松山市の路上で置引したらどうなる? 窃盗罪の処分や示談について

2018年10月24日
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松山市の路上で置引したらどうなる? 窃盗罪の処分や示談について

愛媛県警察のサイトで日々更新されている「事件事故速報」を見ると、松山市内でも窃盗事件が起きていて、逮捕・起訴されていることがわかります。同じく愛媛県警察が発表している平成29年度の犯罪概況によると、窃盗の認知件数は減少している一方で検挙率は上昇しています。つまり、窃盗事件の被疑者となった場合、現行犯逮捕されなくとも処分を受ける可能性があることをご理解いただけるでしょう。

もし、あなたやあなたの家族が、つい、人のものを盗んでしまったら……。いったい、どのような処分を下されることになるのかご存じでしょうか。今回は、もっとも身近な犯罪ともいわれている「窃盗罪」の概要、逮捕後の流れや起訴処分を免れるための示談交渉の重要性について、松山オフィスの弁護士が解説します。

1、窃盗罪の種類と概要

窃盗罪は、それだけであれば人にケガや危害を加えるような犯罪ではありません。また、検挙率がさほど高くないことや、その手口ごとに「万引き」など別の言葉で表されることもあることから、さほど重罪には感じない方もいるかもしれません。

しかし、窃盗罪は、刑法上で定められた犯罪で、しっかりと量刑が定められており、起訴されれば前科がつく可能性が十分に考えられる犯罪です。

  1. (1)窃盗罪とは?

    窃盗は刑法第235条に規定されている犯罪で、刑法犯の7割を占めるともいわれています。窃盗罪は「他人が所有するものを許可なく占有する」と成立する犯罪です。前述のとおり、身近なゆえに手口が多様であるのに加えて、再犯が多いことがわかっている点も特徴です。

    具体的には、以下のような手口です。

    • 店舗などから商品を盗む「万引き」
    • 自転車のカゴからカバンなどを盗む「置引」
    • 身につけている衣類やカバンから財布などを盗む「スリ」
    • 駐車場の車から荷物を盗む「車上荒らし」
    • 他人の自宅などに侵入して金銭を盗む「空き巣」
    • 駐車している自転車を盗む「自転車盗」
    • 走行中の自転車やオートバイの前カゴの荷物を盗む「ひったくり」
  2. (2)窃盗罪の逮捕要件と後日逮捕の可能性は?

    窃盗罪は、犯行現場において「現行犯逮捕」されることが多いともいわれている犯罪です。店舗の店員や警備員などに取り押さえられ、警察に引き渡される可能性が高い「万引き」などが代表的な例でしょう。

    しかし、犯行後日に裁判所の逮捕令状が発行され、「通常逮捕」される例もあります。なお、裁判所が逮捕令状を出すためには、以下の要件を満たす必要があります。

    • 窃盗をはたらいた被疑者である可能性を裏付ける一定の証拠
    • 証拠を隠滅する、もしくは逃亡の危険性があること


    確たる証拠を残した記憶がなくとも、被害者の被害届が提出されていれば、犯行後日に逮捕される可能性は高まります。また、通行人の目撃情報や、防犯カメラの映像などがあれば、より逮捕令状も出やすくなるでしょう。

    被害届以外に窃盗容疑で逮捕される際に用いられる具体的な証拠があれば、窃盗罪として犯行後日に逮捕される確率が高まります。

    <窃盗の証拠となるもの>
    • 防犯カメラなどの映像
    • 供述調書(被害者、目撃者など)
    • 近接所持(事件発生以降に事件発生から近い場所で窃盗されたものを所持していること)
    • 窃盗の被害現場もしくは遺留品、放置された被害品から検出された指紋、DNAなど


    なお、「逮捕」は,法律上、個人への身柄拘束を特別に認めるものになります。そのため、被害届の提出があり、証拠がそろっている場合でも、まずは容疑の疑いがある「被疑者」に対して、任意同行や任意出頭を求め、事情聴取するケースは少なくありません。ここで、証拠があるにもかかわらず容疑を否認したり、逃亡を図ったり、証拠隠滅をする可能性があるとみなされると、逮捕される可能性が高くなります。

  3. (3)窃盗罪における逮捕後の流れ

    窃盗の疑いで逮捕されてしまったあとは、刑事訴訟法に定められた手順にのっとり、刑事手続きが行われることになります。

    • 逮捕~警察による取り調べ(最長48時間)
    • 送致~検察庁による取り調べ(最長24時間)


    被害者との示談が成立していて「罪を問うつもりがない」と明言しているときや、初犯で被害が非常に軽微であったケースなど、警察が「検察に送るまでもない」と判断した事件は、微罪処分として釈放されることもあります。そのときは、起訴されることもありませんし、前科もつきません。

    ただし、一般的には、逮捕から送致を含めた72時間がひとつの区切りとなります。事件や身柄が警察から検察に送致されたあと、検察によって「身柄を拘束したままの取り調べを行う時間が必要」と判断されれば、裁判所に対して「勾留請求」が行われます。勾留が認められれば、起訴か不起訴が決まるまでの最長20日ものあいだ、身柄が拘束されたままとなります。

    つまり、最初の3日間に加えて最長20日間、身柄が拘束される可能性があるということです。さらに、起訴されて公判を請求されたときは、保釈手続きが認められない限り、刑事裁判が終わるまで帰宅できなくなると考えてよいでしょう。

    ただし、窃盗罪の場合は、最初の3日間の時点で略式手続きが選択され、書類送検で終わるケースもあります。捜査に協力的であり、逃亡の危険がないとみなされれば、勾留は不要とみなされ、在宅事件扱いとして身柄は解放されることもあるでしょう。この場合は、逮捕当日や遅くとも最初の72時間のあいだに身柄は釈放されます。

    一方、勾留期間中、もしくは在宅事件扱いのときは捜査が終わったタイミングで、検察は起訴するかどうかを決定します。起訴は十分な証拠をもって執行されるため、有罪になる可能性は高く、有罪判決が下ると前科がついてしまいます。

2、窃盗罪の法律上の処分と時効

万引きをはじめとする窃盗事件を起こして有罪となってしまったら、あなたはどのような処分を下されることになるのかご存じでしょうか。

窃盗事件の「被疑者」として取り調べを受けると、まずは「被疑者として捜査された」という「前歴」が残ります。示談が成立したなどの理由で「微罪処分」や「不起訴処分」にとどまれば、「前科」はつきません。しかし、前歴は残っているため、再び窃盗の被疑者となったときは、厳しい処分が下される可能性があると考えておきましょう。

次に、「起訴」されて有罪となれば、刑法で定められた範囲の処罰を受けるとともに「前科」がつきます。科される量刑は、以下のとおりです。

  • 10年以下の懲役(ちょうえき)刑
  • 50万円以下の罰金(ばっきん)刑


実際の犯行内容や反省の度合いなどによって、どれぐらいの処罰を受けるのかが変わります。初犯であれば、略式裁判を経て罰金刑のみで終わるケースもあるでしょう。ただし、すべての事例が不起訴になるとは限りません。自己判断は避け、不起訴を目指すためにも弁護士に依頼することをおすすめします。

なお、「前科」がついてしまうと、特定の業種への就職や資格取得ができなくなるケースがあります。海外旅行の際も、行き先によっては入国拒否される可能性もあることを覚えておく必要があります。

「前科」の経歴を残さないためにも、逮捕されたとしても起訴されないことがもっとも重要なポイントとなります。万が一逮捕されたときは、まずは不起訴を目指し、次に、少しでも早く釈放されることを目指す必要があるでしょう。身柄を拘束されているあいだは、仕事や学校へ行くこともできなくなります。その期間が長期化すればするほど、その影響は計り知れないはずです。

早期釈放と不起訴の獲得を目指すのであれば、まずは被害者との示談交渉を行う必要があります。万が一、起訴されて懲役刑が決定してしまっても、示談が成立していれば、執行猶予となり刑務所に収監されずに済む可能性が高まります。

3、示談交渉の重要性

示談を成立させるためには、被害者が納得できる謝罪と賠償が必要となります。示談書を作成する際は、十分な謝罪と賠償の引き換えに被害者から「罪を問わない」などの「宥恕(ゆうじょ)文言」を入れてもらうことになります。当然のことですが、被害者は窃盗によって日常へ大きな影響を及ぼしています。なによりも、誠意ある対応をとるべきでしょう。

示談は、被疑者本人やその家族が持ちかけることもできます。しかし、多くのケースで、被害者感情を逆なでしてしまう可能性があります。また、逮捕されてしまえば、被疑者本人は勾留が決まるまでの72時間のあいだ、自由に動けないどころか、家族とも連絡がとれなくなります。

しかし、逮捕から勾留が決まるまでのあいだでも、弁護士であれば接見ができます。依頼を受けた弁護士は、接見して被疑者の状況を確認しつつ、過去の経験を生かした示談交渉を行うことで、示談が成立する可能性が高まります。

逮捕される前に示談が成立すれば、逮捕を避けることができる可能性があります。たとえ逮捕されてしまったとしても、初期段階で示談交渉を進めれば身柄の拘束時間も短くなり、起訴処分を避けることができるでしょう。

もしあなたやあなたの家族が窃盗罪を起こしてしまった場合は、そのまま放置せずに弁護士などに相談し、適切なサポートを受けることを強くおすすめします。

4、まとめ

たとえば、自転車のカゴから置引をしてしまったとき、どうせ発覚しないだろうという気持ちと、発覚したらどうしようという気持ちが交錯しているかもしれません。しかし、前述のとおり、防犯カメラの映像が鮮明化したことなどから、被疑者として検挙される可能性は年々高くなっています。

窃盗は有罪判決を受ければ、50万円以下の罰金もしくは10年の以下の懲役刑に処されることになります。前科や前歴が残るのは人生においてマイナスでしかありません。安易に考えるべきことではないでしょう。

窃盗容疑で逮捕されてしまう可能性に不安を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所・松山オフィスまでご連絡ください。刑事事件に対応した経験が豊富な松山オフィスの弁護士が日常への影響を最小限に抑えるために力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています