盗撮の余罪はどのように発覚する?余罪がある場合の対応と刑罰への影響
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令和4年7月、松山市内の商業施設で女性の後ろに立つなどの不審な行動をとっていた男が現行犯逮捕されました。男は盗撮目的で商業施設を訪れており、小型カメラのようなものを持ち込んでいたようです。逮捕された男は警察の調べに対して容疑を認めており「余罪」も含めた捜査が進められています。
盗撮は、成功すると何度も犯行を繰り返してしまいやすい、常習性の高い犯罪です。警察に盗撮が発覚すれば、余罪も含めて厳しい追及を受けるのは確実でしょう。
本コラムでは、盗撮が発覚するとどのように余罪が発覚するのか、余罪があると罪が重くなるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。


1、盗撮の余罪はどのように発覚する?
盗撮の容疑者を検挙した警察は、検挙につながった事件だけでなく、余罪の存在も視野に入れて捜査を進めます。
スマホやパソコンなどの端末に保存されている画像、SNSの投稿などから余罪を見つけ出すため、余罪がある場合は発覚する可能性が極めて高いと考えたほうがよいでしょう。
また、後で詳しく説明しますが、盗撮で検挙された場合に余罪の発覚を避けるために証拠隠滅はしてはいけません。ただちに弁護士に相談して対応についてアドバイスを求めましょう。
2、余罪があると刑罰が重くなる? 量刑への影響は?
「盗撮」は都道府県の迷惑防止条例によって規制される違法行為です。
愛媛県でも「愛媛県迷惑行為防止条例」の第4条によって次のとおり禁止されています。
- 第1項4号……公共の場所・乗り物における盗撮行為
- 第2項2号……住居・浴場・便所・更衣室などにおける盗撮行為
- 第3項……集会場・事務所・教室などにおける盗撮行為
罰則はいずれも1年以下の懲役または100万円以下の罰金、常習の場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
また、冒頭で紹介した事例のように、盗撮という不法の目的で施設に立ち入れば、刑法第130条の「建造物侵入罪」に問われることもあります。
建造物侵入罪の刑罰は、3年以下の懲役、または10万円以下の罰金です。
余罪が多数の場合に気になるのが「余罪も含めて発覚するとどのような刑罰を受けるのか?」という点でしょう。
たとえば、盗撮行為が10件ある場合、罰則は10倍になってしまうのでしょうか。
余罪が刑罰・量刑に与える影響を確認していきます。
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(1)余罪も起訴されると「併合罪」になる
まだ判決が確定していない2個以上の罪で起訴されると、各犯罪は「併合罪」の関係になります。
ここでいう「2個以上の罪」とは、罪名が異なる必要はありません。
たとえば、盗撮行為で迷惑防止条例違反に問われ、余罪が発覚してやはり迷惑防止条例違反にあたる場合も、2つの事件は併合罪の関係です。
併合罪になると、刑法第47条・48条2項の規定に従い、懲役は「もっとも重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたもの」に、罰金は「それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下」へと加重されます。
たとえば、盗撮行為の本件と余罪の両方が迷惑防止条例違反にあたる場合は、懲役は1.5倍の1年6か月に、罰金は100万円+100万円=200万円にそれぞれ加重され、加重された範囲で量刑が言い渡されることになります。
この考え方は、余罪が1件でも10件でも同じです。
10件の余罪がすべて盗撮行為で迷惑防止条例違反に問われたとしても、懲役や罰金が10倍になるわけではありません。 -
(2)量刑判断は重く傾きやすい
法律や条例が定める刑罰は、その犯罪によって科せられる刑罰の上限や下限です。
刑事裁判で言い渡される実際の刑罰を「量刑」といい、量刑はさまざまな事情を考慮して裁判官が言い渡します。
たとえば「1年以下の懲役」の場合は、1か月以上1年以下の範囲で適切と考えられる刑罰が科せられます。
余罪もあわせて起訴されて本件と余罪の両方が有罪となった場合は、刑罰の上限が加重されるため、本件のみの場合と比べると量刑が重くなりやすいのは当然です。
また、多数の事件を起こして起訴されているという事情を考えれば、裁判官が「より厳しく罰せられるべきだ」と判断することになるため、やはり量刑判断は重い方向へと傾きやすくなるでしょう。
3、余罪がある場合にやってはいけないこと
検挙された本件のほかにも余罪がある場合は、ここで挙げる行為をしないように注意してください。
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(1)余罪の発覚をおそれて証拠隠滅をする
盗撮をして警察官に取り押さえられたその場で、余罪の発覚をおそれてスマホの画像フォルダを全消去しようと操作したり、在宅事件になって自宅に帰されたのでパソコンに保存していた画像をすべて削除したりといった行為は「証拠隠滅」にあたります。
たとえスマホやパソコンから盗撮画像を削除しても、警察に端末を押収されてしまうと解析によって削除したはずの画像も復元されてしまうため、余罪の発覚は免れられません。
さらに、証拠を隠滅してしまうと「逃亡または証拠隠滅を図るおそれがある」と評価され、勾留期間が長引いたり、在宅事件から強制の身柄事件へと切り替えられたりする可能性が高まります。 -
(2)過去の盗撮はバレないと考えて完全否定する
余罪の盗撮画像を押収されているにもかかわらず、認めなければバレないと考えて「インターネットで拾ってきた画像だ」「一切身に覚えがない」などと完全否定するのは危険です。
画像が保存された日時の行動を追跡されて防犯カメラなどから盗撮行為が証明されたり、ほかの被害者からの申告から余罪が証明されたりすると、厳しい処分は避けられない事態になるでしょう。
どの点を認め、どの点を否認するのかは、最終的な処分を大きく左右する重大な判断です。
自身で判断するのではなく、弁護士に相談してアドバイスを受けることが刑罰の減軽において重要です。 -
(3)弁護士に相談せずにすべてを自白する
取り調べではできる限り真実をありのまま供述するべきです。しかし、ここで対応を誤れば、不当に重い罪になる可能性もあります。
取り調べでどこまで供述するかの判断は、最終的な処分結果を大きく左右します。
個人で判断するのは難しいため、弁護士に相談しながら対応を決めるのが得策です。
お問い合わせください。
4、盗撮で逮捕されたらすぐに弁護士に依頼すべき理由
盗撮の容疑をかけられてしまったら、次の理由から直ちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。
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(1)余罪も含めて警察への対応のアドバイスが得られる
違法になることは理解していても「バレなければ大丈夫」と盗撮に興じていたなら、警察に発覚して容疑をかけられている状態に大変な不安を感じるでしょう。
特に、逮捕された場合は勾留が決定するまでの72時間は家族・友人などとの面会が認められません。
しかし、逮捕直後の72時間のタイミングでも弁護士との「接見」は認められるため、相談だけでなく家族・職場などと連絡したいときの橋渡しも可能です。
また、弁護士に依頼すれば、逮捕後の流れや余罪がある場合の対応など、詳しいアドバイスが得られます。 -
(2)被害者との示談成立による解決が期待できる
盗撮事件を穏便に解決する最善策は、被害者との「示談」です。
被害者に対して真剣に謝罪したうえで、精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた賠償として示談金を支払うことで、被害届や刑事告訴の取り下げを請います。
示談はあくまでも「当事者間の話し合い」なので、刑事的な処分を軽減する法的な効力はありません。
ただし、被害届や刑事告訴の取り下げがあれば「被害者は犯人の処罰を望んでいない」という意思表示となるため、捜査機関が立件を取りやめる可能性が高まります。
結果として、早期釈放や不起訴といった加害者にとって有利な処分が期待できます。
しかし、盗撮などの性犯罪における示談交渉は簡単ではありません。
被害者の多くは、加害者に対して強い怒りや嫌悪を感じており、示談をもちかけても相手にしてもらえないケースも多いため、加害者本人やその関係者が直接交渉に臨むべきではありません。
さらには相手にしてもらえないだけでなく、示談を迫っていると、被害者が警察に「示談をするよう脅された」と申告する事態になってしまうおそれがあります。
被害者との示談交渉は、穏便な対応が期待できる弁護士に任せましょう。
5、まとめ
盗撮容疑で警察に検挙されると「余罪」も含めた捜査を受けます。
スマホやパソコンなどに証拠が残っている場合は、余罪もあわせて立件され、厳しい刑罰を科せられるかもしれません。
盗撮容疑をかけられてしまったとき、大切なのは「自分自身の考えだけで判断しないこと」です。
自白するのか、否認するのか、余罪に関する情報を素直に供述するべきなのかといった判断に迷っているなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 松山オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています