離婚前提で別居! 住民票を移動し世帯主を変更したほうが良い?

2024年09月25日
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離婚前提で別居! 住民票を移動し世帯主を変更したほうが良い?

松山市が公表している令和5年版の保健衛生年報によると、令和3年の愛媛県松山市の婚姻件数は2038件、離婚件数は757件でした。

上記は離婚が確定した件数ですが、夫婦が離婚をする前に、検討・準備のために別居期間を設けるケースもあります。

別居の際、どちらかが住民票を移動する場合には、世帯主の変更が必要になるかもしれません。移動前後の登録内容を踏まえたうえで、市区町村役場で必要な手続きを取りましょう。

また、住民票の移動以外にも、離婚前提の別居をする際には検討するべき事項がたくさんあるので、一度弁護士にご相談ください。

今回は、配偶者と別居する場合における住民票上の「世帯主」の取扱いや、離婚前提の別居をする際の注意点などにつき、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。


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1、「世帯主」とは?

住民票には、「世帯主」が必ず記載されています。

まずは世帯主とは何か、どのような役割を負っているのか、どのように決めるべきなのか、離婚前提で別居する場合はどうなるのかなど、世帯主についての基本的な事柄を確認しておきましょう。

  1. (1)世帯主=住民票上の世帯代表者

    世帯主とは、住民票上の世帯代表者を意味します

    同一生計で生活する家族などは、住民票上の「世帯」として登録されます。
    さらに世帯ごとに1名、必ず世帯主を定めなければなりません。

    世帯主であるかどうかによって差が出る大きなポイントが、国民健康保険料の納付についてです。

    国民健康保険料の納付義務者は、被保険者が属する世帯の世帯主とされています。
    したがって世帯主は、世帯全員分の国民健康保険料を支払う義務を負います

  2. (2)世帯主は自由に決められる

    世帯主になれるのは、15歳以上の方です。
    15歳以上であれば、収入・性別・社会的地位などいかんを問わず、誰でも世帯主になれます。

    なお、同じ住所に住んでいる人の中で、複数の人を世帯主にすることも可能です。
    その場合、各世帯主は別の「世帯」を形成し、その他の同居人はいずれかの世帯に所属することになります。

  3. (3)配偶者と別居する場合における世帯主の取り扱い

    配偶者と別居する場合、住民票を移動するかどうかによって、世帯主変更に関する取り扱いが分かれます。

    ① 住民票を移動する場合
    以下のとおり、世帯主についても変更が生じます。
    • (a)世帯主が住所を出て別居する場合
      元住所の世帯では世帯主がいなくなるため、新たに世帯主を定める必要があります。
      一方、出ていった世帯主は、新たに世帯を形成して自分が世帯主になるか、すでにある世帯に所属するかのいずれかを選択します。
    • (b)世帯主でない側が住所を出て別居する場合
      元住所の世帯では、世帯主の変更は生じません。
      一方、出ていった世帯主でない側は、新たに世帯を形成して自分が世帯主になるか、すでにある世帯に所属するかのいずれかを選択します。

    ② 住民票を移動しない場合
    世帯主の変更は発生しません。

2、離婚前提の別居をする場合、住民票を移動するメリット・デメリット

婚姻している状態で別居する場合には、転入・転居・転出の届け出を行わなかったとしても、「正当な理由」が認められる可能性が高いでしょう(住民基本台帳法第52条第2項参照)。
離婚前提であるとしても、婚姻中の別居は流動的な状態であり、後に元の住所へ戻る可能性も十分あるからです。

したがって、別居時に住民票を移すかどうかは、メリット・デメリットを比較したうえで、状況に合わせて判断しましょう。

  1. (1)住民票を移動するメリット

    配偶者との別居時に住民票を移動することには、主に以下のメリットがあります。

    ① 公営住宅への入居を申し込める可能性がある
    住民票を移動することにより、公営住宅の入居申し込みの対象となることがあります。
    公営住宅は家賃が安いため、入居できれば別居後の生活が楽になるでしょう。

    ② 児童手当の受給者を変更できる
    子どもと一緒に別居する場合、配偶者との世帯分離を条件として、児童手当の受給者を変更できます。
    配偶者の所得が自分より高い場合、児童手当の受給権者は配偶者になっているでしょうから、世帯分離による受給者変更の恩恵を受けられます。

    ③ 認可保育所の保育料が下がる可能性がある
    認可保育所の保育料は、子どもの扶養者である夫婦の合算所得をベースに計算されるのが原則です。
    しかし、住民票上の世帯を分離しており、かつ離婚調停中であるなど生計の分離が明らかであれば、同居親の所得のみをベースに計算され、結果的に保育料が減額される可能性があります。

    ④ 別居している状態の証拠となる
    審判や裁判となった場合、夫婦が協力して生活をしていないことを証明しなければならない、という可能性もあります。そういった場合、住民票を移動し世帯主を変更していれば、容易に証明することができます。
  2. (2)住民票を移動するデメリット

    これに対して、配偶者との別居時に住民票を移動することの主なデメリットは、以下のとおりです。

    ① 公立学校の場合、転校しなければならないことがある
    子どもが公立学校に通っていて、住民票の移動先の地域が学区から外れる場合、転校を余儀なくされることがあります。

    ② 国民健康保険料の納付義務が新たに生じることがある
    国民健康保険料の納付義務は世帯主にあるところ、世帯分離によって新たに自分が世帯主となった場合、自分で保険料を支払う必要が生じます。

    ③ DV被害を受けている場合、配偶者に住所がバレる
    配偶者からDVを受けている場合、住民票の移動は慎重にしなければなりません。配偶者であれば、役所で請求すれば住民票を見ることができるからです。このような場合には、警察署などの相談機関で、まずはDVについて相談しましょう。必要と判断されれば、DV等支援措置を利用し、配偶者でも住民票が見られないようにすることができます。

    ④ 状況によっては、悪意の遺棄と判断される
    住民票を移すか否かに限らず、別居をスタートする場合には、相手の合意を得ておいた方がよいでしょう。

    民法上、夫婦には相互扶助義務(お互い助け合って生活していく義務)がある(民法752条)ため、その義務を放棄する(民法では「悪意の遺棄」といいます)と、あとあと相手から慰謝料を請求されるといった可能性もあります。

    相手に黙って別居すると、この「悪意の遺棄」と主張される可能性があるのです。DVなど一刻も早く逃げ出さなければならない、という状況ではないのであれば、別居について相手の合意を得ておきましょう。

    ⑤ 住宅ローンの契約者は、住民票の移動が難しい
    住宅ローンを組んでいる場合、その契約者が住民票を移動すると、住宅ローンの契約違反を指摘され、一括して返済するよう求められたりする可能性があります。住宅ローンは契約者が住むことを前提に低い金利が設定されているからです。
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3、離婚前提の別居をする前に考えておきたいこと

住民票の移動や世帯主の取り扱いだけでなく、離婚を前提として配偶者と別居する場合には、考えておくべきことがたくさんあります。

最低限以下の事項については、実際に別居をする前に検討・対応しておくとよいでしょう。

  1. (1)生活費・住居の目処を付ける

    別居後は、基本的には配偶者の収入を当てにせずに生活していかなければなりません。
    そのため、安定した収入を得られる定職を確保しておくなど、生活費の目処を付けておく必要があるでしょう。

    また、配偶者とは別に住居を借りるとなると、家賃の負担も重くのしかかってきます。
    可能であれば実家に身を寄せたり、借りるとしても家賃の安い公営住宅などに申し込んだりするなど、低コストで住居を確保する目処を付けておくことが望ましいでしょう。

  2. (2)離婚を主張するための証拠を集めておく

    配偶者と別居した後は、離婚協議を開始することになります。
    離婚協議を有利に進めるために、離婚前から利用できそうな証拠を集めておきましょう

    以下は、離婚協議で利用し得る証拠の一例です。

    ① 財産分与関連
    • 配偶者の預金通帳のコピー
    • 配偶者の給与明細や源泉徴収票のコピー
    など

    ② 慰謝料関連
    • 配偶者の不貞行為に関する証拠(写真、動画、メッセージなど)
    • 配偶者のDV、モラハラなどに関する証拠(動画、音声、メッセージなど)
    など

    ③ 子ども関連
    • 子育ての分担状況に関する資料(保育園の連絡帳、スケジュールメモなど)
    など


    特に、別居前でなければ取得が難しい証拠については、最優先で確保しておきましょう。

  3. (3)婚姻費用・面会交流は事前に決めることも検討

    婚姻中の夫婦が別居する場合、夫婦の片方がもう一方に対して、生活費等に当てるために「婚姻費用」を支払う義務を負います(民法第760条)。

    婚姻費用の支払いを受けられれば、別居後の生活がかなり楽になるため、あらかじめ婚姻費用の精算につき夫婦で合意しておくのが望ましいでしょう

    また子どもがいる場合には、別居中も両親との交流機会を確保するため、非同居親と子どもの面会交流の方法を定めておくことも考えられます。

    婚姻費用・面会交流の方法は、夫婦間の協議で決めるほか、家庭裁判所の調停・審判を通じて取り決めることも可能です。

4、別居後に離婚協議を進める際の注意点

配偶者と別居後に離婚協議を進める場合、トラブルや精神的なストレスを回避するため、以下のポイントに留意して対応することをおすすめいたします。

  1. (1)直接話す機会が減るので、文書で明確に主張を伝える

    別居後は、配偶者と直接話す機会が減り、離婚条件などについての意思疎通が難しくなります。

    夫婦間の認識に齟齬が生じることを防ぎ、離婚を円滑に成立させるためにも、お互いの主張は文書の形で明確に伝えることをおすすめいたします

  2. (2)弁護士を代理人として交渉するのがおすすめ

    夫婦間の行き違いを防ぎ、かつ離婚協議に伴うストレスを軽減するためには、弁護士を代理人として配偶者と交渉するのが得策です。

    弁護士は、依頼者のご意向を丁寧に聞き取った上で、有利な条件で離婚を成立させられるように交渉を進めます。

    依頼者の主張内容は、法的な観点を踏まえて作成した文書により配偶者に伝えるため、認識の齟齬が生じるリスクを抑えられます。
    また、協議・調停・訴訟等の手続きを全面的に代行するため、依頼者の負担が大きく軽減される点も、弁護士にご依頼いただくことのメリットです。

    配偶者との離婚をご検討中の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

夫婦が離婚を前提に別居する際、住民票を移動する場合には、世帯主の変更等が発生します。
住民票を移動するかどうかは、メリット・デメリットの両面を比較してご判断ください。

配偶者と別居した後は、実際に離婚協議を始めることになります。
できる限り別居前に十分な準備を整えたうえで、弁護士を代理人として配偶者と交渉するのがおすすめです。

ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。
配偶者との別居・離婚をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています