伊予の早曲がりは違法行為! 交通違反や事故で弁護士ができること

2023年07月18日
  • 交通事故・交通違反
  • 伊予の早曲がり
伊予の早曲がりは違法行為! 交通違反や事故で弁護士ができること

愛媛県警察では、インターネットで交通事故の発生状況を公開しています。この統計によると、令和4年中の県下における交通事故の発生件数・死傷者数はともに前年比で減少しているものの、全事故件数に対する死亡事故の件数割合は全国ワースト9位で、愛媛県下における交通事故のうち、全体の約48.6%が交差点において発生していました。

このような状況を鑑みて、愛媛県警察は「いけんよ! “伊予の早曲がり”は危険な交通違反です!」と題したチラシを作成し、安全運転を促すとともに交差点における交通事故の防止を呼びかけています。「伊予の早曲がり」とは、交差点をカーブする際の危険運転を指す言葉で、県警に使われるほど、ご当地の言葉として県民に広く認識されています。

しかし当然、伊予の早曲がりによって交通事故を起こしてしまえば重大な責任を問われる事態は避けられません。本コラムでは「伊予の早曲がり」がどのような違反に該当するのか、罰則や交通事故を起こして逮捕された場合の流れなどを、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。

参考:愛媛県警察「交通事故発生状況~令和4年12月末(確定版)~」

1、「伊予の早曲がり」は交通違反!

「伊予の早曲がりは危険な交通違反です!」という呼びかけを聞いて、身に覚えがある方もいるのではないでしょうか。

伊予の早曲がりとはどんな運転なのか、法律に照らすとどんな違反になるのかを確認します。

  1. (1)伊予の早曲がりとは?

    「伊予の早曲がり」と呼ばれているのは、交差点を右折する際に、対向車が近づいているにもかかわらず対向車よりも先に右折する運転行為を指します。

    強引な右折は交通事故に直結する危険行為です。交差点内での事故は重大な死傷事故に発展するケースが多いため、愛媛県警察はとくに取り締まりを強化しています

  2. (2)伊予の早曲がりで起きやすい3つの違反

    伊予の早曲がりは、次の3つの交通違反につながります。

    • 交差点優先車妨害
      道路交通法第37条には、交差点で右折する場合、その交差点を直進・左折しようとする車両の進行を妨げてはいけないと定められています。
      伊予の早曲がりによって直進・左折のために交差点に進入した車が「危ない!」と急ブレーキを踏むような状況があれば、交差点優先車妨害です。
      同法第120条1項2号の規定によって、5万円以下の罰金が科せられます。
    • 交差点右左折方法違反
      同法第34条2項には、右折の際は、あらかじめその前からできる限り道路の中央により、かつ、交差点の中心の直近の内側を徐行しなければならないと定められています。
      早く交差点を曲がりたいばかりに、いわゆる「小回り」で右折すると交差点右左折方法違反です
      同法第121条1項6号の規定によって、2万円以下の罰金または科料が科せられます。
    • 横断歩行者妨害
      右折で交差点を抜けた先に横断歩道などがあり、歩行者や自転車の横断を妨げてしまえば横断歩行者妨害です。
      同法第38条1項には、「車が横断歩道や自転車横断帯に接近する場合は、その横断歩道や自転車横断帯を横断しようとしている歩行者・自転車がいないことが明らかな場合を除き、その直前で停止できる速度で進行しなければならず、横断しようとしている歩行者・自転車がいるときは直前で一時停止してその通行を妨げないようにしなければならない」と定められています。
      違反すると、同法第119条1項5号の規定によって、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。

2、交通違反・交通事故で逮捕されると、その後はどうなる?

伊予の早曲がりに限らず、交通違反は道路交通法などの法律に違反にあたります。

また、わざとではなくても、交通事故を起こして人を死傷させてしまうと自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)という法律が適用され、刑事事件として扱われる可能性があります。

では、交通違反や交通事故を起こして逮捕されると、その後はどうなるのでしょうか?
刑事手続の流れを追っていきます。

  1. (1)警察署に連行されて身柄を拘束される

    交通違反を警察官に現認されたり、通報を受けて交通事故の現場に警察官が駆け付けてきたりすると、その場で現行犯逮捕されることがあります

    現行犯逮捕されると、その時点で自由な行動は大幅に制限され、警察署へと連行されて身柄拘束を受けます。

    警察署へ連行されて最初に行われるのは、逮捕の理由となった事実の要旨を告げてその認否を確認する弁解を聞き取り、弁護人を依頼する権利がある旨を告げる「弁解録取」です。
    弁解録取が終わると、警察署の留置場への収容手続が行われます。

    留置場への収容手続が終わると、いよいよ取り調べの開始です。違反・事故を起こしたときの運転状況、現場までの運転経路など、説明を求められることになるでしょう。

  2. (2)多くは48時間で釈放され書類送検に

    警察による身柄拘束が認められているのは最大で48時間です。逮捕から48時間が経過するまでに、警察は逮捕した被疑者の身柄を検察官に引き継ぐか、釈放しなくてはなりません。

    一般的な刑事事件では、ほとんどのケースで検察官へと送致されますが、交通違反・交通事故に関しては検察官へと送致せず、48時間以内で身柄拘束を終了して釈放されるケースが多くを占めています

    これは、交通事件の被疑者の多くが悪質性の低い一般市民で逃亡を図る危険が低いこと、すでに証拠収集のほとんどが現場の捜査で終了しており証拠隠滅の危険がないことから、身柄拘束を続ける必要がないためです。

    ただし、48時間以内で釈放されても、交通違反や交通事故の捜査が終わるわけではなく、「書類送検」と呼ばれる手続きへと引き継がれます

    書類送検では、釈放後も警察署から呼び出しを受けて取り調べが行われたり、違反・事故の現場で検証が行われたりといった捜査が続き、最終的に捜査書類が検察官へと送致されます。

  3. (3)重大な違反・事故では、さらに21日間も身柄を拘束される

    危険性が高い交通違反や相手を重症・死亡させた重大な交通事故を起こした場合は、「釈放すれば重責をおそれて逃亡を図るのでは」との懸念から、より慎重な調査が行われる可能性があります。

    このようなケースでは、検察官へと送致されて24時間以内の身柄拘束を受けたうえで、10~20日間にわたって「勾留」による身柄拘束を受けるおそれがあります。

  4. (4)刑事裁判が開かれる

    捜査の結果から検察官が起訴に踏み切った場合は刑事裁判が開かれます。

    刑事裁判の基本は一般に公開される「公判」ですが、交通事件では書類のみで審理される「略式手続」が選択されるケースも多数です

    略式手続は迅速な処理が期待できますが、かならず罰金・科料が科せられます。事実を認めていることが前提になりますので、無罪や刑罰の軽減を主張したい場合は略式手続を受け入れてはいけません。公判と略式手続で迷ったら、弁護士に適切なアドバイスを求めることをおすすめします。

3、早期釈放や処分の軽減を望むなら弁護士のサポートが必須

交通違反・交通事故で逮捕されても、48時間以内で釈放されるケースが多数です。とはいえ、かならず48時間以内で釈放されるとは限りません。捜査機関の判断次第では、長期にわたる身柄拘束を受けてしまうおそれがあります。

早期釈放を実現し、厳しい処分を回避するには、弁護士のサポートが重要です。

  1. (1)早期釈放に向けた弁護活動

    早期釈放を実現するには、身柄拘束の必要がないことを主張しなければなりません

    身柄拘束が許されるのは被疑者が「逃亡または証拠隠滅を図るおそれ」がある場合に限られます。言い換えれば、逃亡・証拠隠滅を図るおそれがなければ、身柄拘束の必要はないといえます。

    もし、以下の状況であれば弁護士に相談しましょう。

    • 定まった住居で家族とともに暮らしている
    • 定職に就いている
    • 過去に悪質な罪や交通違反などを犯した経歴はない
    など


    これらは逃亡のおそれがないと主張する有利な事情になり得ます。弁護士はこれらの情報を捜査機関に説明し、身柄を拘束せず釈放するようはたらきかけることが可能です。

  2. (2)処分の軽減に向けた弁護活動

    伊予の早曲がりをはじめとした交通違反や他人を死傷させた交通事故は、刑罰が科せられるおそれがあります。裁判官の判断次第では懲役に処されて刑務所に収監されてしまう可能性もあるでしょう。

    弁護士は処分の軽減に向けて、さまざまな弁護活動を行います

    • 本人の深い反省を示す反省文
    • 家族などが作成した嘆願書を裁判官に提出する
    • 事故被害者に謝罪と弁済を尽くして示談を成立させる
    • 示談成立を示す示談書の提出
    など


    処分が軽減されるよう力を尽くします。

4、伊予の早曲がりだけじゃない! 全国の危険なご当地交通ルール

全国には、伊予の早曲がりと同じように危険なご当地交通ルールが存在しています。

  • 松本走り
    長野県松本市を中心としたご当地交通ルールとして知られているのが「松本走り」です。伊予の早曲がりと同じように、対向車がいるのにもかかわらず強引に右折したり、交差点で対面する信号が青色に変わった瞬間に右折したりといった運転を指します。
  • 茨城ダッシュ
    茨城県では、対面する信号が青色に変わった瞬間、対向車が動き出すよりも先に右折する運転行為を「茨城ダッシュ」と呼んでいます。信号無視にはならないものの、交差点の右折方法や横断歩行者妨害といった違反になったり、対向車や歩行者との接触事故を引き起こしたりする危険な運転です。
  • 名古屋走り
    愛知県では、黄色・赤色の信号を守らず交差点に進入する、右左折時にウインカーを点灯しない、交差点では強引に右折する、信号待ちの交差点で右左折のレーンから直進車の前に割り込むなど、マナーの悪い運転を総称して「名古屋走り」と呼ぶそうです。


これらは、いずれも道路交通法に違反するだけでなく、一歩間違えば重大な事故につながる危険な行為です。車を運転していると、目的地へと急いでいたり、気が大きくなったりして荒っぽい運転をしてしまうシーンがあるかもしれません。

しかし、何よりも大切なのは安全運転です。自分自身の平穏な生活や運転免許を失いたくなければ、法律の定めを遵守して、自分も他人も守る安全運転に努めましょう。

5、まとめ

「伊予の早曲がり」は、道路交通法違反になるだけでなく、対向車との衝突や歩行者との接触など重大な交通事故につながる可能性が高い危険な行為です。

愛媛県警察は交差点における交通事故を抑止するために伊予の早曲がりに対する取り締まりを強化しているので、危険な運転や重大な事故を起こせば逮捕されてしまうおそれもあります。

交通事件でお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスにおまかせください。交通事件の解決実績をもつ弁護士が、早期釈放や処分の軽減を目指して全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています