労災の後遺障害の面談とは何か?
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愛媛労働局が公表している労働災害発生状況に関する統計資料によると、平成28年に発生した労働災害の件数は1452件であり、前年よりも47件増加しています。また、松山労働監督署管内における労働災害の件数は、537件であり、こちらも前年より45件増加しています。
仕事中や通勤中の出来事が原因で怪我や病気になった場合には、労働基準監督署による労災認定を受けることによって、労災保険から各種給付を受けることができます。怪我の治療を継続していても、完治することなく障害が残ってしまった場合には、後遺障害の認定を受けることによって、障害に対する給付を受けることもできます。労災の後遺障害の認定にあたっては、面談が行われることがありますが、面談ではどのようなことが行われるのでしょうか。
今回は、労災の後遺障害認定における面談や労災認定に不服がある場合の手続きなどを、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
1、労災の後遺障害の面談とは
労災の後遺障害の面談とはどのような手続きなのでしょうか。以下では、後遺障害の認定を受けるための手続きについて説明します。
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(1)労災における後遺障害とは
労働災害によって怪我をしたり、病気になったりした場合には、治療を行うことになります。しかし、怪我の内容や程度によっては、治療を尽くしたとしても完治することなく、機能障害、欠損障害、神経障害などの障害が残ることもあるでしょう。
このような障害が残ってしまった場合には、労働基準監督署による等級認定を受けることによって、労災保険から障害に対する給付を受けることができます。 -
(2)後遺障害等級認定の手続き
後遺障害の等級認定を受けるためには、申請書類の提出と面談を受けることが必要になります。
① 申請書類の提出
後遺障害の等級認定を受けるためには、労働基準監督署に対して、以下の書類を提出しなければなりません。- 「障害補償給付支給請求書(様式第10号)」(業務災害の場合)
- 「障害給付支給請求書(様式第16号の7)」(通勤災害の場合)
- 医師作成の後遺障害診断書
- MRIやレントゲンなどの画像データ等
② 面談
上記の申請書類を提出した後、面談が行われる場合があります。面談は、労働基準監督署の調査官や地方労災医員と呼ばれる医師が担当することになります。面談では、申請書類の内容を踏まえて、診断書などの資料だけでは確認することができない部分を中心に質問などがなされます。
質問内容にきちんと回答するとともに、ご自身の症状をしっかりと伝えることが大切です。
そのほかにも被災労働者の治療にあたった医師や病院等に対する照会も行われ、これらの結果を踏まえて後遺障害の等級認定が行われます。 -
(3)障害に対する補償内容
労働基準監督署から後遺障害の等級認定を受けることができた場合は、認定等級に応じて、労災保険から以下のような補償を受けることができます。
- 障害(補償)年金(1級~7級)
- 障害(補償)一時金(8級~14級)
- 特別支給金(1級~14級)
- 障害特別年金(1級~7級)
- 障害特別一時金(8級~14級)
2、申請結果に不服がある場合の手続き
労災の後遺障害等級認定の結果に不服がある場合には、以下のような手続きによって不服申し立てをすることができます。
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(1)審査請求
審査請求とは、労働基準監督署による労災の後遺障害等級認定の結果などに不服がある場合に、当該決定の取り消しを求める手続きです。審査請求をするためには、処分を知った日の翌日から3か月以内に労働者災害補償保険審査官に対して「労働保険審査請求書」を提出して行います。
審査官が審査請求の内容を確認し、請求内容が正しいと判断した場合には、労働基準監督署の決定の全部または一部の取り消しを行います。他方、審査請求の内容が間違っていると判断した場合には、審査請求を棄却するという裁決を行います。 -
(2)再審査請求
審査請求の結果、「審査請求を棄却する」という裁決がなされた場合には、決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に労働保険審査会に対して再審査請求をすることができます。また、審査請求をした日から3か月を経過しても決定がなされないときも、同様に労働保険審査会に再審査請求することができます。再審査請求は、必ず書面によって行わなければなりません。
再審査請求の審理は、審査請求とは異なり、3名の審査員で構成された合議体によって行われます。ただし、再審査請求における判断基準は、基本的には審査請求と同様ですので、後遺障害等級認定に関する新たな証拠が発見されない限り、判断が覆える可能性は低いでしょう。
審査会が再審査請求の内容が正しいと判断した場合には、原処分の全部または一部の取り消しを行います。他方、再審査請求の内容が間違いだと判断した場合には、再審査請求を棄却するという裁決を行います。 -
(3)取消訴訟
審査請求や再審査請求の結果に不服がある場合には、裁決があったことを知った日から6か月以内に、地方裁判所に原処分の取消訴訟または裁決の取消訴訟を提起することもできます。なお、取消訴訟の相手は、国となります。
取消訴訟では、裁判所が判断をしますので、労災認定基準や厚生労働省の通達に必ずしも拘束されるわけではありません。よって、労働保険審査会とは異なる結論が出る可能性もあります。
3、会社への損害賠償も検討を
労災によって障害が残ってしまった場合には、会社に対する損害賠償請求も併せて検討するようにしましょう。
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(1)労災保険からの給付だけでは十分ではない
労働基準監督署によって労災認定を受けることができれば、労災保険から以下のような給付を受けることができます。
- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 障害(補償)給付
- 遺族(補償)給付
- 葬祭料、葬祭給付
- 傷病(補償)年金
- 介護(補償)給付
これだけの給付が受けられれば十分だと感じる方もいるかもしれませんが、労災保険は被災労働者に対する最低限度の補償を行う制度に過ぎず、被災労働者が被った損害のすべてを補償するものではありません。
被災労働者は、労災によって多大な精神的苦痛を被ることになりますが、それに対する慰謝料は労災保険から給付されることはないのです。また、労災によって障害が残っていしまった場合には、障害の程度に応じて労働能力が制限されることになりますが、それに対する補償(逸失利益)も十分な内容とはいえません。 -
(2)会社に対して損害賠償請求が可能
上記のとおり、労災保険からの給付は、被災労働者が被った損害のすべてを回復するものではありません。労災保険からの給付では不足する部分については、労災の発生に関して責任のある会社に対し、損害賠償請求を検討する必要があるのです。
会社には労働者が安全に働くことができるように配慮する義務があります。これを「安全配慮義務」といいます。会社が安全配慮義務に違反して労働者に対して損害を与えた場合には、それを賠償する義務があります。また、従業員の不注意によって他の従業員に怪我をさせたような場合にも、使用者責任に基づき損害賠償義務を負う可能性が生じます。
このように、労災の発生について会社に責任がある場合には、会社に対して損害賠償請求を行うことが可能です。
4、弁護士に依頼するメリット
労災によって障害が残ってしまった場合には、早期に弁護士に相談をすることをおすすめします。弁護士に相談をすることによって以下のようなメリットを受けることができます。
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(1)適切な後遺障害等級認定を得られる可能性がある
適切な後遺障害等級認定を受けるためには、怪我の治療を継続し、医師から症状固定と判断されるまでしっかりと治療を行うことが大切です。仕事に早く復帰したいという気持ちもわかりますが、自己判断によって治療を途中で中断してしまったり、必要な検査を受けていなかったりすると、後遺障害等級認定の場面で不利に扱われる可能性が高くなってしまいます。
また、後遺障害等級認定では、被災労働者との面談も行われますが、申請時に提出する後遺障害診断書などの書類も重要です。後遺障害診断書には、労災認定基準に合致する障害が残っていることを記載してもらう必要がありますが、そのためには、診断書の作成にあたって医師に対する働きかけが必要になります。
弁護士は後遺症等級認定における治療の重要性を熟知していますので、労災にあったあと早めに相談をしていれば、通院や検査の不備によって後遺障害等級認定を受けることができないという不利益を回避することができるでしょう。
また、弁護士は、診断書にどのような記載が重要かも熟知していますので、医者が後遺障害診断書作成をする際に、意見を述べて検討を促すことを行うこともあります。 -
(2)会社に対する損害賠償請求のサポートを受けることができる
会社に安全配慮義務違反や使用者責任が認められる場合には、会社に対して損害賠償請求が可能です。しかし、これらを立証しなければならないのは被災労働者ですので、証拠の収集から立証まで、すべてを被災労働者が行わなければなりません。
法的知識が十分ではない被災労働者が、損害賠償請求を適切に行っていくというのは非常に困難な作業となりますので、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。弁護士に依頼をすることによって、会社との交渉、裁判手続きなど損害賠償請求に関する一切の手続きを任せることができます。
5、まとめ
労災の後遺障害等級の認定を受けることによって労災保険から障害補償給付などの労災給付を受けることができます。しかし、それだけでは十分な補償とはいえませんので、会社に対する損害賠償請求が可能であるかを検討しましょう。
労災の被害にあわれた労働者の方は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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