離婚届の不受理届とは? 勝手に提出されないように行う対応

2021年09月27日
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離婚届の不受理届とは? 勝手に提出されないように行う対応

松山市が公表している令和元年度版の統計書によると、平成30年の離婚件数は904件でした。松山市内の過去の離婚件数をみると、平成26年から平成30年まで毎年900~1000件ほどの夫婦が離婚をしていることがわかります。

さて、協議離婚は、夫婦が離婚をすることに合意をして、離婚届を提出することによって成立します。離婚届の提出にあたっては、改めてお互いの離婚意思の確認を行うといったことはしないため、夫婦の一方が勝手に離婚届を提出してしまうという事態が起こることもあります。

そのような事態を回避するために有効な手段が「離婚届の不受理届」というものです。今回は、離婚届の不受理届について、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚届の不受理届とは?

離婚届を勝手に提出されないようにするためには、離婚届の不受理届を提出することが有効です。この「離婚届の不受理届」とは、どのようなものなのでしょうか。以下では、離婚届の不受理届の基本的事項と、不受理届提出の流れについて説明します。

  1. (1)離婚届不受理申出制度

    離婚届不受理申出制度とは、本人の意思に基づかずに離婚届が提出されるおそれがあるときに、市区町村役場に対して協議離婚届を受理しないように届出をする制度のことをいいます。離婚届不受理申出制度に基づき、離婚届の不受理届を提出することによって、不受理届を提出した本人以外から協議離婚届が提出されたとしても、受理されることはありません。

    なお、同様の制度として、婚姻届け、養子縁組届、認知届の不受理申出制度もあります

  2. (2)離婚届の不受理届の提出方法

    離婚届の不受理届については、最寄りの地区町村役場の窓口やウェブサイトなどで入手することが可能です。離婚届の不受理届の提出方法としては、以下のとおりです。

    ① 提出先
    離婚届の不受理届は、申出人の本籍地または住所地の市区町村役場の窓口に提出をします
    離婚届の不受理届は、原則として、本人が市区町村役場の窓口に行き、直接提出しなければなりません。提出時には、本人確認をされますので、運転免許証などの本人確認書類も一緒に持参するようにしましょう。

    ② 記載方法
    離婚届の不受理届の主な記載事項としては、以下のものがあります。不受理届の注意事項や記載例などを参考に記入するようにしましょう。記載内容自体は難しいものではありませんが、書き方がわからないというときには、市区町村役場の担当窓口で相談をしながら記入をするとよいでしょう。

    • 申出日
    • 申出人と相手方の情報(氏名、生年月日、住所、本籍)
    • 申出人の署名押印
    • 申出人の連絡先


    ③ 有効期限
    離婚届の不受理届を提出したときには、不受理届の取り下げをするまで不受理の効果が継続します。有効期限はありませんので、一度不受理届を提出しておけば、相手から勝手に離婚届が提出されて受理されるという心配はありませんので、ご安心ください。

  3. (3)離婚届の不受理届の取り下げ

    離婚届の不受理届を提出した時点では、離婚をする意思はなかったものの、その後夫婦で話し合いをした結果、協議離婚をすることになった場合には、不受理申出をした本人から離婚届不受理の申出を取り下げることができます。

    ただし、不受理申出をした本人が離婚届を提出するような場合には、不受理届の取り下げをしなくても離婚届は受理されますので、別途不受理届の申出を取り下げる手続きをする必要はありません。

2、離婚届の不受理届を提出すべきケースとは

離婚届の不受理届は、勝手に離婚届が提出されるのを防止するために有効な手段ですが、どのようなケースで利用すべきなのでしょうか。以下では、離婚届の不受理届を提出する理由と具体的なケースについて説明します

  1. (1)離婚届の不受理届を提出する理由

    夫婦が協議離婚をするときには、市区町村役場に離婚届を提出する方法によって行います。市区町村役場では、離婚届の記入に漏れがないかどうかや、記載に誤りがないかどうかといった形式面のチェックをするだけであり、離婚届を提出した夫婦に離婚する意思があるかどうかの確認までは行いません。

    そのため、離婚届を夫婦のどちらか一方が勝手に記入して提出したとしても、離婚届は問題なく受理されてしまうのです。その結果、戸籍上は、一応離婚が成立した形になってしまいます。

    勝手に離婚届を提出されたことによる離婚については、争うことが可能ですが、その方法としては、家庭裁判所の調停や裁判によらなければならず、非常に手間と時間がかかります。このような煩雑な手続きを回避する簡易な手段が離婚届の不受理届なのです。

  2. (2)不受理届を提出すべき具体的なケース

    離婚届の不受理届を提出すべき具体的なケースとしては、以下のケースがあります。以下のケースに当てはまる状況にある方は、早めに離婚届の不受理届を提出したほうがよいかもしれません。

    ① 相手が離婚を急いでいるケース
    相手がとにかく離婚を急いでいるというケースでは、離婚条件についての話し合いが長期化することによって、離婚が遅れることを嫌い、勝手に離婚届を作成して、提出してしまうということがあります。

    ② 離婚届を記入したが翻意をしたケース
    感情的になって離婚届を記入したものの、冷静になって考えてみるとやはり離婚をしたくないと考えることがあります。離婚届を本人が持っているのであればよいですが、記入済みの離婚届を相手が持っている場合には、いつでも離婚届を提出できてしまいます。

    離婚について翻意をしたのであれば、できる限り早く市区町村役場に行き、離婚届の不受理申出をするようにしましょう。

    ③ 離婚届を記入し、離婚条件について話し合っているケース
    離婚自体に合意できている夫婦は、離婚届だけ先に記入し、細かい離婚条件について話し合いをするということがあります。離婚条件について十分な話し合いができていない状況で、離婚届が提出されてしまうと、その後の話し合いがうやむやになってしまうことがあります。

3、離婚を回避するためにすべきこと

離婚届の不受理申出をすることによって、相手から離婚届が提出されることを防ぐことが可能です。それに加えて、離婚を回避したいと考えている場合には、以下の対応をするとよいでしょう。

  1. (1)話し合いでお互いに譲歩をする

    離婚をするきっかけには、DVや不倫などさまざま理由がありますが、もっとも多いのがお互いの性格の不一致による離婚です。婚姻をして夫婦生活を続けていく中で、些細なすれ違いからお互いに対して不満を持つようになって、離婚を考えるようになります。

    他人同士ですからお互いに考えの違いや価値観の違いは当然出てくることでしょう。お互いに衝突ばかりしていても夫婦関係の改善にはつながりませんので、相手の言い分もある程度認めて譲歩する姿勢を見せることが必要になります。

    お互いが歩み寄ることによって離婚を回避することが可能になるかもしれません。

  2. (2)冷却期間を置くために別居をする

    離婚を回避するための方法としては、冷却期間を置くために別居をするというのもひとつの方法です。お互いに同居をした状態では、感情的になってしまい、冷静な話し合いができないときでも、物理的に距離を置くことによって、お互いのことを見直すきっかけになるかもしれません。

    あまり長期間別居をしていると法定の離婚事由を補強する要素となってしまいますので、数週間や数か月程度別居をしてみるとよいかもしれません。

  3. (3)円満調停の利用

    夫婦の話し合いでなかなか復縁が図れないときには、家庭裁判所の円満調停を利用してみるとよいでしょう。

    家庭裁判所の調停では、夫婦関係に詳しい調停委員が夫婦の間に入って話を聞き、夫婦の復縁に向けてさまざまな方法をアドバイスしてくれます。お互いの話し合いではなかなか進展が見られないときには、調停という方法も検討してみましょう。

4、弁護士に相談するメリット

相手から離婚をしたいと伝えられたときには、早期に弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)不受理届の提出など適切なアドバイスが可能

    相手から離婚をしたいと伝えられたものの、離婚をしたくはないと考えているときには、相手の申出を拒むだけでなく、一度弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。

    自分だけで考えていたのでは、離婚届の不受理申出といった制度に思い至らないことがあります。離婚届については、勝手に作成した離婚届であっても、その無効を争うためには、調停や裁判手続きなどによって長期間争わなければならないことがあり、相当な労力を要します

    弁護士に相談をすることによって、不受理届の提出についてアドバイスをもらうことができるだけでなく、離婚を回避するための適切な手段についてもアドバイスしてもらうことができます。

  2. (2)離婚するときの流れについて教えてもらえる

    現時点では、離婚する意思はなかったとしても、仮に離婚したときにどのような条件で離婚をすることができるのかを知ることは、今後の人生の選択にあたって非常に有益です。

    離婚にあたっては、親権、養育費、慰謝料、財産分与など決めなければならないことがたくさんあります。それぞれの離婚条件について法律上の争点がありますので、法的観点から適切な主張を繰り広げることによって、有利な条件で離婚をすることができる場合があります。

    離婚に踏み切れない理由が、離婚後の生活の不安にあることもありますが、離婚条件が明確になることによって、離婚に踏み切ることができる場合もあります。そのため、離婚をするかどうか迷っている方であっても弁護士に相談をすることが有効な手段となります

5、まとめ

離婚届の不受理申出をすることによって、勝手に離婚届を提出されるという事態を回避することが可能です。手続き自体も簡単なものですので、勝手に離婚届を提出されるおそれがあるという方は、積極的に利用してみるとよいでしょう。

離婚をするかどうか迷っている場合や、離婚を回避したいと考えている方も弁護士に相談することによって適切な解決方法を提案してもらうことが可能です。まずは、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています