知り合いとの口論の末逮捕!? 暴行罪で逮捕されたらそのあとはどうなる?

2018年11月22日
  • 暴力事件
  • 暴行罪
  • 松山
知り合いとの口論の末逮捕!? 暴行罪で逮捕されたらそのあとはどうなる?

平成30年9月、愛媛県松山市内の路上に駐車中の自動車内において暴行事件があり、市内在住の男が逮捕されました。男は、被害者の男の胸ぐらをつかむなどの暴行を加えたことにより、逮捕に至っています。

平成29年の警察白書によると、暴行事件の認知数および検挙件数は、ともに増加傾向にあります。「暴行」に該当する行為は、一般の方が思う以上に幅広いものです。冒頭の事件のように、実際に殴っていなかったとしても、カッとして胸ぐらをつかむなどの行為によって検挙される可能性があるのです。

今回は、松山市および近隣市にお住まいの方に向けて、思いがけない出来事から暴行罪で逮捕されたらどうなるのか、手続きの流れや量刑などについて、弁護士が解説します。

1、暴行罪の定義とは?

暴行罪は、刑法第208条にて「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立すると定められています。つまり、暴力をふるって、相手がケガをしなかった場合ということです(ケガをしたら傷害罪等が成立)。

ここで示される「暴行」とは、「他人の身体に対する不法な有形力の行使」を指します。おそらく多くの方がイメージされる典型的な暴行行為といえば、他人に対して殴ったり蹴ったりする、いわゆる暴力でしょう。もちろん暴力をふるうことも「暴行」のひとつですが、刑法第208条に該当する「暴行」は、それだけにとどまりません。

具体的には、以下のような行為によって、暴行の罪が問われることがあります。

  • 殴る蹴るなどの暴力行為
  • 胸ぐらや腕をつかむ、肩を強く押す
  • 着衣を引っ張る
  • 髪の毛を切る
  • 水や塩をかける
  • 石が相手の近くに投げる
  • 狭い室内で日本刀を振り回す
  • あおり運転


このように、暴行罪は様々な有形力行使について成立します。なお、ボクシングは殴りあうスポーツですが、ルールの中で行われていれば正当業務行為として暴行罪は成立しません。他方、たとえ格闘技以外のスポーツでも、ルールに明らかに反する危険な行為を故意に行ったり、トレーニング・しごきと称して危険な行為を行えば、暴行罪や傷害罪が成立する可能性があります。

「暴行」によって相手がケガをしてしまった場合は、さらに罪が重い「傷害罪」に該当することになります。ケガを負わせるつもりはなかった、軽く殴ったら相手が転んでケガをしただけという場合でも、傷害罪にあたることがあります。

2、暴行罪の量刑はどのように決まる?

暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と定められています。

身柄を拘束する自由刑に該当する「懲役(ちょうえき)」になれば、刑務所で服役することになります。同じく自由刑の「拘留(こうりゅう)」も身柄を拘束されますが、労働の強制はなく30日未満と軽微です。また、財産刑に該当する「罰金(ばっきん)」は、指定された金額を一括で国に支払う刑罰です。「科料(かりょう)」も同じ財産刑ですが、1万円以下の軽微なものとなります。

なお、暴行行為によってケガを負わせてしまった場合は傷害罪が成立しますが、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と、刑法204条に定められています。暴行罪に比べてかなり重い量刑になっています。

暴行罪の量刑は、懲役から科料までと、かなりの差があると感じるかもしれません。
「暴行」とひとくちに言っても、その態様はさまざまで、水をかけただけの場合と日本刀を振り回したような場合では、負傷したり病気になる危険性に大きな差があります。そのため、実際の犯行態様によって、量刑も大きく変わるのです。

具体的には、暴行行為の悪質性や、初犯かどうかなどが大きな考慮材料となります。暴行罪は、親告罪ではありません。被害者が被害届を出しても出さなくても、警察が暴行事件を認知すれば事件化します。もしあなたが暴行の容疑がある「被疑者」として特定されれば、暴行罪は成立することになります。

しかし、被害者のいる多くの犯罪では、警察や検察は、被害者の「処罰感情」を非常に重要視します。処罰感情とは、被害者が加害者を罰したいと思うかどうかということです。つまり、加害者側としては、被害者に「処罰感情がない」と明言してもらうことは、非常に重要なこととなります。そこで、暴行をはじめ、多くの刑事事件で示談交渉を行うのです。

早期の示談成立は、将来へ及ぼすかもしれない影響を最小限に抑えることができます。万が一、あなたや家族が暴行の加害者となってしまったときは、まずはなによりも早期の示談成立を目指すことをおすすめします。

3、暴行罪の証拠は?

傷害であれば、診断書などの証拠を出せますが、ケガをしていない状態でなければ暴行罪に当てはまりません。つまり、診断書を出すことは非常に難しいことから、証拠となるものがないのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、もちろん証拠となるものがあります。

たとえば、ケンカをしていた場合には、周囲にいた人から警察に通報され、逮捕されることがあります。このとき、「通報者の目撃証言」が証拠となることがあります。学校での教諭の体罰ならば、被害者生徒の証言や他の生徒や教諭などの目撃者の証言があります。

近年では、スマートフォンなどのカメラ機能の性能が向上し、誰でも簡単に写真や映像を撮影できるようになりました。また、防犯カメラに暴行行為が記録されている場合、これが証拠となることがあります。

暴行行為は、ケンカなど、カッとしたときに発生するケースが多いものです。たとえば、酒によって口論となり、暴行に発展する場合も珍しくありません。このような場合、加害者は自分がした行動を覚えていないケースもあるかもしれません。しかし、映像が残っていれば言い逃れは難しいでしょう。

万が一、覚えていない暴行容疑で逮捕されてしまったとしたら、暴行行為を認めるべきかについて、迷うかもしれません。そのようなときは、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士なら法的なアドバイスができ、被害者との示談交渉まで対応することができます。

4、暴行罪で逮捕されたあとはどうなる?

暴行罪で逮捕された後は、刑事訴訟法によって定められた刑事手続きが行われることになります。まずは一定期間、警察署で身柄を拘束されるため、許可がない限り家に帰ることはできません。

そもそも逮捕とは、個人の身柄を拘束する措置となることから、強制処分として位置づけられています。つまり、本来は逮捕状がなければ逮捕できません。暴行が目撃されていた場合や、被害者が提出した被害届により捜査が進んだ場合は、逮捕状を持った警察官が自宅などに来て逮捕される(通常逮捕)ことがあるでしょう。

犯行中もしくは直後に身柄を拘束する「現行犯逮捕」は、犯行が明らかであるときの特例として、警察官はもちろん、一般人も行うことができます。よって、暴行事件においては、暴行行為を通報されて警察官が駆けつけて行われる場合や、ケンカを見ていた一般人に「現行犯逮捕」として身柄を拘束される場合があります。

一方で、身柄の拘束を伴う「逮捕」はされないまま、「在宅事件扱い」として捜査を受けるケースもあります。この場合は、必要に応じて警察署などに出頭し、捜査に協力しなければなりませんが、自宅で過ごすことができます。

万が一、暴行罪の容疑で逮捕されたときは、48時間以内に検察に送致するか否かが決定されます。送致されたあとは、検察官が24時間以内に、引き続き身柄を拘束して操作を行う「勾留(こうりゅう)」が必要かどうかを決定します。もし、勾留が決定すれば、最大20日間にわたり、身柄を拘束されたまま捜査を受けることになります。

拘留中であれば勾留期間が終わるまでに、もしくは在宅事件扱いのときは捜査が終わったタイミングで、検察が起訴するか不起訴とするかを決定します。不起訴となれば、前科もつくことなく、自由の身となります。

起訴のうち、「公判請求」されたときは、公開された刑事裁判で罪が裁かれることになります。身柄は、保釈請求が認められるか、裁判が終わるまで、引き続き拘束されるのが通常です。同じ起訴でも「略式請求」のときは、身柄の拘束は解かれ、略式裁判と呼ばれる、書類手続きのみの裁判にかけられることになります。

5、弁護士に依頼して示談成立を目指すメリット

「2、暴行罪の量刑はどのように決まる?」で説明したとおり、暴行罪の量刑の判断には、被害者感情が重視される傾向にあります。そのため、起訴前に示談が成立していれば、不起訴処分になる可能性もあるでしょう。仮に起訴されたとしても、量刑の軽い罰金刑に処せられるなど、示談の成立が考慮されることも少なくありません。

「示談(じだん)」とは、加害者と被害者が話し合うことによって、民事的な金銭面でのか解決を行うものです。被害者としては、犯罪被害に遭ったことについての損害賠償を請求するには、裁判など民事的な法的手続きに則って行う必要がありますが、これを任意に加害者の方から一定額を支払って和解することが「示談」です。
加害者側は、被害者に対して示談金を支払います。被害者側は、加害者を(少なくとも民事的な請求の面では)許したと明言し、その内容を記した示談書を取り交わして示談が成立します。被害者に「厳罰は望まない」旨の意向を示してもらえれば、なお効果的です。

早いタイミングで示談が成立すれば、検察へ送致されないこともありますし、不起訴処分になる可能性もあります。そのときは、前科がつくこともありません。仮に起訴されたとしても、示談により一定の被害回復があったとして量刑が軽くなる傾向にあります。仮に懲役刑になったとしても、執行猶予がつく可能性が高くなります。

法律上、示談そのものは、弁護士でなく加害者本人でも行えるものです。
しかし、多くのケースで、事件の被害者は、加害者と直接話し合うことを避ける傾向があります。たとえ、知り合い同士であっても、示談そのものを拒否されることもありますし、示談をしようと働きかけた結果、より処罰感情が高まってしまう可能性もあるでしょう。
もし、被害者が知り合いではないケースであれば、加害者自身が警察などに連絡先を教えてもらえる可能性は大変低く、示談そのものができないということも多々あります。

示談交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。事件の当事者でも身内でもない、法律の専門家による仲介によって、示談が進むことは少なくありません。また、相手が相場よりも高い示談金を求めている場合も、弁護士であれば交渉が決裂しないようコントロールしながら減額交渉を進めることができます。

6、まとめ

暴行罪は、暴行行為によって相手が負傷しなかった場合に成立する犯罪です。該当する行為が幅広く、典型的な暴力をふるったわけではないケースでも成立する可能性があります。
親告罪ではないので、被害届の提出がなくても事件化する可能性があります。

万が一、暴行容疑で逮捕されてしまう可能性があるときは、まずは示談の成立を目指すことになります。量刑や起訴・不起訴の判断をする際、被害者の処罰感情が判断材料となるケースが多々あるためです。示談が成立するメリットは早く成立するほど大きく、早期の示談には弁護士への依頼が有効です。

暴行罪で逮捕されてしまった、ケンカになり相手を殴ってしまったなど、逮捕の懸念があるときは、まずはベリーベスト法律事務所・松山オフィスまでご連絡ください。刑事事件やそれに伴う示談交渉の経験が豊富な松山オフィスの弁護士が、状況に適したアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています