横領罪とは? 定義や罰則、示談について弁護士が解説

2019年10月28日
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横領罪とは? 定義や罰則、示談について弁護士が解説

平成31年1月、愛媛県内の証券会社の元役員が、勤務先から約380万円の現金を横領したとして、業務上横領の疑いで逮捕されたという報道がありました。意図的に横領した場合はもちろんのこと、知らずに行なっていた行為が横領に該当し、逮捕される可能性もあります。 そこで、ベリーベスト法律事務所・松山オフィスの弁護士が横領の概要や、会社との示談などについて、丁寧に解説いたします。

1、横領罪の解説

横領罪は、業務や業務外で他人のものを預かっている、管理している際に、自分のものにしてしまった場合に問われる可能性がある罪です。横領罪は、横領した状況などによって3種類に分類されますので、それぞれの概要と法定刑について解説いたします。また、横領罪ではありませんが、状況によっては問われる「背任罪」についても説明します。

  1. (1)横領罪の種類

    ●単純横領罪
    単純横領罪は、自分が管理を任されている他人のものを横領した際に問われる可能性があります。「借りていた本を無断で売却した」、「預かっていた現金を使った」などのケースは単純横領罪に該当すると考えられます。

    単純横領罪で有罪になったら5年以下の懲役に処されると規定されています。

    ●業務上横領罪
    業務上横領罪は、「業務上管理、占有していた他人のものを横領した時」に問われる可能性がある罪です。仕事で管理していた会社や顧客の資産を横領すると、業務上横領に該当します。業務上横領罪で有罪になると、10年以下の懲役に処すると規定されています。

    ●遺失物等横領罪
    遺失物等横領罪とは、他人が落としたもの、忘れたものを横領した際に適用される可能性のある罪です。代表的なのが、落ちている財布やスマートフォンを拾って自分のものにするなどのケースです。
    遺失物等横領罪で有罪になると、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金もしくは科料に処されると規定されています。

    ●背任罪
    会社のお金を使ってしまった場合、状況によっては、「背任罪」に問われる可能性があります。背任罪とは、他人のために事務を行う方が、自分や第三者の利益を図ったり、本人に損害を与えるために、指示に従わず、本人に損害を与えた場合に問われる罪です。背任罪で有罪になると、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されると規定されています。

  2. (2)横領と窃盗の違い

    横領と窃盗は明確に区別されています。 単純横領も業務上横領も、「管理などを任されていた他人のものを盗んだ場合」に適用される罪です。

    それに対して、窃盗罪は他人が管理・保管しているものを盗んだ時に適用されます。つまり、「他人のもの」の管理状態によって、窃盗なのか、横領なのかが判断されるのです。

    ちなみに、遺失物等横領と窃盗罪の差は「所有者等に占有が認められるかどうか」です。落し物を盗んだらすべてが遺失物等横領罪に問われるわけではなく、所有者が落としたことに気づいた時間や、落し物との距離などによって、遺失物等横領ではなく、窃盗に問われる可能性もあります。

    窃盗罪で有罪になると、最大10年以下の懲役と規定されており、横領よりも重罪になってしまう可能性もあります。

2、横領罪に関する示談

横領罪で逮捕された場合は、横領した金額が大きいと初犯でも実刑判決が下される可能性があります。しかし、事件が公になる前に示談ができれば、会社が被害届を出さずに事件化されない可能性があります。そのため、横領を行いそれが会社に発覚した場合は、事件化する前に、早急に示談を成立させることが重要です。ここでは、横領してしまった際の示談交渉について説明いたします。

  1. (1)横領の場合は示談を行いやすい

    性犯罪や傷害事件などは、被害者感情が悪化していることが多く、示談交渉が困難になるケースが少なくありません。しかし、横領の被害者は、横領された金銭の返還を求めていること、被害者が法人の場合は社会的信用低下を避けるため、横領された事実を公表したくないなどの思惑が働くことがあるため、示談交渉は比較的スムーズに進みます。

    被害者が個人でも会社でも、横領された資産が返還されるのであれば警察に被害届を出さずに穏便に済ませようとする傾向にありますので、早期に連絡を取り示談を進めることが重要です。

  2. (2)示談のために支払う金額について

    横領の被害者と示談をするために必ず必要なのは、横領した資産を全額返還することです。さらに、慰謝料をプラスして支払うことで示談交渉がスムーズに進む可能性もあります。しかし、横領をしてしまった方の多くは、何らかの事情で金銭に困り横領を行なっているため、手元に返済できるお金が残っていないことがほとんどです。

    その場合に重要なのは、「今できる限りのお金を集めること」です。処分できる財産は処分し、家族や金融機関などからお金を借りるなど、「精一杯お金を集めていること」がわかる状況にするとよいでしょう。それでも、横領した金額に満たない場合は分割払いも検討しましょう。

    分割払いの場合は、一括返済と比較すると被害者の理解が得がたく示談が困難になる可能性がありますので、お金が用意できないときは悩まずに速やかに弁護士に依頼して、対処してもらいましょう。被害者も弁護士による示談交渉であれば、前向きに応じる可能性が高くなります。

3、示談ができずに逮捕された場合の流れ

横領は会社が被害届を出さなければ、公になることがなく警察に逮捕される可能性は低い傾向にあります。横領した資産を返還し、示談が成立し、被害届が提出されなければ、前科がつくことはないでしょう。しかし、返還できない、示談が決裂したなどの場合や、横領金額が大きく事件化してしまった場合は、警察による捜査が行われ逮捕される可能性があります。ここでは横領で逮捕された場合の流れと、対応を解説いたします。

  1. (1)逮捕後は最大23日間の身柄拘束

    横領で逮捕された場合、逮捕後の48時間は警察署内の留置場に身柄が拘束されます。その後、検察に事件が引き継がれて検察官が取り調べを行い「勾留」が必要かどうかを判断し、必要と判断した場合は、裁判官に対して勾留請求をします。裁判官によって勾留が必要と判断されれば拘置所や留置場などに最大20日間身柄が拘束されてしまい、日常生活に大きな影響が出ます。

  2. (2)勾留を回避するために

    勾留による身柄の拘束を避けるためには、検察官や裁判官に対して勾留が必要ないことを弁護士が主張することが大切です。勾留は、被疑者の逃亡や証拠隠滅の恐れなどがある場合に行われる処置なので、身元がしっかりしていること、証拠隠滅の恐れがないことなどが認められれば、勾留を回避できる可能性が高まります。そのためには、逮捕されてからなるべく早い段階で弁護士に依頼する必要があります。

    勾留が回避できれば、「在宅事件」として取り扱われますので、身柄は拘束されることなく自宅に帰ることができます。

  3. (3)不起訴になるための弁護活動

    最大20日間の勾留期間中に、検察官は「起訴・不起訴」を判断します。起訴すると判断した場合は、刑事裁判が開かれます。不起訴処分になれば前科がつくことなく身柄は解放されます。

    日本の刑事裁判の有罪率は、99.9%なので起訴されると有罪になる可能性が高いでしょう。横領罪で有罪にならないためには、不起訴処分となることが必要です。不起訴になるためには、被害者との示談が成立していることが重要なので、弁護士による示談交渉を進めましょう。

4、まとめ

横領をしてしまった場合、横領罪で逮捕された場合は、一刻も早く被害者との示談を成立させることが重要です。示談が成立すれば、警察に告訴等されることなく、事件が公にならない可能性があります。

逮捕された場合も示談が成立すれば不起訴処分になりやすいので、横領してしまい悩んでいる方は、一人で抱え込まず弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することで、状況に応じて最適な対応をとり、横領の影響を最小限に食い止めることが可能です。

まずはベリーベスト法律事務所・松山オフィスまでご相談ください。横領罪をはじめ刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士が適切な弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています