初めて社員を雇う経営者必見! 雇用契約書の作り方

2021年11月16日
  • 一般企業法務
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初めて社員を雇う経営者必見! 雇用契約書の作り方

ひとりで起業した場合でも、その会社が軌道に乗ってくると、「常駐のスタッフが欲しい」と思われるかもしれません。

しかし、気軽に人を雇った場合、あとで後々トラブルになる可能性もあります。

本コラムでは、初めて社員を雇うときに雇用契約書が必要なのか、雇用契約書には何を書けば良いのかベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士がお伝えします。

1、雇用契約書や就業規則の不備で起こりうるトラブル

個人事業主として仕事をしてきて、軌道に乗ってきたので社員をひとり雇いたい。
受発注の書類作成と、あと電話やメール対応をお願いしたい。知人にちょっと頼めそうな人がいる……。

こんなとき、わざわざ雇用契約書を作る必要はないのでは?と思われるかもしれません。しかし、たとえ付き合いの長い知人相手であっても、雇用契約書は必ず作成するようにしましょう。

労働契約は口約束でも成立しますが、あとでトラブルになった場合、「言った、言わない」の争いになりやすく、トラブル解決がより一層難しくなってしまうこともあるからです。

たとえば、

  • 働き始める日や期間などに認識違いが起こる
  • 従業員側と会社側で、給与額に齟齬が起こる


といった、トラブルに発展しかねません。

2、雇用契約書・労働条件通知書の作り方

上記のようなトラブルを起こさないためにも、きちんと契約書を作っておくことが大切です。本章で、働く前に労働者側と決めておくべきことなどについて見ていきましょう。

  1. (1)雇用契約とは

    雇用とは、民法623条によると、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約すること」である、とされています。

    以上のことからも、雇用契約は書面でなくとも、労働者が労働に従事すると使用者に約束し、報酬を与えると合意が取れた時点で成立する、と言えるでしょう。

  2. (2)労働条件通知書とは

    口約束でも雇用契約は成立します。しかし、労働基準法第15条および厚生労働省令では、労働契約を結ぶにあたり、賃金や労働時間やその他の労働条件は明示しなければならない、と定められています。この条件を明示した書面を「労働条件通知書」と言います。雇用契約書がなくても、労働条件は、必ず労働者側に伝えなければなりません

    雇用契約書に労働条件を入れ明示した形にするか、もしくは労働条件通知書と雇用契約書の2つを用意し、雇用契約書には通知書の条件に合意したことを示す文章を入れる、などといった方法を取るとよいでしょう

    なお、労働者を雇用するにあたって、明示すべき内容としては以下の通りです。

    • 労働契約の期間
    • 有期労働契約の更新の基準
    • 就業場所・従事すべき業務
    • 始業・就業時刻、所定労働時間を超えた労働の有無、休憩時間、休日休暇、2交代制等に関する事項
    • 賃金の決定・計算・支払い方法、賃金の締め切り・支払い時期、昇給に関する事項
    • 退職(解雇を含む)に関する事項
    • 賞与、臨時に出る給与、最低賃金
    • 労働者側が負担する食費や用具
    • 安全と衛生に関すること
    • 職業訓練
    • 業務外で災害が起こったとき、病気になったときに関する事
    • 表彰と制裁
    • 休職


    以上の条項は、使用者側より立場の弱い労働者を守るため、働く前に決めておく必要があります。労働条件が問題となったとき、書面がないと確認ができず、トラブルになることは容易に想像がつくことでしょう。

    もしも提示された条件と事実が違う場合には、労働者は即時に労働契約の解除ができます(労働基準法第15条第2項)。

  3. (3)労働条件の明示方法と契約書の取り交わし方

    なお、条件の明示方法については、労働基準法施行規則に定められています。平成30年4月1日から、労働者が希望する場合にはFAXやメール、SNS等による通知が可能となりました。ただし、いずれの場合も書面化できるデータで送ることとされています。

    なお、雇用契約書を取り交わす際には、同じものを2部作成し、双方が捺印します。契約書を取り交わした後は、双方で保管します。

  4. (4)就業規則もあると安心

    労働契約は個人と結ぶものですが、会社であれば他の従業員とチームとして働くこととなります。

    従業員全員が一定のルールと労務管理について理解し順守することで、安全に、効率的に事業を進めることができるでしょう。そのために必要とされるのが「就業規則」です。

    社員10人以上の事業者は就業規則を作成する義務があります。作成したら労働基準監督署に届け出ましょう10人以下の事業者であっても、できる限り作っておきましょう
    就業規則に労働条件が明示されていれば、雇用契約書作成時もそれを参照すればよいので、作成しやすくなります。

3、雇用契約について弁護士に相談するメリット

雇用契約について疑問があれば、ぜひ弁護士へ相談してください。
特に初めての人材採用をお考えならば、最初にしっかりと弁護士の目でチェックした雇用契約書と就業規則を作成しておくことをおすすめします

  1. (1)トラブルを回避する

    弁護士であれば、あなたが従業員を雇用することで起こりうるトラブルを想定した上で雇用契約書や就業規則を作成できます。

    明文化しておくことで、トラブルを前もって回避することができるでしょう。

  2. (2)業務内容を整理できる

    雇用契約書や就業規則を作るには、弁護士と二人三脚で、自分の事業内容をあらためて棚卸しすることになるでしょう。

    あらためて自分の事業や採用基準、賞罰、給与を考えることによって、これからどんな働き方をして、どのような組織にしていきたいのかが浮き彫りになります。
    弁護士のサポートがあれば、法的な漏れがなく、十分な内容の契約書が出来上がるでしょう。

4、まとめ

支払う人件費の大きさや労働法の厳しさを考えれば、初めての人材採用は大きな挑戦です。

「こんなはずでは……」という事態に見舞われないよう、雇用契約書は弁護士のサポートを得ながら必要十分な内容となるように整えましょう。また、状況の変化に応じて随時アップデートしていくようにしましょう。
ベリーベスト法律事務所 松山オフィスは社員採用を考える経営者の顧問サービスを行っています。労使トラブルを防ぐことができる雇用契約書の作り方は、経験豊富な弁護士へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています