痴漢で犯行後日逮捕される可能性は? 逮捕までの期間などについて弁護士が解説

2019年09月06日
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痴漢で犯行後日逮捕される可能性は? 逮捕までの期間などについて弁護士が解説

愛媛県警松山東警察署では、「痴漢やわいせつ犯罪から身を守るために」として、女性を狙った痴漢行為に対する注意喚起をしています。

痴漢といえば、現行犯逮捕されるイメージがありますが、場合によっては犯行の後日逮捕されるケースもありえます。そこで、本コラムでは痴漢で犯行後日に逮捕されるケースやその後の流れについて、松山オフィスの弁護士が解説します。

1、なにをすれば痴漢になるのか

まずは、痴漢として逮捕される可能性がある行為を説明します。本項で解説した行為に心当たりがあるときは、犯行後日逮捕される可能性に備えておく必要があるかもしれません。

  1. (1)痴漢は迷惑防止条例違反もしくは強制わいせつ罪に該当する

    痴漢は迷惑防止条例違反もしくは強制わいせつ罪に該当する
    電車や路上などで他人の体を触る行為を痴漢と呼びますが、「痴漢罪」という罪は存在しません。痴漢はその行為の程度によって「迷惑行為防止条例違反」もしくは、刑法の「強制わいせつ罪」に問われる可能性があります。
    服の上から触る等の一般的な痴漢行為は、迷惑行為防止条例違反に該当します。さらに行為がエスカレートして、下着の中に手を入れる等の悪質な触り方をした場合は、強制わいせつ罪に該当する可能性があるでしょう。
    迷惑行為防止条例違反よりも、強制わいせつ罪のほうが量刑が重くなっています。

  2. (2)松山市の場合

    痴漢で逮捕された場合に、問われる可能性が高いのが「迷惑防止条例」です。迷惑防止条例は、都道府県ごとに定められており、名称や罰則等が異なります。松山市の場合は「愛媛県迷惑行為防止条例」と呼ばれています。犯行に及んだ地域によって、その地域の迷惑防止条例によって裁かれることになります。まずは、愛媛県迷惑行為防止条例の、痴漢に関する条文を確認してみましょう。

    「何人も、公共の場所にいる者又は公共の乗物に乗っている者に対し、その性的羞恥心を著しく害し、又はその者に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。」


    次に掲げる行為の一覧がこちらです。

    • 衣服その他の身に着ける物の上から、または直接身体に触れること。
    • 衣服などで覆われている下着または身体を見ること。
    • 下着などをのぞき込み、または鏡などを見える位置に差し出し、もしくは置くこと。
    • 衣服で覆われている下着などの映像を記録する目的で、写真機その他撮影する機能を有する機器を置き、またはむけること。
    • 上記行動のほか、卑わいな言動をすること。

    衣服の上等から体を触ることだけでなく、下着や身体を見ること、撮影すること、などを禁じるだけでなく卑わいな「言動」を禁じています。したがって、行動だけでなく言葉で辱める行為も迷惑防止条例違反となりえます。

    愛媛県内でこれらの行為で逮捕されて有罪になった場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。常習的とみなされれば、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金です。

    迷惑行為防止条例違反ではなく、強制わいせつ罪の場合は6ヶ月以上10年以下の懲役となり、非常に重い量刑になります。

2、逮捕には現行犯逮捕と後日逮捕される場合がある

痴漢の逮捕は、現行犯逮捕と後日に逮捕2パターンがあります。痴漢の最中に取り押さえられて逮捕されるものを現行犯逮捕と言います。冒頭で挙げた事例のように、痴漢行為を働いてからしばらくして逮捕されるものを後日逮捕です。痴漢の逮捕は現行犯逮捕がほとんどと言われていますが、実際に後日逮捕されるケースもありますので注意が必要です。

現行犯逮捕は、警察だけでなく駅員や乗客などの一般人でも可能です。ただし、犯罪がいままさに行われているときか、犯行直後に限ります。痴漢の最中、窃盗で逃亡している最中などに犯人を取り押さえると現行犯逮捕です。

それに対して、後日逮捕は、警察などの捜査機関にしか認められていない逮捕です。後日逮捕とは、法的な言い回しではなく、あくまで俗語です。 犯罪の証拠を集め、罪を犯したことが確かであると判断した場合に、裁判所に逮捕状を請求して、逮捕状が発行されたら、逮捕に踏み切ります。現行犯逮捕とは異なり、所定の手続きを行わなければならないので、時間がかかります。犯行から1ヶ月程度で逮捕されることもありますが、長ければ冒頭の事例にように1年近く時間が経過してから逮捕されることもあるのです。

3、痴漢で後日に逮捕される場合の流れ

次に、痴漢で後日逮捕される場合の手続きの流れを解説します。

  1. (1)警察が逮捕状を裁判所に請求

    警察は、自分の判断で逮捕することはできず、所定の手続きを踏んで裁判所に逮捕状を請求し、発行されなければ後日逮捕はできません。実は、逮捕が認められるためには、複数の条件を満たしている必要があり、いくら犯罪者といえども簡単に身柄を拘束される訳ではないのです。
    痴漢をしたことが明らかなのに、否認している場合や住所が定かではない場合など、逃亡や証拠隠滅の可能性があるケースのみ、逮捕が認められます。

  2. (2)いつ警察がやってきて逮捕されるのか

    犯行から後日逮捕までの期間は事件によってさまざまで、一概にはいえません。冒頭の事例では1年ほどかかりましたが、犯行の証拠が防犯カメラなどで容易に確認でき、個人が特定できれば1ヶ月程度で逮捕される可能性もあります。

  3. (3)逮捕から勾留、起訴へ

    痴漢で逮捕されると、警察で48時間取り調べが行われます。その後、釈放されることもありますがさらなる取り調べが必要と判断されると、検察官に事件が引き継がれさらに24時間身柄が拘束されて取り調べが続きます。
    この間は、家族や知人は面会することはできません。
    検察官は24時間の間に、取り調べだけでなく勾留の必要性を判断します。勾留とは、拘置所や留置場などに身柄を拘束する措置のことです。勾留されると原則10日間、最大20日間身柄の拘束が続きます。
    勾留が不要と判断されると、身柄は釈放され在宅事件として捜査や取り調べが続きます。勾留された場合は勾留期間が終了するまで、在宅事件の場合は捜査が完了した時点で、「起訴するかどうか」が判断されます。

    起訴されると刑事裁判が開かれて、量刑などが決められます。起訴の時点でも勾留が続いている場合は、保釈請求をして認められれば一時的に身柄が解放されます。保釈請求をしない、もしくは認められないと刑事裁判が終了するまで身柄の拘束が続いてしまいます。

4、痴漢のリスクとそれを避けるためにできること

次に、痴漢で逮捕された場合に想定できるリスクと回避法を解説します。

  1. (1)罰則以外のリスクがかなり大きい

    痴漢で後日逮捕されるリスクは、「身柄の拘束」によるさまざまな悪影響です。もちろん、起訴された場合は、罰金を支払う、懲役刑を受けるなどのリスクもありますが、その前に誰しもが直面するのが長期にわたる身柄拘束の影響です。
    先ほどお話ししたように、逮捕されると逮捕後は72時間、その後勾留されると20日、さらに起訴されれば数ヶ月にわたって身柄拘束が続きます。

    最初の3日間だけであれば、体調不良などで乗り切れますが、さらに身柄拘束が続くと会社や学校に、痴漢の逮捕が露見するリスクが非常に高くなります。
    痴漢で逮捕されたことが知られてしまうと、退職や退学を余儀なくされる危険性があります。また親戚関係や友人関係にも悪影響を与えるでしょう。

    もちろん、痴漢で起訴されてしまい有罪判決を受けた、略式起訴されて罰金を支払ったなどの処分を受けると「前科」がついてしまいますので、今後の就職や結婚などにも大きな影響が生じてしまうこともあるでしょう。

  2. (2)弁護士に依頼して被害者と示談

    上記のリスクを軽減するためには、早急に弁護士に依頼して被害者と示談を進めること、そして勾留回避のための弁護活動を行う必要があります。痴漢の場合、被害者と示談を成立させることで、起訴を回避できる可能性が高まります。示談を成立させることで、身柄拘束も早期に解かれるケースが少なくありません。
    また逮捕後72時間に弁護士に依頼することで、勾留を回避するための弁護活動も行ってもらえます。
    身柄さえ拘束されなければ、痴漢で逮捕された影響を最小限に抑えられますので、逮捕されたらなるべく早く弁護士を探しましょう。

  3. (3)後日逮捕される可能性がある場合は早めに弁護士に相談を

    逮捕されてから72時間が非常に大切とお話ししましたが、まだ逮捕されていない場合は、さらに時間的に猶予があります。後日逮捕はいつ、行われるかわからない反面、逮捕までには時間がありますので、弁護士に早期に相談することで、逮捕を避けられる可能性もあります。逮捕とは、証拠隠滅や逃亡などを避けるために行われるものなので、逮捕前に罪を申告すれば、「身元がしっかりしているから」と、逮捕されずに捜査が行われる可能性があるのです。
    また、捜査機関が痴漢行為を把握する前に、罪を申告する「自首」を行えば、罪が軽減される可能性が高まります。さらに、被害者が特定されていれば、先に示談を済ませることで事件化されずに済む可能性が出てきます。
    このように、逮捕される前に弁護士に相談することで、万が一の逮捕に備えてさまざまな対策をとることができますので、早めに相談することを強くおすすめします。

5、まとめ

痴漢は、犯行現場で身柄の拘束を受ける現行犯逮捕だけでなく、犯行後に逮捕される可能性もある犯罪です。したがって、現行犯逮捕されなかったからといって逮捕されないわけではありません。捜査が行われ、容疑が固まり次第逮捕される可能性があります。

心当たりがあり、反省しているのであれば、逮捕される前に弁護士に相談してください。ベリーベスト法律事務所 松山オフィスでも、アドバイスを行います。状況によっては、自首や任意聴取に同行することも可能です。ひとりで抱え込まず、ご連絡ください。過剰に重い罪に問われないよう、適切な弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています