家族がストーカー規制法違反で逮捕!? 逮捕後はどうなるのかを解説
- 性・風俗事件
平成30年1月、松山東署はストーカー規制法違反の疑いで男を逮捕しました。男は禁止命令に反してストーカー行為をしたと報告がされています。
アイドルに向けたストーカー行為については大々的に報道されますが、一般の方を対象にストーカー行為をしても、冒頭の事案のように逮捕される可能性があります。ストーカーという用語だけは知っていても、ストーカー規制法という法律の詳細は知らないという方のほうがほとんどでしょう。ストーカー規制法によって規制される行為を知らなければ、突然、警察から連絡が来たとしたら、驚きと不安、あるいは憤りを感じる方もいるでしょう。
この記事では、ストーカー行為で警察へ通報されてお困りの方を対象に、ストーカー行為とは何か、逮捕されたらどうなるのかについて、松山オフィスの弁護士が解説します。
1、ストーカー規制法とは
ストーカー規制法違反で逮捕されるかもしれないと不安に感じている場合は、まずはどのような法律なのかを把握しておく必要があります。
ストーカー規制法とはあくまで通称で、正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。ストーカー規制法が成立したのは平成12年で、成立してからそれほどの年月は経過していません。それ以前はストーカー被害にあっている人が警察に訴えても、警察は積極的に捜査・検挙しようとしないこともあったようです。警察は明白な刑事法違反があれば捜査に乗り出しますが、当時はストーカー行為を規制する法律がなかったため動けなかったといわれています。
ところが、平成11年に発生した桶川ストーカー殺人事件は社会的に大きな衝撃を与え、警察の対応に問題があるという認識が広まりました。その結果、ストーカー行為を規制する法律が成立することになったという経緯があります。
このストーカー規制法は時代と被害態様の多様化を踏まえ、平成28年にはさらに改正されました。改正後は、ストーカー行為の手助けとなる行為を禁止するほか、インターネットやSNSを利用した行為など規制対象を拡大するととともに、罰則が強化されました。
2、ストーカー規制法違反となる行為
ストーカー規制法違反の成立要件をわかりやすく説明すると、特定の個人に対して「つきまとい等」を「反復して行うこと」です。また、ストーカー規制法第2条第3項で「つきまとい等に該当する行為を反復して繰り返すこと」を「ストーカー行為」と定義しています。
ここで登場する「つきまとい等」は、ストーカー規制法第2条1項で定義されています。
まず、加害者が抱いている感情を充足する目的が前提となります。具体的には、特定の者に対する恋愛感情や好意、怨恨(えんこん)の感情などを満足させるために「つきまとい等」に該当する行為とされています。なお、行為は特定の個人に対して行う場合に限定されていません。その配偶者や親族、家族などに対して行った場合も「つきまとい等」とみなされます。
具体的には、以下のような行為がストーカー規制法における「つきまとい等」に該当すると考えられます。
①つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつき
- 被害者を尾行する
- 被害者の家や仕事先、学校などの周辺をうろつく、待ち伏せする
- 被害者の家や仕事先、学校などに押しかける
②被害者を監視していると告げる
- 被害者のことを監視しているとほのめかす
- 被害者の行動や服装を知っていることを告げる
- 被害者が帰宅したタイミングに電話などで連絡する
- 被害者のことを監視しているとメールやSNSのメッセージで伝える
③面会、交際など、義務のないことを迫る
- 被害者が嫌がるのに、面会や交際などを迫る
- プレゼントの受け取りを強要する
④著しく粗野または乱暴な言動
- 「バカ」など被害者を罵倒する言葉を浴びせる
- 被害者の家の前で、車のクラクションを鳴らしたり大声を出したりする
⑤無言電話をしたり、連続で電話したりする
- 電話をかけても何も話さず被害者に不安感を与える
- 被害者に繰り返しファクシミリで文書を送信する
- 被害者へメールなどを大量に送りつける
⑥汚物や動物の死骸などを被害者へ送りつける
- 被害者の家や仕事先へ汚物や動物の死骸を送り、不快感や嫌悪感を与える
⑦被害者の名誉を傷つける行為
- 被害者を中傷する内容の文書を送りつけたり、その文書が広く人に見られる状態にしたりする
- インターネットの掲示板やブログのコメント欄に被害者を中傷する書き込みをする
⑧性的しゅう恥心を害する行為
- 電話でわいせつな言葉を発する
- 被害者が性的に恥ずかしいと感じる文書や画像をメールなどで送りつける
3、ストーカー規制法に違反した場合の罰則
ストーカー規制法に違反した場合の罰則は、加害者がどのようなことをしたかによって、以下のように規定されています。
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(1)ストーカー行為をしたケース
ストーカー規制法が公布された当初は、被害者が告訴しなければ公訴提起(裁判)されることはありませんでした。ところが、平成29年の法改正によって、被害者が告訴しなくても公訴提起ができるようになっています。したがって、たとえ被害者が告訴していなくても被害者からの相談を受けた捜査機関が「ストーカー行為をした」とみなせば、公訴提起する可能性があるということです。
なお、改正後は、ストーカー行為によって有罪になれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになります。 -
(2)禁止命令に従わずストーカー行為をしたケース
もちろん、ストーカーの被害者が警察に相談しても、すぐに逮捕されるとは限りません。
警察は被害者の話を聞いてからストーカー事件に該当するのかを判断しますが、緊急性がなく、被害者が処罰を求めない場合は、加害者に注意したり警告を出したりするケースが多いものです。警告とは簡単にいえば「つきまとい行為をやめなさい」という注意です。警告は警察署長が文書の形で出すことが一般的です。
ただし、警告を出しても従わない場合は、さらに強力な手段として「ストーカー行為を反復してはならない」という禁止命令が公安委員会から出されます。この禁止命令に従わないでストーカー行為を繰り返した結果、有罪になれば、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処されます。
警告を受けたり禁止命令が出されたりした場合は、たとえあなたにとってどのような理由があっても、無視しないですぐにストーカー行為をやめるのが賢明です。警告を無視してつきまとい行為を繰り返すと逮捕されるリスクが高まります。
もし、貸していたお金を返してほしいなど正当な理由があるときは、弁護士など第三者を通して連絡を取ったほうがよいでしょう。 -
(3)禁止命令に従わなかったケース
禁止命令ではストーカー行為を禁じるのですが、ストーカー行為ではなく、それに付随する行為を禁止するケースもあります。たとえば、被害者を中傷する内容のブログをインターネットで配信して禁止命令を受けた場合などです。
禁止命令が出されてからストーカー行為はやめたものの、ストーカー行為に該当したブログの削除命令には従わなかったというケースもあるでしょう。
禁止命令に従わず、有罪になった場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金で処罰されます。
ストーカー行為をやめても、ストーカー行為に付随する禁止事項に従わないと処罰されることがあるので注意しましょう。
4、ストーカー規制法違反で逮捕されるとどうなる?
ストーカー規制法違反の容疑で逮捕されると、被疑者として警察署で取り調べを受けることになるでしょう。警察は最長で48時間までの留置期間に取り調べを行い、検察庁に送致するかどうか判断します。送致されなければ釈放されますが、必ずしも無罪放免となったわけではありません。釈放されても事件のみ検察に送致されることもあり、その場合は在宅事件扱いとして取り調べを受けることになります。
被疑者の身柄が検察へ送致されると、検察は24時間以内に、引き続き被疑者の身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が必要かどうかを判断します。検察が裁判所へ勾留請求を行い、裁判所が許可すると、原則10日間、最長で20日間も帰宅できません。
検察は、勾留期間中か在宅事件扱いのときは取り調べが終えた時点で、起訴するかどうかを判断します。検察官が起訴すると、刑事事件として裁判が行われます。
現在の司法制度では、起訴されると99%が有罪となるといわれています。たとえ罰金刑であっても前科がついてしまうことに変わりがありません。ストーカー規制法違反によって前科がつかないようにするためには、まずは警告を受けた時点で該当行為をやめること、弁護士に相談してアドバイスを受けること、弁護士を通じて被害者との示談を成立させることが重要となります。
ひとりで対処しようとすることは非常に難しいものです。まずは刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士へ状況について相談することをおすすめします。
5、まとめ
逮捕されてしまうと仕事や学校に行けなくなり、日常生活に大きな影響が出ます。ストーカー規制法違反で逮捕されるかもしれないという不安がある方は、逮捕・起訴を回避するために、少しでも早く弁護士に相談しましょう。
ストーカー規制法違反の容疑で逮捕されるかもしれないとお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所・松山オフィスまでご相談ください。松山オフィスの弁護士が逮捕や起訴の回避に向けて全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています