逮捕後なるべく早く釈放してほしい!家族や友人としてできることは?

2018年06月21日
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逮捕後なるべく早く釈放してほしい!家族や友人としてできることは?

家族や友人、知人などが何らかの事件で逮捕された場合、なんとかしてやりたいと思うのは当然のことでしょう。すぐに釈放してほしいという気持ちにもなります。
しかし、逮捕という経験は、めったにあるものではないため、どう対応していいかわからないことも多いのではないでしょうか。ここでは、釈放されるケースや釈放までの流れ、早期釈放のために何をすればいいのか、どんな弁護士を選べばいいのかについて説明します。

1、逮捕後に釈放されるケースとは?

  1. (1)微罪処分に該当する

    微罪処分とは、検察官があらかじめ送致を不要と指定した種類の事件について、警察が事件を検察に送致せず刑事手続を終了させることをいいます。警察が被疑者を逮捕した後、微罪処分と判断した場合は、逮捕後48時間以内に釈放されます。

    微罪処分には明確な基準はなく警察の判断によりますが、一般的には、軽微な犯罪、犯行が悪質でない場合、被害者が被疑者の処罰を望んでいない場合などが微罪処分とされます。
    軽微な犯罪とは、被害が軽微な場合です。
    おおよその目安としては、窃盗の場合は被害額が2万円以内の場合、傷害の場合は被害者のケガが全治1週間以内の場合などが当てはまります。
    ただし、あくまで警察の判断で、明確な基準はないということを理解しておいたほうがいいでしょう。

    犯行が悪質でない場合とは、普段は真面目な人が酒に酔って暴行してしまったり、万引きしてしまったりなどのケースです。
    犯行が悪質な場合は、被害が少なくても微罪処分にはなりません。
    たとえば、常習的な盗みや計画的な傷害などの場合です。

    被害が軽微で、被害者が被疑者の処罰を望んでいない場合は、微罪処分になる可能性があります。被害届が出されていないときや、示談が成立して被害届を取り下げたときなどです。被害者が加害者の処罰を望んでいる場合は、簡単には微罪処分になりません。被害届の提出が、微罪処分の判断に大きく影響します。

    微罪処分になるのは、ほとんど初犯の場合です。前科や前歴がある場合は、軽微な犯罪でもめったに微罪処分になることはありません。住所不定や定職に就いていないなど処分後に警察からの連絡がとれないおそれがある場合も、めったに微罪処分にはならないでしょう。釈放のときには、親族や上司など身元引受人となる監督者に迎えに来てもらう必要があります。

  2. (2)不起訴処分に該当する

    被疑者(容疑者のこと)が逮捕され、引き続いて勾留されると最長で23日間、身柄を拘束されます。この間に検察官は、起訴するのか不起訴にするのかを決定しなければなりません。不起訴処分となった場合、被疑者は釈放されます。不起訴となった場合は、前科はつきません。

    不起訴処分には、いくつかの種類があります。

    1. ①犯罪の構成要件に該当しなかったり正当防衛が成立したりして犯罪が成立しない場合(罪とならず)
    2. ②真犯人が見つかるなど嫌疑自体が失われた場合(嫌疑なし)
    3. ③証拠が不十分で起訴できない場合(嫌疑不十分)
    4. ④証拠が十分あり起訴することも可能だが、あえて起訴しない場合(起訴猶予)


    などです。

  3. (3)略式起訴に該当する

    略式起訴とは、通常の起訴手続きを簡略化した起訴の方法です。正式な裁判手続を経ず、略式手続きで処分が終了します。通常は起訴された日に罰金を納付して刑事事件が終了し、身柄は釈放されます。罰金も刑罰にあたりますから、前科はついてしまいます。
    略式起訴をするためには、いくつかの要件があります。簡易裁判所管轄に該当する軽微な犯罪であること、100万円以下の罰金・科料に相当する事件であること、略式起訴について被疑者の異議がないことです。

  4. (4)保釈による釈放

    保釈とは、起訴後、勾留中の被告人が保釈金(保釈保証金)を納付して判決までの間、一時的に身柄拘束を解かれる制度です。
    保釈金は、被告人が逃亡したり、証拠隠滅を図ったりしないかぎり、判決を受けた後、全額返還されます。保釈が認められる条件は、

    • 重罪でないこと
    • 過去に長期の懲役、禁固刑を受けていないこと
    • 常習性がないこと
    • 証拠隠滅のおそれがないこと
    • 被害者や証人に危害を与えるおそれがないこと
    • 氏名と住所が明らかであること


    などです。保釈の請求ができるのは、勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹になっています。

  5. (5)執行猶予による釈放

    執行猶予とは、刑の執行を一時的に猶予するということです。
    例えば「懲役3年執行猶予5年」という判決がでた場合、すぐに釈放されます。判決から猶予の期間である5年、再び罪を犯したりすることがなければ、懲役3年という刑の言渡しそのものが効力を失い、刑の執行を受けることがなくなります。
    ただし、執行猶予の期間内に何らかの罪を犯し有罪となると、執行猶予が取り消され、刑を執行される可能性が高いです。

2、刑事事件での逮捕から裁判までの流れ

  1. (1)逮捕

    逮捕とは、被疑者(犯罪を犯した疑いのある者)の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、一時的に、その身柄を拘束することです。
    逮捕には、現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3つの種類があります。

    現行犯逮捕とは
    犯罪を目の前で起こした犯人を逮捕することです。逮捕状は必要なく、警察官や検察官だけでなく、一般人でも現行犯逮捕することができます。

    通常逮捕とは
    裁判所が発行した逮捕令状による逮捕のことです。警察官は、被疑者に逮捕令状を示して、何の容疑で逮捕するのかを告げる必要があります。

    緊急逮捕とは
    急を要する場合で、裁判官の逮捕状を求めることができないとき、例外的に捜査機関が逮捕理由を告げて、重大犯罪の被疑者を逮捕することです。なお、緊急逮捕後は、ただちに裁判官の逮捕状を求める手続をする必要があります。裁判所が逮捕状を出さない場合は、被疑者を釈放しなければなりません。

  2. (2)警察の取り調べ

    警察に逮捕されると、被疑者の身柄は警察に拘束され、取り調べが行われます。
    警察は、身柄拘束の必要がないと判断した場合は被疑者を釈放し、必要があると判断した場合は逮捕から48時間以内に検察官に送致します。

    逮捕段階では、弁護士以外は被疑者と面会することはできません。被疑者には、黙秘権が保障されているので、取り調べの際、自分に不利な事実をしゃべる必要はありません。警察官は供述調書を作成した後、調書の内容を読みます。内容に誤りがあれば、警察官に伝えて訂正してもらう必要があります。警察官が訂正しない場合は、安易に調書に署名、押印しない方が良いです。

  3. (3)検察への送検

    警察が身柄拘束の必要があると判断した場合、逮捕後48時間以内に、被疑者を検察官へ送致します。これが「送検」です。
    検察官は、送検から24時間以内、逮捕時から数えれば72時間以内に、被疑者を釈放するか裁判官に勾留請求するかを判断します。検察官が勾留請求しない場合や裁判官が勾留決定しない場合は、被疑者は釈放されます。

  4. (4)逮捕後23日以内に起訴・不起訴が決まる

    検察官は、逮捕から最長23日以内に、起訴か不起訴かを決定します。不起訴となった場合は、釈放され、前科もつきません。
    また、検察官の決定として、「処分保留」があります。処分保留とは、自供や確実な証拠が無いため、起訴か不起訴かの処分を保留するということです。

  5. (5)起訴後は短くても約1カ月程度勾留

    起訴されると、起訴状が届き刑事裁判が始まり、被疑者は「被告人」となります。被告人の身柄は、警察署から拘置所へ移されます。判決まで身柄の拘束が続き、短い場合でも数か月は、勾留されることが多いです。起訴後は、判決が確定するまでの間、いつでも保釈の請求をすることが可能です。

  6. (6)刑事裁判

    刑事裁判は、罪を犯した疑いのある人の有罪無罪や刑罰を決めるための裁判です。
    この裁判には、略式裁判と通常の裁判の2種類の手続があります。

    略式裁判の場合
    裁判所が供述調書などの書面審査により刑罰を決める手続で、裁判所に出廷することはありません。在宅事件の場合は、自宅に起訴状と罰金の納付書が送られてくるので、罰金を支払えば刑罰が終わります。

    通常の裁判の場合
    証拠の提出や証人尋問、被告人質問などが行われ、審理が進められます。刑事裁判にかかる期間は、事件内容や被告人の否認の有無、証人の数などによって異なります。

3、早期釈放のためには弁護士の力を借りることが重要!

刑事事件の弁護人には、 国選弁護人、私選弁護人、当番弁護士の3つの種類があります。

国選弁護人とは
貧困などのため私選弁護士に依頼できない場合、国が弁護士費用を負担して選任する弁護人のことです。国選弁護人には、起訴前の被疑者国選弁護と起訴後の被告人国選弁護があります。被疑者国選の対象は、勾留された被疑者に限られ、在宅の被疑者は対象外です。

私選弁護人とは
被疑者や被告人または一定の親族が、弁護士を弁護人として選任するのが原則です。これが私選弁護人です。任意での事情聴取や逮捕直後など、早い段階から選任することが可能です。起訴前から弁護活動を行ってもらうことで、不起訴になる可能性が高くなるというメリットがあります。費用は、自己負担です。

当番弁護士とは
起訴される前の段階でも弁護活動を行いやすくするために、日弁連が設けた制度、あるいはその制度により派遣された弁護士のことで、逮捕勾留された場合に1回だけ無料で弁護士が接見するというものです。被疑者が捜査機関に当番弁護士との面会をお願いすると、捜査機関が弁護士会に連絡してくれます。

国選弁護人と当番弁護士は被疑者が要請する弁護士のため、本人以外が弁護士を依頼する場合は私選弁護人になるケースがほとんどです。

4、被疑者の釈放のために私選弁護人を選ぶ3つのメリット

  1. (1)早い段階から選任することで、逮捕や勾留、起訴を避けることができる

    私選弁護人を早い段階から選任することで、逮捕や勾留、起訴を避けることができる可能性があります。国選弁護人は、逮捕された直後には選任されません。そのため、逮捕や勾留を避けるための弁護は、私選弁護人に依頼する必要があります。
    逮捕された後、早く釈放されるためには、被害者への謝罪や被害弁償などを行うことが重要です。被疑者は身柄を拘束されているため、謝罪などを行うことはできません。そのため、家族や友人などの協力が必要になります。

    逮捕されたことがわかったら、まず、被疑者がどこに留置されているのかを確認しましょう。次に、どのような犯罪で逮捕されたのかを把握します。そして、すぐに弁護士を探すことが重要です。

    日本における刑事裁判の有罪率は、99.9%とも言われています。起訴されればほぼ間違いなく有罪となり、前科がついてしまうということです。
    そのため、被疑者側としては、できれば不起訴処分にしてもらいたいところです。それには、警察や検察との交渉、被害者との示談交渉が必要になります。このような専門知識を必要とする交渉は、経験が豊富な弁護士に任せたほうがいいでしょう。たとえ起訴されたとしても、保釈の請求や判決が好結果になることを期待できます。

  2. (2)自分で選べる

    私選弁護人は、被疑者や被告人または一定の家族が、自分で選ぶことができます。
    事件の内容や種類によって、その分野を得意とする弁護士に依頼することが可能です。
    弁護士との相性が合わなかったり、方針に納得できなかったりする場合は、弁護士を変更することもできます。
    これに対して、国選の場合は弁護士を自分で選べませんし、いったん選任された弁護士を変更することは基本的に認められません。

  3. (3)幅広い業務に対応してもらえる

    私選弁護人は、幅広い業務をこなしてくれます。
    警察や検察、裁判所との間で必要な手続きの代行、被疑者へ今後の流れや対応についてアドバイス、被害者や関係者との連絡、代理で示談交渉を行うなどのことです。それに加え、家族との連絡や勤務先への対応などもしてもらうことができます。
    国選の場合、弁護士によっては対応してくれないことがあります。

5、私選弁護人を選任する際の注意点は?

  1. (1)刑事事件を多く扱った経験のある弁護士を選ぶ

    弁護士によって、得意とする事件の分野は違います。刑事事件の経験が豊富な弁護士を選びましょう。

  2. (2)当番弁護士、国選弁護人と比べるとどうしても費用がかかってしまう

    私選弁護人を弁護士に依頼した場合、費用がかかります。
    しかし、逮捕直後から弁護活動を始めてくれることなど多くのメリットがあります。できれば、私選弁護人を選んだほうがいいでしょう。

  3. (3)金額も大事だが最終的には依頼者との相性が重要

    逮捕された本人は、精神的に相当つらいものがあるでしょう。そんなとき、信頼できる弁護士がいれば、心強いはずです。最終的には、依頼者と弁護士の相性が重要になります。

6、まとめ

逮捕や勾留、刑事裁判などで被疑者を守るためには、弁護士に相談することが大事です。
私選弁護人なら家族や友人が依頼することもでき、しかも早い段階から対応してもらえます。なるべく早く釈放してもらうためには、私選弁護人への依頼を検討すべきでしょう。

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