自己破産できないと言われた! その理由と別の債務整理方法も解説
- 自己破産
- 自己破産できないと言われた
裁判所の司法統計によると、令和2年に松山地方裁判所に新規に申し立てられた破産事件の件数は、735件でした。この数字は、高松高裁管内(高松、徳島、高知、松山)で最も多い数字となっています。
借金の返済が苦しくなってきた方の中には、自己破産を検討している方も少なくないでしょう。しかし、自己破産をするためには、借金があるという理由だけではできず、破産法が規定する要件を満たす必要があります。また、一定の事由がある場合には、自己破産の申し立てをしても免責が認められないこともあります。そのため、自己破産できないと言われた場合には、自己破産以外の債務整理も検討する必要があります。
今回は、自己破産できないと言われた場合の理由と対処法について、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
1、自己破産とは?
自己破産とはどのような手続きなのでしょうか。また、自己破産をするためにはどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。以下では、自己破産の概要について説明します。
-
(1)自己破産とは
自己破産とは、裁判所へ申し立てをし、免責許可決定をもらうことによって、すべての借金をゼロにすることができる手続きです。借金の返済ができなくなってしまった場合には、自己破産をすることによって、借金がゼロの状態で再出発をすることが可能になりますので、借金問題を大元から解決することができる手段といえます。
ただし、自己破産は、借金をゼロにすることができるという効果がある反面、一定以上の資産を有している場合にはすべて売却処分しなければならない、というデメリットがあります。そのため、自宅や自動車などを所有している方は、それを手放さなければなりません。 -
(2)自己破産をするための要件
借金がある、というだけでは自己破産はできません。自己破産をするためには、破産法が定める破産手続き開始原因があることが必要となります。破産法では、以下の2つの事由を破産手続き開始原因と定めています。
① 支払不能
支払不能とは、債務者が一般的・継続的に支払期限が到来した借金を返済することができない状態のことをいいます。債務者が支払不能にあたるかどうかについては、債務者の財産、収入、信用などの諸要素を考慮して判断することになります。
② 債務超過
債務者が法人の場合、支払不能のほかに、債務超過も破産手続き開始原因として認められています。
債務超過とは、借金の総額が債務者の資産総額をオーバーしている状態のことをいいます。債務者のすべての資産を売却処分したとしても、借金を返済することができない状態であれば債務超過と認められます。
2、自己破産ができない理由
自己破産できないと言われた場合には、以下のような理由が考えられます。
-
(1)本人に支払能力がある
自己破産をするためには、債務者本人に破産手続き開始原因があることが必要になります。一時的に失業しているため、借金の返済ができない状態になっている場合であっても、十分な預貯金があるような場合には、支払能力がありますので、自己破産はできません。
また、不動産などの資産を売却することによって、借金の返済が可能である場合にも支払能力がありますので、自己破産をすることができません。 -
(2)予納金を準備することができない
自己破産をするためには、裁判所に予納金を納める必要があります。自己破産には、自己破産の手続きが決まったと同時に、手続きが終了する「同時廃止事件」と、自己破産の手続きが始まったら、管財人が調査に入る「管財事件」の2種類があります。
同時廃止事件として処理される場合には、予納金は1万円前後で済みますのでそこまで大きな負担にはなりませんが、管財事件として処理される場合には20万円以上の予納金が必要となります。
予納金が準備できなければ、破産手続きが開始されることはありませんので、自己破産はできません。 -
(3)免責不許可事由がある
自己破産の申し立てをしたとしても、一定の事由がある場合には、免責許可決定を受けることができません。このような事由を「免責不許可事由」といいます。破産法が規定する免責不許可事由としては、以下のものが挙げられます。
- 破産財団(破産手続き開始時の破産者の財産)の価値を不当に減少させる行為
- 著しく不利益な条件で新たに債務を負担する行為
- 債権者間の公平を害する行為
- 浪費、または賭博その他の射幸行為
- 返済能力がないのにあると偽ってクレジット払い等の信用取引をする行為
- 業務帳簿等を隠滅・偽造・変造する行為
- 虚偽の債権者名簿を提出する行為
- 調査協力義務に違反する行為
- 破産管財人等の業務を妨害する行為
- 7年以内に再度免責を受ける等の場合
- 破産法上の義務に違反する行為
たとえば、ギャンブルや過度な浪費、7年以内の再度の自己破産などが代表的なケースです。ただし、免責不許可事由に該当する事由があったとしても、裁判所の裁量で免責を許可されるケースもあります。
-
(4)債務が非免責債権である
自己破産の申し立てをして、免責許可決定を受けることができれば原則として借金の返済義務はなくなります。しかし、自己破産の対象となった債権が非免責債権にあたる場合には、免責許可決定を受けることができたとしても、返済義務がなくなることはありません。
非免責債権としては、以下のものが挙げられます。- 所得税、市県民税、固定資産税等の税金、国民年金保険料、国民健康保険料
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 人の生命・身体を故意または重大な過失で侵害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 養育費、婚姻費用、扶養料に関する債権
- 労働者が持っている給料債権、退職金債権
- 債権者名簿にない債権者の債権
- 罰金
債務者の負債の大部分が非免責債権であった場合には、自己破産をしたとしても負担を軽減する効果はほとんど期待できません。
3、自己破産以外の債務整理を検討しよう
自己破産できないと言われた場合には、自己破産以外の債務整理を検討する必要があります。
-
(1)任意整理
任意整理とは、債権者(お金を貸した消費者金融など)との交渉により、将来かかってくる利息をカットしたり、返済額・返済期間の変更などの和解を成立させたりすることによって、借金の負担を軽減する方法です。
任意整理は、現在の返済額では返済を継続することが難しいものの、毎月の返済額を減らすことができれば借金の完済が可能という方にとっては有効な手段となります。自己破産のように借金をゼロにするという効果はありませんが、自己破産とは異なり特定の債権者のみ任意整理の対象にすることができますので、「保証人に迷惑をかけたくない」、「ローン付きの自動車を手放したくない」という場合には有効な手段となります。 -
(2)個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てをし、再生計画の認可を裁判所から受けることによって、借金の総額を大幅に減額することができ、減額後の借金を原則3年(最長5年)で返済していくという方法です。
借金の金額が大きくて任意整理をしても返済を続けることが難しいという場合には、借金を大幅に減額することができる個人再生を選択するとよいでしょう。個人再生は、自己破産のような免責不許可事由の定めはありませんので、ギャンブルや浪費などによって作ってしまった借金であっても減額の対象になります。
また、住宅ローン付きの自宅を所有している場合には、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)付きの個人再生を利用することによって、自宅を手放すことなく、借金の減額という効果を受けることができます。ただし、住宅ローンについては減額の対象とはなりませんので、引き続き返済をしていくことが前提です。
4、自己破産などの債務整理は弁護士へ相談を
自己破産などの債務整理を検討されている方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
-
(1)最適な債務整理の方法をアドバイスしてもらえる
債務整理の方法には、任意整理、自己破産、個人再生という3つの方法があります。どの債務整理の方法にもメリットとデメリットがありますので、借金の負担を軽減するためには、債務者本人の状況に応じた最適な方法を選択することが大切です。
弁護士は、具体的な事情を踏まえて、最適な債務整理の方法をアドバイスできますので、借金でお悩みの方は、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。 -
(2)弁護士が介入することによって債権者からの督促が止まる
弁護士が債務整理の依頼を受けた場合には、債権者に対して受任通知という書面を送付します。受任通知が債権者の手元に届いた後は、債権者が債務者本人に直接取り立てをすることが禁止されます。債権者の督促によって、精神的なストレスを抱える方にとっては、債権者からの督促が止まるということだけでも、弁護士に依頼をする大きなメリットになるでしょう。
債権者への返済を一時的にストップすることになりますので、その間に生活再建に向けて動いていくことができます。 -
(3)複雑な手続きをすべて任せることができる
自己破産や個人再生をする場合には、裁判所に申し立てをするための書類の作成や必要書類の収集などの手続きを行っていかなければなりません。弁護士に依頼をすれば、このような手続きをすべて任せることができますので、債務整理に関する負担を大幅に軽減することができるでしょう。
免責不許可事由があって自己破産できないと言われた場合でも、適切な資料提出や調査協力によって、裁量免責を受けることができる可能性があります。ご自身で判断して諦めてしまうのではなく、まずは弁護士に相談をしましょう。
5、まとめ
支払能力がある、免責不許可事由があるなどのケースでは自己破産をすることができないまたは適切ではない場合があります。自己破産できないと言われたとしても任意整理や個人再生によって借金の負担を軽減することが可能ですので、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
借金でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|