強制性交等罪(旧強姦罪)とは? 逮捕後の流れとすべき対応
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平成29年に性犯罪に関係する刑法の改正が110年ぶりに行われ、「強姦罪」は「強制性交等罪」と名称が改められ、法定刑や要件なども変更されました。この改正により、被害者が女性だけに限定されなくなり、全体的に罪がより厳しく、重いものになったといえます。今回は、ベリーベスト法律事務所・松山オフィスの弁護士が強制性交等罪の概要や逮捕後の流れ、逮捕された場合の対応を解説します。
1、強制性交等罪(旧強姦罪)という罪
はじめに、強制性交等罪の概要や有罪になった場合の法定刑について解説します。
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(1)どんなときに罪が問われるか
強制性交等罪は、暴行や脅迫などを用いて相手の同意なく性交渉を行った際に問われる罪です。当初は相手が同意していたものの行為が始まってから抵抗した場合に、力や言葉で無理やり関係に及んだ場合も、逮捕される可能性があります。強制性交等罪は、挿入を伴う性行為だけでなく、口や肛門を用いた行為も含まれますので、注意が必要です。
また、相手が13歳未満の場合は、相手が同意していたとしても、性交等が行われた時点で、強制性交等罪で逮捕される可能性があります。 -
(2)相手の性別を問わない
強制性交等罪では、被害者は女性だけでなく男性も含まれるようになりました。強姦罪が制定された当時よりも、性的マイノリティーの存在が広く知られるようになり、性犯罪の被害者が女性に限られなくなったためです。
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(3)起訴のために被害者の告訴は必要ない
強姦罪は、「親告罪」と言われ、被害者による告訴がなければ起訴することができませんでした。つまり、被害者が告訴しなければ犯人を起訴することはできませんでした。しかし、今回の法改正により強制性交等罪は「非親告罪」になったため、被害者が告訴しなくても逮捕される可能性があります。
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(4)法定刑
強制性交等罪で有罪になると、5年以上の有期懲役と定められています。有期懲役の上限は20年のため、最大20年の懲役刑に処される可能性があります。強姦罪時代の最短刑期は3年でしたので、法改正により厳罰化したといえます。
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(5)執行猶予はあり得るか
執行猶予は、「3年以下の懲役」の場合しか、適用することができないと規定されています。強制性交等罪の有期懲役は「5年以上」なので、執行猶予を付けられる上限を超えており、強制性交等罪では、執行猶予付き判決は望めないと考えられます。
しかし、強制性交等罪は、酌量減刑により刑が減軽される余地はあります。酌量減刑とは、犯罪の情状に酌量すべきものがある場合に減刑されるものです。酌量減刑により、3年以下の懲役になった場合は、執行猶予付き判決が下される可能性はゼロではありません。 -
(6)時効
強制性交等罪の公訴時効は10年と定められています。改正前の強姦罪も同じ期間です。期間は、犯罪行為が終わったときから進行します。
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(7)行為が未遂に終わった場合も罪になる
強制性交等罪には「未遂罪」が存在するため、行為を完遂できなくても罪に問われる可能性があります。しかし、未遂の場合は、減刑となったり、場合によっては免除になったりするケースもあります。
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(8)「準強制性交等罪」について
相手が、熟睡や泥酔、昏睡(こんすい)などの状態で性交等を行った場合は、「準強制性交等罪」に問われる可能性があります。準強制性交等罪で有罪になった場合は、強制性交等罪と同じく5年以上の有期懲役です。
準強制性交等罪も平成29年の刑法改正で「準強姦罪」から名称が変更されており、法定刑や要件なども強姦罪から強制性交等罪への改正と同様に変更されました。
2、強制性交等罪(旧強姦罪)での逮捕
これまで罪になる要件や法定刑について見てきましたが、今度は逮捕に関するポイントを解説します。
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(1)現行犯逮捕だけでなく後日逮捕も
強制性交等罪で逮捕される場合は、現行犯逮捕、もしくは後日逮捕(通常逮捕)です。現行犯逮捕とは、まさに犯行の最中に行われるもので、警察だけでなく通行人などの一般市民も逮捕する権利があります。
それに対して後日逮捕(通常逮捕)とは、警察による所定の捜査により罪を犯していることが確実であると判断されると、裁判所に逮捕状を請求し、逮捕状が発行されたら行われるものです。正式には通常逮捕といいます。罪を犯してからすぐに逮捕されなくても、時効期間の10年以内であれば逮捕される可能性があります。
強制性交等罪では、被害者の供述だけでなく、被害者の体や犯行現場に残された体液などから、DNA鑑定され、逮捕に至るケースが少なくありません。過去に強制性交等罪などの性犯罪やそのほかの犯罪で逮捕された経歴がある場合は、警察のデータベースに情報が残されているため、捜査から逮捕までの期間が短い傾向にあります。 -
(2)逮捕後から勾留まで
強制性交等罪で逮捕された場合、まずは警察署内の留置場で48時間身柄が拘束されます。その間は、家族や友人なども面会できず、外の世界から孤立した閉鎖空間で、警察による厳しい取り調べが行われます。
48時間以内に警察官は、検察に事件を引き継ぎ、検察官は24時間以内に「勾留」の必要性を判断します。勾留とは拘置所や留置場に身柄を拘束する処置のことで、勾留されると最大で20日間も拘置所等に止まらなければなりません。
勾留は、逃亡や証拠隠滅の危険性等があると判断された場合に下される処置です。検察官が勾留が必要と判断すると、裁判所に勾留請求を行い、裁判官も同様の判断を行うことで勾留が認められます。 -
(3)逮捕後の対応
強制性交等罪で逮捕された場合の対応を解説します。逮捕の影響を最小限に抑えるためには以下の対応が必要不可欠です。
●勾留されないようにする
逮捕後は72時間の身柄拘束ののち、勾留が決まれば20日間身柄が拘束されるため、逮捕から数えると最大23日間は家に帰ることができません。会社や学校を辞めざるを得なくなるなどの、大きな影響を与えてしまいますので、勾留を回避しなければなりません。
勾留を回避するためには逮捕後72時間以内に弁護士に依頼し、検察官や裁判官に勾留が必要ないことを主張する必要があります。弁護士が身元の確かさなどを主張することで、勾留を回避できる可能性が高まります。万が一、勾留が決定しても、「準抗告」という不服申立手続きを行うことができます。
●示談を進める
強制性交等罪は、非親告罪になったため被害者との示談が成立し告訴を取り消してもらえたとしても、起訴される可能性があります。しかし、示談が成立していることで、不起訴になる可能性は依然としてありますので、早急に被害者と示談を成立させることが重要です。
万が一起訴されても、示談がまとまっていることで執行猶予付き判決を目指すことも可能です。性犯罪の被害者は加害者と直接接触することを嫌がりますので、当事者同士の示談交渉は非常に困難ですが、弁護士が介入することで冷静に示談を進めることが可能になります。
●同意を主張する
強制性交等罪は、当事者同士の認識のずれで逮捕される可能性がある罪です。たとえば、恋愛関係にあってお互いに同意があったはずなのに、後日同意がなかったとして相手が警察に被害届を出すなどのケースです。
こういった場合は、「同意の有無」が重要になります。お互いに恋愛関係にあり、過去に何度も性的関係があったにもかかわらず10回目で突然「合意がなかった」と相手が主張すれば、その主張は整合性がないと判断され、強制性交等罪ではないと、検察や裁判所が判断する可能性もあります。
身に覚えのない強制性交等罪で逮捕された場合は、早期に弁護士に依頼し事実関係を調査してもらった上で、きちんと主張することが大切です。
3、まとめ
強制性交等罪で予期せず逮捕されてしまったら、今後の社会生活への影響を最小限に抑えるためにも早急に弁護士に依頼してください。身柄の拘束を避け、不起訴を目指すためには弁護士による勾留回避の働きかけや示談交渉が必須です。
すでに逮捕されている場合は、一刻も早く被害者と示談しなければ起訴される可能性が高まりますので、ひとりで抱え込まずベリーベスト法律事務所・松山オフィスの弁護士に相談してください。強制性交等罪をはじめ、刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士が、あなたの状況に応じて最適な対応を迅速にスタートいたします。
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