離婚届の証人は誰に頼める? 証人がいない場合も離婚できるのか
- 離婚
- 離婚
- 証人
松山市が公表する「松山市統計書(令和3年度版)」によると、令和3年の離婚件数は757件で、離婚率(人口1000対)は1.78でした。同年度の全国平均の離婚率1.50と比べると、高い水準であることがわかります。
協議離婚をするときには、夫婦で離婚届を記入することになります。このとき、離婚届の証人を誰に頼んだらよいのか悩む方もいるでしょう。
婚姻届であれば、友人や職場の同僚にも気軽に頼むことができましたが、離婚届となるとためらう方も多くいらっしゃるはずです。
本コラムでは、離婚届の証人になれる人の要件や証人がそもそもいらないケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚の証人になれる人は?
離婚届には証人の欄がありますが、証人になれる人には何か決まりがあるのでしょうか。以下では、離婚の証人に関する基本的知識について説明します。
-
(1)離婚に証人が必要な理由とは?
婚姻時の証人については、民法739条が「前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない」と規定しており、この規定は、民法764条によって離婚時においても準用されています。
したがって、民法が離婚時に二人の証人が必要であると定めているというのが形式的な理由になります。
さらに実質的にみると、離婚にあたって二人の証人を要求することによって、どちらか一方が勝手に離婚届を提出するといった虚偽の離婚を防ぐという理由や、軽い気持ちで離婚をすることを思いとどまらせるといった理由があると考えられます。 -
(2)離婚の証人になれるのはどんな人?
民法では離婚の証人について「成年の証人」であることを要件としていますので、夫や妻以外の第三者の成人であれば、自分の親、相手の親、兄弟姉妹や親戚、職場の同僚や上司など誰でも可能です。もちろん成人していれば、自分の子どもでも証人になってもらうことができます。
-
(3)離婚の証人になった場合のデメリットは?
「証人」のことを「保証人」と混同している方もいて、離婚の証人になったことで何か不利益が生じるのではないかと心配する方もいます。
しかし、離婚の証人は、保証人とは全く別ものですので、証人となったことによって、養育費の支払いや慰謝料の支払いなどの法的義務を負うといったことは一切ありません。
証人を頼もうとしたところ、相手にためらわれたという方は、ひょっとしたら、その方は、証人と保証人を誤解されているかもしれません。証人になっても法的責任は一切なく、デメリットはないことを説明することで、快く証人になってくれる可能性もありますので、話をしてみるとよいでしょう。 -
(4)どうしても証人が見つからないときは?
証人は当事者以外の成人であれば誰でもなってもらうことができますが、身近に親族や知り合いがいないという方では、なかなか見つけられないこともあるでしょう。そのような場合には、離婚届の証人代行サービスを利用してみるのも、ひとつの方法です。
インターネットなどで検索すると、さまざまな業者が離婚届の証人代行サービスを提供しています。身近な人には頼みづらいというときには、サービス内容や料金などを比較して納得できるようであれば、それらの業者を利用してみてもよいかもしれません。
2、どのようなときに証人が必要なのか
離婚届を提出するにあたっては、証人が必要な場合と不要な場合があります。証人を頼む前にご自身のケースがどちらに当てはまるかをまずは確認しましょう。
-
(1)証人が必要な場合
離婚届に証人が必要な場合とは、夫婦が話し合いによって離婚をする協議離婚のケースです。
-
(2)証人が不要な場合
離婚届に証人が不要な場合とは、協議離婚以外の調停離婚、審判離婚、裁判離婚によって離婚するケースです。
調停で離婚が成立した場合には、家庭裁判所によって調停調書が作成されます。また、裁判で離婚が認められた場合には、裁判所によって判決書が作成されます。調停や裁判で離婚が成立したとしても、離婚届の提出が不要になるわけではなく、調停離婚や裁判離婚の場合であっても離婚届の提出は必要です。調停離婚の場合には、調停が成立した日から10日以内、裁判離婚の場合には、判決が確定した日から10日以内に市区町村役場に離婚届を提出しなければならないとされています。
ただし、協議離婚と異なり、裁判所が関与したうえで離婚が成立していますので、証人が必要とはなりません。証人欄を白紙で提出したとしても、問題なく受理してもらうことができます。
なお、期限を過ぎても離婚届の提出は可能ですが、その場合には5万円以下の過料に処せられる可能性がありますので注意しましょう。
3、すぐに再婚できる? 男女の違い
離婚が成立すればお互い独身同士になりますので、いつでも再婚できると考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、すぐに再婚できるかどうかは、男女によって異なります。
-
(1)男性はすぐに再婚可能
男性は、再婚するにあたって特に期間制限はありませんので、離婚後すぐに再婚をすることも可能です。極端な例を挙げれば、離婚をした翌日に再婚をするといこともできます。
-
(2)女性の場合には再婚禁止期間がある
男性と異なり、女性には法律上「再婚禁止期間」が設けられていますので、離婚をしてから100日を経過した後でなければ再婚をすることができません(民法733条1項)。
「女性だけ再婚禁止期間があるなんて不合理だ」と思うかもしれませんが、再婚禁止期間があるのには理由があります。
その理由とは、民法の嫡出推定制度です。民法772条1項は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定め、同条2項は、「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」と定めています。すなわち、婚姻をしてから200日経過後または婚姻の解消から300日以内に子どもが生まれた場合、その子どもは夫の子どもと推定されてしまうのです。
もし、再婚禁止期間が設けられていなかったとすると、離婚してすぐに再婚をし、再婚後200日以降かつ離婚後300日以内に子どもが生まれた場合、現在の夫の子どもと推定されるだけでなく、元夫の子どもであるとも推定されてしまうという事態が生じることになってしまいます。
この問題を回避するために、女性にだけ再婚禁止期間が設けられているのです。
4、離婚前に確認!事前に決めておくべきもの
離婚をするときには、証人を誰にするか以外にも決めておかなければならないことが多くあります。
-
(1)離婚時に決めるべき内容とは
離婚をする際には、離婚に至った経緯や子どもの有無などに応じて、以下の内容を決めておく必要があります。
① 親権、養育費
夫婦に子どもがいるときには、離婚にあたってどちらか一方を親権者として定める必要があります。また、親権を獲得した親は、非親権者に対して、子どもの養育費を請求することが可能です。養育費の算定表は、裁判所がホームページ上で公開していますので、一度確認するとよいでしょう。
② 慰謝料
離婚にあたって有責性のある配偶者に対しては、慰謝料を請求することができます。有責性とは、たとえば、婚姻期間中に不貞行為やDVがあったような場合です。慰謝料を請求する際には、配偶者に有責性があったことを裏付ける証拠が必要になってきますので、事前に証拠を収集するようにしましょう。
③ 財産分与
財産分与とは、結婚している間に夫婦が協力して作った財産を分けることです。夫婦の共有財産が対象となりますので、独身時代の財産や夫婦の協力とは無関係に取得した相続財産などは財産分与の対象外となります。
財産分与の割合は、原則として2分の1とされていますので、専業主婦であっても、共有財産を2分の1の割合で分けることになります。
④ 面会交流
離婚によって子どもと別々に暮らすことになった親は、子どもとの面会を求めることができます。これを面会交流といいます。面会交流について取り決めをする際には、面会交流の日時、頻度、場所、方法などを取り決めておくと、離婚後の争いが少なくなるでしょう。 -
(2)不利な条件で離婚しないためには弁護士に相談を
上記のとおり、離婚にあたって決めておかなければならない内容はさまざまです。しっかりと取り決めをせずに離婚してしまったり、口約束だけで離婚してしまったりすると、後日争いになるということも珍しくありません。このような争いについては、離婚協議書や公正証書を作成するなどして、事前に回避することが可能です。
しかし、離婚協議書や公正証書を作成したときには、その内容について法的拘束力が生じます。そのため、不利な離婚条件でないかどうかを専門家である弁護士に相談しましょう。
また、慰謝料を請求するためには証拠が必要ですが、どのような証拠が必要かどうかについては、事案ごとに異なりますので、離婚に関する知識と経験のある弁護士でなければ正確に判断することは難しいでしょう。
離婚について考えたときには、まずは弁護士に相談をしてみることをおすすめします。
5、まとめ
離婚届の提出にあたっては、証人が必要になりますが、基本的には当事者以外の成人であれば誰でも証人になることができます。身近な方に頼んでもよいですし、証人になれる方がいない場合は代行業者を利用するのもひとつの方法です。
離婚にあたっては、証人以外にもさまざま事項を決めなければなりませんので、不利な離婚条件で離婚しないためにも、弁護士に相談されることをおすすめします。
離婚を決断したものの、何かお困りごとやお悩みを抱えている方は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでご相談ください。離婚問題の知見・経験豊富な弁護士が、親身になってサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています