債務整理をした場合、賃貸物件から追い出されるの? 賃貸契約と債務整理の関係性

2022年11月01日
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債務整理をした場合、賃貸物件から追い出されるの? 賃貸契約と債務整理の関係性

松山市が公表している統計資料によると、令和2年時点における、松山市内の借家の数は、9万4810戸であり、16万4360人の方が借家に住んでいることがわかります。

借金の返済が難しくなった場合には、債務整理を検討することになります。しかし、アパートなどにお住まいの方は、債務整理を理由として、賃貸物件から追い出されるかもしれないといった不安を感じているかもしれません。また、賃貸物件から追い出されることがなかったとしても債務整理をすることによってどのような影響が生じるのか気になるという方もいるでしょう。

今回は、債務整理をした場合の賃貸契約との関係について、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。

(出典:松山市統計書 令和2年度版)

1、いずれの債務整理でも追い出されない

債務整理をすることによって、賃貸契約にどのような影響が生じるのでしょうか。以下では、債務整理についての簡単な説明と、債務整理による賃貸契約への影響について説明します。

  1. (1)そもそも任意整理・自己破産とは

    債務整理とは、借金を減額したり、支払いを猶予してもらったりすることによって借金問題を解決する方法です。賃貸物件に住んでいる方が利用する債務整理の手続きには、主に任意整理と自己破産という方法があります。

    ① 任意整理
    任意整理とは、債権者との交渉によって、借金の総額を減らしてもらったり、支払いの猶予・支払い回数の変更をしてもらったりすることによって、借金の返済を可能にする方法です。裁判所を介さない債務整理の方法ですので、特定の債権者のみを債務整理の対象にするなど柔軟な解決が可能という特徴があります。

    もっとも、あくまでも交渉による方法ですので、任意整理をするためには債権者の合意を得ることが必要になってきます。そのため、借金の大幅な減額や長期間の分割払いをしなければ返済ができないというケースについては、債権者が合意してくれない可能性が高いため、任意整理が難しい場合もあります。

    ② 自己破産
    自己破産とは、裁判所を介して借金を整理する方法です。裁判所に申し立てをして、免責許可決定を受けることによって、借金をゼロにすることができますので、借金の返済がどうしてもできないという方にとってはおすすめの方法です。

    ただし、自己破産をする場合には、一定以上の資産を有している場合には、それを手放して債権者への返済にまわさなければなりません。
  2. (2)債務整理で追い出されることはないがデメリットも生じる

    任意整理や自己破産をすることによって、借金問題は解決できますが、そうすると賃貸物件を追い出されるということを心配している方もいるかもしれません。

    賃貸人が賃借人との間の賃貸借契約を解除するためには、賃借人に賃貸契約上の義務違反があることが必要です。賃貸借契約を解除することができる事由としては、長期間の家賃滞納や用法違反があった場合などが挙げられますが、債務整理をしたということ自体は、賃貸借契約を解除する理由にはあたりません

    そのため、債務整理をしたことによって賃貸物件を追い出されるということはありませんのでご安心ください
    ただし、債務整理をすることによって、信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。これがいわゆる「ブラックリスト」と呼ばれているものです。信用情報機関に事故情報が掲載されてしまうと、クレジットカードやローンの利用が制限されてしまうといったデメリットが生じることもありますので、その点には注意が必要です。

2、信販系の家賃保証会社が利用しづらくなる

債務整理をすることによって賃貸物件を追い出されることはありませんが、賃貸物件を借りる際に保証会社を利用する場合には注意が必要です

  1. (1)債務整理によって信販系の家賃保証会社の審査に通りづらくなる

    賃貸物件を借りる際に、家賃の保証会社を利用することがあります。家賃の保証会社を利用する場合には、賃貸契約の審査とは別に、保証会社の審査に通らなければ賃貸物件を借りることができません。

    債務整理によって、信用情報機関に事故情報として登録されることになりますが、この情報は信用情報機関に加盟している会社や団体であれば、照会ができます。信用情報機関に事故情報の登録が判明した場合には、家賃の支払い能力がないものと判断されて、保証会社の審査に通りづらくなるでしょう。

    信用情報機関に加盟している家賃保証会社は、いわゆる信販系と呼ばれる保証会社ですので、不動産会社から信販系の家賃保証会社の利用を求められた場合には、審査が通らず、入居を断られる可能性が高いでしょう。

  2. (2)債務整理後に賃貸契約の審査をパスする方法

    債務整理をして、信用情報機関に、事故情報が登録されていたとしても、以下のような方法であれば賃貸契約の審査を通ることができる可能性があります。

    ① 信販系以外の家賃保証会社を利用する
    家賃保証会社には、信販系と呼ばれる会社以外にも全国賃貸保証業協会(LICC)、賃貸保証機構(LGO)、独立系保証会社と呼ばれる会社も存在しています。

    したがって、家賃の保証会社を利用することが賃貸契約の条件とされている場合であっても、信販系以外の家賃保証会社であれば審査を通ることができる可能性がありますので、そのような物件を探してみるとよいでしょう。

    ② 連帯保証人を立てる
    最近は、家賃保証会社を利用することが賃貸契約の条件とされていることが多いですが、家賃保証会社の利用が不要な物件も存在しています。そのような物件であれば、信用情報機関に、事故情報が登録されていたとしても借りることができますので、家賃保証会社の利用が不要な物件を探してみるとよいでしょう。

    ただし、家賃保証会社の利用が不要な物件では、その代わりに連帯保証人を立てることが条件となっていることがありますので、保証契約を頼める人を探さなければなりません。

    ③ 不動産会社にざっくりと事情を話す
    信販系の家賃保証会社以外の会社を利用できる物件、保証会社の利用が不要な物件というのは、数も少ないため個人の力だけでは探すのが難しいこともあります。

    そのような場合には、不動産会社にざっくりと事情を話して、過去に債務整理をしたとしても契約が可能な物件を探してもらうとよいでしょう。過去に債務整理をしたとしても、現在、家賃の支払い能力があるかが重要ですので、その点に問題がなければ、債務整理をしていたとしても問題がない、さまざまな物件を紹介してくれる可能性があります。

3、住宅ローンはいつから借りられるのか。その場合の注意点とは

債務整理をしたとしても家賃の滞納等がない限り賃貸契約への影響はほとんどありませんのでご安心ください。ただし、将来住宅ローンを利用して自宅を購入しようと考えている場合には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)一定期間は住宅ローンの利用が難しい

    自宅を購入する場合には、現金一括で支払うことができる方は少数ですので、多くの方が銀行の住宅ローンを利用することになります。住宅ローンの利用にあたっては、金融機関でローン申込者の信用情報を照会しますので、過去に債務整理をしたことがある場合には、信用情報の照会によってそのことが判明してしまいます

    高額な金銭を貸すことになる金融機関としては、ローン申込者の支払い能力については慎重に判断することになりますので、事故情報が、信用情報機関に登録されている場合には、ローンの利用を断られてしまう可能性があります。
    ただし、信用情報機関の事故情報は、一度登録されたとしても一定期間が経過すればその情報は抹消され、信用情報の照会によっても、その内容を確認することができなくなります。5~10年程度で事故情報は抹消されますので、その期間が経過してから住宅ローンの申し込みをするとよいでしょう

  2. (2)債務整理の対象となった金融機関で、住宅ローンが組めない可能性が高い

    一定期間の経過によって信用情報機関の事故情報は抹消されますが、過去に債務整理の対象に含めた金融機関では、住宅ローンが組めない可能性があります

    たとえば、過去に債務整理の対象に含めた金融機関では、独自に顧客データを保有していますので、事故情報が信用情報機関に登録されていなくても、過去に債務整理をしたことが分かり、住宅ローンの利用を断られてしまいます。また、債務整理の対象に金融機関を含めていなかったとしても、金融機関の関連会社が債務整理の対象に含まれている場合には、関連会社と共有しているデータによって、過去の債務整理が明らかになってしまう可能性があります。

4、債務整理のことは弁護士に相談を

借金の問題でお悩みの方は、債務整理で問題を解決可能です。借金に関する問題は、ひとりで悩んでいても解決はできません。早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

債務整理には、任意整理、自己破産、個人再生という3つの方法がありますが、どの方法が最適な方法であるかについては、ご本人の状況によって異なってきます。最適な債務整理の方法を選択するためには、専門家である弁護士のアドバイスが不可欠です。

また、弁護士に債務整理を依頼すれば、債権者との交渉や裁判所への申し立ては、すべて弁護士が行いますので、ご本人の負担もほとんどありません。受任通知が債権者に届いた後は、直接の連絡や取り立てが禁止されますので、安心して生活の再建に取り組むことができるでしょう。

5、まとめ

債務整理をしたとしても、そのことだけを理由に賃貸物件を追い出される心配はありませんので、ご安心ください。ただし、債務整理によって信販系の家賃保証会社を利用することができなかったり、将来の住宅ローンの利用に制限が生じることもあります。

債務整理にあたって不安があるという方は、お早めにベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでご相談ください。

当事務所では、借金のご相談は何度でも無料ですし、正式にご契約を結ぶまでは費用はかかりません。また、債務整理に必要な費用は、契約前に弁護士からしっかりと説明があります。

賃貸住宅に関すること以外にも借金を整理するにあたって気になることがあれば、事務所に起こしいただいた際にお問い合わせください。
弁護士が、ご相談者さまの疑問は不安を解消しつつ、状況に応じた最適な借金の整理方法をご提案いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています