。
5、まとめ
人手不足で悩んでいる企業からすると、たとえ未成年でも貴重な戦力となるでしょう。しかし慌てて雇ってしまい、のちに法的トラブルに巻き込まれるのは避けなければいけません。
もし労働基準法の理解に不安がある場合は、ぜひベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています