ひき逃げをしてしまった! 逮捕される? 弁護士に相談すべき理由とは
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松山市内で2018年2月に発生した重傷ひき逃げ事件では、現場の破片などから車種を特定し、容疑者が後日に逮捕されています。法務省が公開している平成30年版犯罪白書によると、平成29年のひき逃げ事件の発生件数は8283件(前年比2%・165件減少)で、全検挙率は58.4%、重傷事故検挙率は74.7%、死亡事故の検挙率は100%にのぼっていることがわかっています。
街頭の防犯カメラや車載カメラが増えていることから、証拠が集まりやすく、検挙率は年々上昇しているのです。逮捕されたあとの流れや出頭について松山オフィスの弁護士が解説します。
1、ひき逃げとは・問われる罪と刑罰
「ひき逃げ」とは、自動車の運転者が、走行中に人身事故を起こし、被害者が負傷または死亡しているにもかかわらずそのまま現場を立ち去ることを指します。まずは、どのような罪に問われるのかについて解説します。
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(1)道路交通法上の救護義務違反
道路交通法第72条では、交通事故の場合の措置を定めています。「交通事故が発生した際は、交通事故に関わる車両の運転者や同乗者は、すぐに運転を停止し、負傷者を救護し、道路上の危険がないように必要な措置を講じなければならない」と明記しているのです。
また、警察を呼び、事故の日時や死傷者、被害などについて報告する必要があります。さらに、警察が到着するまで現場にいなければなりません。これらの行為をせずその場から立ち去ってしまったとしたら、義務に違反したとみなされる可能性が高いでしょう。
道路交通法第72条に違反した場合の罰則は、道路交通法第117条に規定されています。事故の死傷の原因が自分の運転にあり、救護を行わなかった場合は、有罪となれば10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。 -
(2)自動車運転死傷行為処罰法違反
ひき逃げの有無にかかわらず、運転中の事故によって他人を死傷させた場合は、自動車運転死傷行為処罰法(正式名称は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」)違反の罪に問われます。
●過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第5条)
自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処されます。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるとされています。
●危険運転致死傷罪(同法第2条)
運転中の単純な不注意だけではなく、故意に次に掲げるような危険な行為によって人を死傷した場合は、危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。- 1 アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で運転していた場合
- 2 制御することが困難なほどの高速度で自動車を走行させた場合
- 3 安全に制御する技能を有しないで自動車を走行させた場合
- 4 人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、著しく接近し、かつ、危険な速度で自動車を運転した場合
- 5 赤色信号またはこれに相当する信号をことさらに無視し、かつ、危険な速度で自動車を運転した場合
- 6 通行禁止道路を進行し、かつ、危険な速度で自動車を運転した場合
上記に該当し、人を負傷させた者は、有罪となれば15年以下の懲役に処されます。
また、人を死亡させた者は同じく有罪となれば1年以上の有期懲役が科せられることになります。
●準危険運転致死傷罪(同法第3条)
アルコールまたは薬物、あるいは政令で指定する病気の影響により、自動車の安全な運転に「支障が生じるおそれ」がある状態で自動車を運転し、その結果、事故で人を死傷させた場合に問われる可能性がある罪です。
危険運転致死傷罪の構成要件である「正常な運転が困難な状態」が立証できない場合であっても、「正常な運転が困難になるおそれ」がある段階で、適用可能な罪状です。法定刑は、人を負傷させた場合は12年以下の懲役、人を死亡させた場合は15年以下の懲役となっています。
●過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(同法第4条)
アルコールまたは薬物の影響で、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」であることを認識しながら自動車を運転し、自動車事故を起こした場合に該当する可能性がある罪です。事故後、さらに飲酒や薬物を摂取したり、逃げてアルコールや薬物の濃度を減少させたりして、それらの影響の有無や程度の発覚を免れるような行為をした場合に問われます。
有罪となれば、12年以下の懲役が科せられます。もしその場から逃げた場合は、道路交通法のひき逃げによる懲役の最長10年が併合され、最高で18年の懲役刑を科すことが可能となります。
2、ひき逃げをした場合の逮捕とその後の流れ
万が一、ひき逃げを起こしてしまった場合の逮捕や、その後の流れを解説します。
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(1)ひき逃げは逮捕の可能性が高い
ひき逃げした者は、すでに現場から離れてしまっています。したがって、警察はそれをもって「逃亡のおそれがある者」とみなす可能性が高いでしょう。
そもそも「逮捕」とは「逃亡のおそれがある、証拠隠滅の恐れがある被疑者」に対して行うものです。したがって、警察はひき逃げの被疑者の身柄を確保したら、逮捕する可能性が高いと考えられます。 -
(2)逮捕後の流れ
ひき逃げの被疑者が逮捕されると警察署内の留置所に身柄を拘束され、取り調べを受けます。以降は以下のような処遇を受けます。
- 逮捕後48時間以内で、警察による取り調べを受ける
- 検察に身柄ごと送致するか、書類のみ送致し「在宅事件扱い」として釈放される
- 検察へ身柄送致された場合は、24時間以内に「勾留(こうりゅう)請求」の必要性を検察官が判断する
- 検察官による勾留請求が行われる
- 裁判所が勾留を認めた場合、10日間(最長20日間)身柄が拘束される
- 勾留期間中に、検察は捜査をすすめ、起訴・不起訴を判断
- 起訴(公判請求)となった場合、保釈が認めなければ裁判が終わるまで身柄の拘束を受ける
3、ひき逃げの最善策は一刻も早い出頭
ひき逃げをして逮捕されてしまったら、どうなるか不安になってしまうかもしれません。しかし、すぐに警察に出頭するのが最善策です。
出頭が遅れると、検察官や裁判官の心証も著しく悪化し、重い処分が科されやすくなってしまいます。他方、ひき逃げ事件の発覚前に出頭した場合は「自首」とみなされるケースがあり、刑罰を軽くできる可能性があります。
車載カメラや防犯カメラなどの普及により、事故現場そのものが見られていなくとも、前後の走行を撮影されている可能性は極めて高いものです。科学捜査の精度も向上しており、わずかな破片からでも車種の特定は可能です。
過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪は、ひき逃げの「逃げ得」をなくすために新たにつくられた罰則です。逃げることによって、より適用される罪状が増える可能性があることを知っておきましょう。
最終的に捕まってしまい、より厳しい処罰が科される可能性のほうが高いものです。したがって、逃げ続けて自分を不利な状況に追い込むより、一刻も早く出頭し、反省し罪を償う姿勢を見せることがもっとも将来への影響が少なくなるともいえるでしょう。
もちろん、ひとりで警察へ行くことは非常に不安に思うかもしれません。その場合、弁護士に依頼すれば同行してくれることもあります。冷静に取り調べなどを受けるためにも、自首する前に弁護士に相談しておくことをおすすめします。
4、ひき逃げで弁護士を依頼するメリット
ひき逃げをしてしまった場合、弁護士に依頼するメリットは以下のとおりです。
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(1)身柄釈放への働きかけ
被害が軽微だった場合、出頭しても逮捕を免れることができる可能性があります。
弁護士は、本人が反省していることや逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを捜査機関に効果的にアピールします。真摯に反省の態度を見せれば、身柄拘束が不要と判断され、釈放される可能性が高まるでしょう。 -
(2)示談交渉
弁護士は被害者との示談の成立を目指して交渉にあたります。
示談とは、事件の当事者間で謝罪と賠償を取り決めて、被害者は罪を許し処罰を望まないとする「宥恕(ゆうじょ)文言」を示談書で示すことを目指すものです。被害者との示談が成立した事件に関しては、捜査機関は刑罰を科す必然性が薄れるため、不起訴処分となる可能性が高まります。
示談交渉は、法的手続きと賠償金の相場に精通した弁護士が交渉に立つ方が、被害者側もスムーズに話し合いに応じることが多いものです。弁護士は加害者の経済状況も鑑み、無理のない金額や支払い方法で妥結するように交渉します。 -
(3)公判に向けた弁護活動
危険運転致死傷罪に問われかねない事態であれば、事故当時の危険性をどう認識していたかなど、状況により判断の分かれる部分が多分にあるものです。これらは、弁護士が適切な証拠を収集することで、量刑が大きく変わりうる部分です。早期に弁護活動を依頼することで、量刑を軽くできる余地も高まるでしょう。
5、まとめ
ひき逃げをしてしまったら、誠実に罪を償うしかありません。できる限り早く弁護士に依頼することで、重すぎる処罰を科されないよう、さまざまなサポートを受けることができるでしょう。
ご自身やご家族がひき逃げをしてしまった場合は、すぐにベリーベスト法律事務所 松山オフィスで相談してください。刑事事件や交通事故問題に対応した経験が豊富な松山オフィスの弁護士が、いち早く駆け付けて迅速に対応いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています