迷惑防止条例違反に該当する行為は? 逮捕された場合の対応

2022年12月26日
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迷惑防止条例違反に該当する行為は? 逮捕された場合の対応

盗撮や痴漢といった迷惑行為は、都道府県が定める通称「迷惑防止条例」の違反になります。

この条例にはさまざまな迷惑行為に対する罰則が設けられており、違反行為があると逮捕されることもあるので注意が必要です。

本コラムでは「迷惑防止条例」について、違反となる行為の内容や逮捕されてしまったあとの流れ、逮捕や厳しい刑罰を避けたいときに取るべき対応などをベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。

1、「迷惑防止条例」とはどんな条例なのか?

まずは「迷惑防止条例」がどんなものなのかを確認していきましょう。

  1. (1)迷惑防止条例とは?

    迷惑防止条例とは、各都道府県をはじめ一部の市町村が独自に定める条例のひとつです。

    東京都の迷惑防止条例をモデルに全国で制定されたことから、規制される行為や内容、罰則はほぼ同じです。ただし、自治体によって若干の差があるため「A県では違反になるが、B県では規制対象外」「A県よりもB県のほうが厳しく処罰される」といった事態が起き得るという特徴があります。

  2. (2)全国で迷惑防止条例が定められている理由

    迷惑防止条例は、昭和37年の東京都による制定を皮切りに全国へと広がりました。

    当時の日本は、全国的に「ぐれん隊(愚連隊)」と呼ばれる不良集団による暴力行為や迷惑行為が大きな社会問題になっていましたが、刑法などで定められている具体的な罪を犯さない限り警察も対処できません。
    そこでぐれん隊による粗暴行為への規制を目的として、全国で迷惑防止条例が制定されたという事情があります。

    以後、時代の流れに応じてさまざまな迷惑行為が規制対象に追加され、現在のかたちになりました。
    愛媛県が「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」を制定したのは昭和38年10月で、その後「愛媛県迷惑行為防止条例」に改称し、令和2年には6回目の改正が加えられています。

2、迷惑防止条例で規制される行為と罰則

迷惑防止条例で規制される行為と罰則について、愛媛県迷惑行為防止条例を参考に確認していきましょう。

  1. (1)痴漢

    迷惑防止条例違反となる行為の、典型のひとつが「痴漢」です
    愛媛県迷惑行為防止条例第4条1項は「卑わいな行為の禁止」の中で、痴漢行為を禁止しています。

    ここでいう「痴漢」に該当するのは、次に挙げる条件に合致している場合です。

    • 相手が「公共の場所にいる者」または「公共の乗り物に乗っている者」である
    • 相手の性的羞恥心を著しく害し、または不安を覚えさせるような方法である
    • 衣服その他身に着ける物の上から、または直接身体に触れる行為である


    痴漢を罰する犯罪には、迷惑防止条例のほかにも刑法第176条の「強制わいせつ罪」があります。
    強制わいせつ罪は、暴行・脅迫を用い、わいせつな行為をした者を罰する犯罪ですが、迷惑防止条例違反との明確な区別はありません。

    強制わいせつ罪の成立には「暴行・脅迫」が要求されていますが、ここでは痴漢行為そのものが相手の抵抗を著しく困難にする暴行・脅迫と解釈されています。

    つまり、痴漢行為の強弱が両者を区別すると考えればわかりやすいでしょう。
    衣服の上から胸や尻といった部位を触る、あるいは腕や腿(もも)などに直接触れる行為は迷惑防止条例違反に、衣服の中に手を差し入れる、衣服の上から局部などに触れるといった行為は強制わいせつ罪にそれぞれ問われる可能性が高いですただし、あくまで目安であって、衣服の上からであっても、路上で触った場合や、しつこく触ったような場合等には、強制わいせつ罪になることもあります

    罰則は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
    常習の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に加重されます。

  2. (2)盗撮

    愛媛県迷惑行為防止条例第4条は「盗撮」も禁止しています

    同条1項4号においては「公共の場所・公共の乗り物」における盗撮行為を、同条2項2号においては「住居・浴場・便所・更衣室など、人が通常は衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所」における盗撮行為を規制しています。

    また、3項において「集会場・事務所・教室など、特定かつ多数の者が利用するような場所」における盗撮行為も規制しています。

    罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
    常習の場合の罰則は2年以下の懲役または100万円以下の罰金で、懲役の上限のみが加重されます。

  3. (3)その他の違反行為

    痴漢・盗撮のほかにも、県民・県内滞在者に対するさまざまな迷惑行為が規制対象として明記されています。

    • 粗野または乱暴なぐれん隊行為
    • 不当な金品の要求
    • 卑わいな「のぞき」行為
    • 深夜における騒音行為
    • 押し売り行為
    • 遊技場付近での景品買い行為
    • 不当な客引き行為
    • 乗車券などを不当に売買する「ダフヤ」行為
    • 座席などを不当に供与する「ショバヤ」行為
    • モーターボート等による危険行為
    • 特定の者に対する「つきまとい」等の行為


    いずれも懲役・罰金・拘留・科料といった刑罰が定められており、違反行為があると逮捕され、刑罰を受けるおそれがあります。

3、迷惑防止条例違反で逮捕されたらどうなる? 刑事手続きの流れ

痴漢や盗撮といった迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されると、その後はどうなってしまうのでしょうか?

  1. (1)逮捕・勾留による身柄拘束を受ける

    警察に逮捕されると、警察の段階で48時間以内、送致されて検察官の段階で24時間以内、最長で72時間にわたる身柄拘束を受けます
    身柄拘束を受けている間は自由な行動が制限されるので、自宅へと帰ることも、会社や学校に行くことも、家族や友人などに連絡を取ることも許されません。

    警察の段階では、なぜ事件を起こしたのか、どのような方法で犯行に及んだのかといった事情について取り調べを受けます
    取調官は限られた時間の中で被疑者の自白を得ようとするので、厳しい追及を受けることになるでしょう

    検察官は、自らも取り調べをおこなったうえで「勾留」の要否を検討します。
    さらに身柄拘束を継続して捜査を進める必要があると判断すると、裁判官に勾留の許可を請求し、裁判官がこれを認めると、10日間にわたる勾留がはじまります。

    勾留が決まると、被疑者の身柄は警察へと戻されて、検察官による指揮のもとで警察の取り調べが続きます。
    最初の10日間で捜査が遂げられなかった場合は、一度に限り延長が可能です。
    裁判官が延長を認めるとさらに10日間を限度に勾留が継続するので、勾留は最長で20日間にわたって続きます

  2. (2)起訴されると刑事裁判が開かれる

    勾留が満期となる日までに、検察官は「起訴」または「不起訴」の判断を下します。
    起訴とは刑事裁判を提起すること、不起訴とは刑事裁判を見送るという処分です。

    起訴されると、それまでは被疑者だった立場が刑事裁判を受ける「被告人」へと変わり、被告人としてさらに勾留を受けます。被告人勾留は公訴提起日から2カ月間とされていますが、1カ月ごとに更新が認められる場合があります。
    起訴された段階からは一時的な身柄解放として「保釈」を請求できるようになりますが、必ず許可されるわけではありません。
    保釈が認められなければ、身柄拘束が長期化し、裁判が終わるまで身柄拘束が続くおそれがあります。

    最初の刑事裁判が開かれるのは、起訴からおよそ1〜2か月後です
    以後、1か月に一度程度のペースで公判が開かれますが、容疑を認めている単純な事件でも2〜3回の公判を経るので、刑事裁判が終わるのは起訴から2か月以上が経過したころになるでしょう。

    刑事裁判の最終回となる日には、裁判官が「判決」を言い渡します。
    有罪の場合は法令が定める範囲で適切な「量刑」が言い渡され、期限内に控訴しなかった場合は刑が確定します。

    なお、迷惑防止条例違反の場合、刑として100万円以下の罰金が定められているので、略式手続となる場合もあります
    略式手続とは、検察官の請求により、簡易裁判所が、100万円以下の罰金または科料を科す手続きです(刑事訴訟法461条)。略式手続による場合、裁判所が略式手続によることに被疑者の異議がないことを確認したうえで(刑事訴訟法461条の2)、検察官の提出した証拠のみによって判決を言い渡します。

4、不当に重い刑罰を避けるには弁護士のサポートが重要

迷惑防止条例違反の容疑をかけられる事態になってしまった場合は、すぐに弁護士に相談してサポートを求めましょう。

  1. (1)被害者との示談交渉が最優先

    被害者が存在する事件において、もっとも穏便な解決方法となるのが被害者との示談です

    警察・検察官・裁判官を介することなく、加害者と被害者が話し合いによって事件を解決することを示談といいます。
    加害者は被害者に対して誠実に謝罪したうえで、事件によって生じた損害や精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた示談金を支払い、被害者がこれを受け入れて被害届や刑事告訴を取り下げる等すれば示談成立です

    警察に発覚するよりも前に示談が成立すれば、事件が表沙汰になる可能性は低くなります。
    すでに警察に発覚していた場合でも、逮捕前に被害届や刑事告訴が取り下げられれば、その時点で事件が終結し、逮捕を回避できる可能性があります。
    もし逮捕後だったとしても、被害届や刑事告訴の取り下げを受ければ、検察官が不起訴とする可能性もあります。
    仮に被害届や刑事告訴の取り下げがなかったとしても、被害者との示談は、量刑上有利に考慮されます。

    このように、示談成立が早ければ早いほど高い効果が期待できるので、直ちに経験豊富な弁護士に示談交渉を依頼するのが得策です。

  2. (2)再犯防止対策も大切

    すでに逮捕され、検察官に起訴・不起訴の判断が委ねられている状況であったり、刑事裁判の被告人として起訴された状況であったりするなら、被害者との示談成立だけでは不十分な場合があります

    また、犯行の内容が悪質であったり、常習性が高かったりすれば、たとえ示談が成立していても厳しい処分は避けられないおそれがあります。

    だからこそ、被害者との示談交渉と並行して、家族による監督強化を誓約する、痴漢や盗撮を繰り返してしまう癖を精神医学の面から改善するプログラムを受けるなど、再び罪を犯すことがないよう「再犯防止対策」を尽くさなくてはなりません。

    事件の内容に応じてどのような対策が有効なのかは異なるので、弁護士にアドバイスを受けながら実践していきましょう。

5、まとめ

痴漢や盗撮といった行為は「迷惑防止条例」の違反行為です。

容疑をかけられてしまうと逮捕・勾留によって長期の身柄拘束を強いられるおそれがあるうえに、厳しい刑罰が科せられる危険もあります。

迷惑防止条例違反にあたる行為があり、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスにご相談ください。弁護士が、スタッフと一丸になり事件解決に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています