借金は離婚の際の財産分与の対象になる?弁護士が解説!

2019年03月18日
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借金は離婚の際の財産分与の対象になる?弁護士が解説!

愛媛県庁の統計によると、愛媛県内で平成26年中に離婚した夫婦は2,404組で、人口1000人あたりの離婚率は1.73%となっています。
離婚をする場合にはさまざまな要因が背景にあるものですが、配偶者のギャンブルなどで生じた借金をきっかけとして離婚を決意することもあるでしょう。
離婚の際には婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産を分け合うことになりますが、もし借金がある場合には、どうすれば良いのでしょうか。
本コラムでは、財産分与の取り決め方や、財産分与において考慮される借金、考慮されない借金について弁護士が解説していきます。

1、財産分与とは

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、夫婦が離婚する際に婚姻期間中の貢献度などに応じて夫婦が形成した共有財産を分配することをいいます。
    財産分与は、夫婦の財産を清算するという目的が主ですが、相手に対する損害賠償や離婚後の配偶者を扶養する意味合いも含まれて分与されることがあります。
    したがって財産分与とは別に慰謝料を請求できるケースでも、慰謝料分も含めて財産分与として相手に支払う場合があります。
    なお、財産分与請求権については、民法768条1項で「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と明記されています。

  2. (2)財産分与の支払額の統計

    裁判所の司法統計によると、平成29年に裁判や調停で支払額が決定した財産分与事件は930件ありました。その具体的な支払額は、100万円以下が273件ある一方で1000万円超も109件あり、大きく幅があります。
    財産分与の支払額は、夫婦が保有していた財産の額や婚姻期間中の貢献度などによって大きく違い、ケース・バイ・ケースということなのです。

2、借金は財産分与の対象になる?

財産分与の対象となる財産には、現金などの預貯金をはじめ、土地や建物などの不動産、株式などの有価証券、家具や家電などが含まれます。たとえそれらの財産が夫婦の一方の名義になっていたとしても、婚姻期間中に夫婦が協力して取得した財産といえるものであれば原則として財産分与の対象になります。

しかしふたりで築き上げてきた財産がプラスの財産だけなら良いものの、住宅ローンや車のローンといったマイナスの財産を抱えている場合も多いものです。
そのため原則として借金のようなマイナスの財産は、財産分与を行う際に、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた財産額を計算して、その額を基準とするという形で考慮されます。

ただし、すべての借金が財産分与の考慮されるわけではありません。
借金でも、財産分与で考慮される借金と考慮されない借金があります。
続けて説明していきます。

3、財産分与で考慮される借金とは

財産分与は、婚姻期間中に夫婦が形成した共有財産を対象とすることから、主に夫婦の共同生活のために作られた借金が財産分与で考慮されます。

具体的には、次のような借金が財産分与の対象になります。

  • 不足した生活費のために借り入れた借金
  • 家族で使用するために購入した車のローン
  • 家族で居住するために購入した不動産の住宅ローン

「不足した生活費」には、一般的な衣食住に要する費用のほか、子どもの教育費や医療費、適度な交際費なども含まれます。

4、財産分与で考慮されない借金とは

夫婦の共同生活のために借り入れたとはいえない借金は、財産分与で考慮されません。
具体的には、次のような借金が該当する可能性があります。

  • 婚姻前に夫婦の一方が自分のために借り入れた借金
  • 個人的な浪費のために借り入れた借金
  • ギャンブルのための借金

財産分与は婚姻期間中の財産を分配するものなので、婚姻前に夫婦の一方が自分のために借り入れた借金は財産分与で考慮されないことがあります。
また、夫婦のためではなく個人の浪費のための借金や、パチンコや競馬といったギャンブルのための借金は、財産分与で考慮されないことになります。

5、財産分与を取り決める方法とは

財産分与については、次のような方法で取り決めることができます。

  1. (1)夫婦による話し合い

    原則として、財産分与は夫婦による話し合いで取り決めることができます。
    財産分与の支払額などの具体的な内容については、当事者間で合意できれば自由に決めることができるのです。

    財産分与は、一般的にプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残額がプラスになる場合に分配されます。
    残額がマイナスになる債務超過の場合には分与できる財産はなく、借金は原則として借り入れた当事者が今後支払っていくことになります。

    なお、当事者間の協議で財産分与を取り決めた場合には、その内容を文書に記載しておくことが大切です。
    特に分割払いを取り決めるようなときには、支払いが滞った際には強制執行できるように強制執行認諾文言付き公正証書にしておくことがのぞましいといえるでしょう。

  2. (2)家庭裁判所における調停や審判

    財産分与について協議でまとまらない場合や話し合いができない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
    調停では、調停委員を交えて当事者間で話し合うことになります。
    離婚前であれば、家庭裁判所の離婚調停の中で財産分与についても話し合いをすることができます。
    離婚後であれば、家庭裁判所に財産分与請求調停事件の申し立てをして話し合います。

    財産分与請求調停では、財産分与の対象となる財産の総額を把握し、当事者双方の貢献度などが勘案され、話し合いが進められます。
    財産分与請求調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続きが開始されて裁判官が審判をすることになります。
    なお、民法768条2項において、財産分与の請求を調停や審判で行う場合には「離婚のときから2年以内」に行う必要があると規定されています。

  3. (3)離婚裁判

    離婚を求める離婚裁判を提起する場合には、離婚裁判に附帯して財産分与についても申立てをすることもできます。

6、財産分与に関して悩んだときには弁護士へ

財産分与に関しては、「対象財産が多く全体が把握できない」「財産の権利関係が複雑で分からない」など当事者間では解決しにくい問題も生じます。
借金がある場合には、具体的にどの借金が財産分与にどのように影響してくるのかを判断する必要もあります。
また離婚後に調停や審判で財産分与を求めていく場合には、離婚後2年間という限定された期間内で家庭裁判所に請求していかなければならず、ひとりで進めていくことは大変です。
財産分与に関して悩んだときには、早期に弁護士に相談してアドバイスを受けることがひとつの重要な選択肢といえます。

7、まとめ

本コラムでは、借金は離婚の際の財産分与で考慮されるのかを解説してきました。
借金も原則として財産分与で考慮されることになりますが、ギャンブルや浪費などの借金は、財産分与で考慮される可能性は低いです。
離婚の際には、財産分与のほかにも慰謝料や子どもの親権に関する問題などが生じます。
そういった財産分与を含めた離婚の際に生じるすべての問題に対して、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士はご相談者のご希望にそうように尽力いたします。
ぜひ一度お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています