遺言書が見つかったら検認が必要? 松山市の検認場所と手続きの流れを解説
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人が亡くなると、遺族はゆっくりと悲しみに暮れる間もなく、次から次へと訪れる相続の手続きに忙殺されてしまいます。ひとつの手続きをできるだけスムーズに行うためにも、基本的な知識を備えておくと安心です。
松山市の人口動態統計によれば、平成30年には5548人の方が亡くなっています。中には遺言書を残して亡くなった方もいらっしゃるでしょう。遺言書が見つかった場合、まずはその場で開封すればよいのか、それともどこかへ提出するのか、詳しくは知らない方も多いはずです。
今回は、遺言書が見つかった場合の対応や手続きの流れについて解説します。「検認」の概要や遺言書の種類もあわせて確認しましょう。
1、遺言書が見つかったら開封してもよいのか
遺言書が見つかれば、その場ですぐに確認したくなるかもしれませんが、法律で一定のルールが定められています。
すぐには開封せず、いったん状況を整理していきましょう。
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(1)検認が必要
民法1004条の規定により、公正証書遺言以外のすべての遺言書に家庭裁判所における検認手続きが要求されています。
検認とは、遺言書の存在と内容を相続人全員に知らせる手続きです。遺言書の改ざんや破棄、隠匿を防止することを主な目的としています。
これに違反し封印された遺言書を開封した場合や、検認を経ずに遺言書に沿った手続きを進めてしまった場合、5万円以下の過料に処せられるおそれがあるため、注意が必要です。
仮に開封することについて相続人全員が合意していたとしても、過料を支払わなくてはならないおそれがあります。また、故意に遺言書を改ざん、破棄、隠匿などすれば、相続人としての資格を失うおそれも生じます。
不動産の相続が想定される場合、遺言書の取り扱いは、特に注意が必要です。検認が必要な遺言書があると、検認された遺言書および検認証明書がなければ、不動産登記を行うことができません。 -
(2)遺言書の効力について
検認はあくまで、遺言書の内容を確認したり、改ざんを防いだりするものです。遺言書の内容に関する効力を絶対的なものにするわけではありません。
たとえば、「長男にすべての財産を相続させる」とする遺言書だったとしても、ほかの相続人が法律で定められている遺留分を求める異議を申し出れば、調停や訴訟などの方法で解決を目指すことになります。
また、検認せずに開封したとしても、遺言書の内容に関する効力自体がなくなるわけではありません。
検認せずに開封してしまったとしても、遺言書の効力は継続しているため、書かれている内容が無効とはならないのです。なお、誤って開封した後に、検認を受けることもでき、開封した相続人が相続権を失うようなこともありません。
検認を経た遺言書であっても、相続人全員が遺産分割協議で同意すれば、遺言書とは異なる内容で分割をすることも可能です。ただし、遺言の内容が相続人以外の第三者に相続させるものである場合、いくら法定相続人全員が同意しても、その第三者本人が同意しない限り、実現できません。
2、遺言書の種類と特徴
遺言書には普通の方式による場合には、3つの種類があります。以下、それぞれの特徴と、検認との関係性を見ていきましょう。
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(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、全文、日付、氏名が自筆し、押印して作成する遺言書のことです。
特別な手続きや費用が不要であるため広く利用されており、一般的によくイメージされる遺言書といえるかもしれません。
ただし、少しでも形式を満たさないと無効となる可能性があり、遺言者以外の者による改ざんや隠匿が行われやすい危険がある、などがデメリットとして挙げられるでしょう。
なお、平成30年7月に成立した遺言書保管法により、自筆証書遺言は法務局で保管してもらえるようになりました。法務局で保管してもらった場合、検認は不要です。(施行日は令和2年7月10日) -
(2)公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言の内容を公証人に伝え、公証人が公正証書による遺言書として作成する遺言書のことです。公証人には主に裁判官や検事など長きにわたり法律実務に携わってきた人が就任します。
公正証書遺言の作成の際には、証人二人以上が同席し、遺言者が口授し、公証人がその内容を筆記し、遺言者および二人以上の証人に読み聞かせ(または閲覧させて)、遺言者・証人・公証人が署名押印を行い作成することになります。
公正証書遺言の場合、検認は不要です。
形式不備で無効となることがなく、原本も公証役場にて保管されるため、確実な遺言の方法であると考えられます。 -
(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、内容を秘密にしたまま、遺言者本人が書いたものであることを、公証人と証人二人以上の前で封印した遺言書を提出して遺言証書の存在を明らかにするための形式による遺言書です。
公証役場で存在の記録こそされますが、あくまでも作成は遺言者自身が行うため不備があれば無効になる可能性があります。 -
(4)遺言書の見分け方
3種類のうち、法務局での保管によらない自筆証書遺言と秘密証書遺言については、検認が必要です。公正証書遺言は、公証人が作成した遺言書で原本も役場に保管されており、改ざん、隠匿などのおそれがないため、検認をする必要はありません。
そのため、遺言書を見つけときは、検認が不要な公正証書遺言かどうかを見分ける必要があります。
公正証書遺言の場合、正本や謄本の封筒や表紙に「公正証書遺言」と書かれているため、自筆証書遺言や秘密証書遺言とは見分けやすいはずです。公正証書遺言と書かれていない遺言書の場合、基本的に検認の手続きを行った方がよいでしょう。
3、遺言書が見つかった後の対応
遺言書の発見から検認日までの流れ、公正証書遺言の確認方法を見ていきましょう。
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(1)家庭裁判所へ検認を申し立てる
自筆証書遺言が見つかったら、被相続人の最後の居住地にある家庭裁判所で検認を受けます。最後の居住地が松山市だった場合は、松山市南堀端町の松山家庭裁判所へ申し立てましょう。
必要書類としては、申立書、戸籍謄本、身分証明書などが基本ですが、相続人の状況や家庭裁判所によっても変わります。一度で済ませるために事前に問い合わせておくとよいでしょう。
費用は収入印紙代として1通につき800円、そのほか郵便切手代などがかかります。申し立てた後、「検認期日通知書」が送られてくるため、内容を確認しましょう。 -
(2)検認日当日
遺言書、申立書、そのほか指示がある書類や印鑑を持参のうえ、裁判所へ出向きましょう。家庭裁判所が遺言書を開封し、日付や署名、加除訂正などを確認します。遺言者本人の筆跡か、実印かといった点を聞かれることがありますが、わからなければ正直に答えましょう。通常は10~15分ほどで終了し、内容は検認調書に記録されます。
家庭裁判所に検認を申し立てた申立人の参加は必須ですが、相続人は任意です。参加できなくても、後日、検認終了通知が送られてきますし、検認調書の申請により遺言書の内容を確認することもできます。 -
(3)公正証書遺言の確認方法は?
自筆証書遺言や公正証書遺言の正本や謄本などが見つからない場合、そもそも遺言書があるかどうか確認しなくてはなりません。
自筆遺言書や秘密遺言書は、家の中などの思いつく場所を探す必要がありますが、公正証書遺言の場合、公証役場でその有無を検索することができます。
検索の際、基本的には死亡事実がわかる除籍謄本や戸籍謄本、身分証明書などの書類が求められますが、公証役場によって必要書類が異なることもあります。事前に確認のうえ訪問されると効率的です。
松山市の公証役場は、松山市歩行町にある「松山公証人合同役場」となります。
4、遺言書の検認を弁護士に依頼するメリット
検認は申し立てから完了まで早くて1か月ほどかかります。申立書の作成や戸籍謄本などの資料収集に時間がかかってしまえば、さらに遅くなるでしょう。
そうなると、相続放棄や限定承認、遺産分割協議の必要性を判断することができず、不利益を被る可能性が生じます。
また、遺言書は検認して終わりではなく、それに従いもろもろの相続手続きを進めることになります。遺言書の効力に争いがあるような場合や、そのほか相続人間でトラブルを抱えることも珍しくありません。
弁護士であれば、検認書類の作成および提出、必要資料の収集、検認日の同席などをすることができ、遺言書について争いがある場合にも別途対応できます。
検認から相続、その後の手続きなどを弁護士に依頼することで、ご自身の負担が大きく緩和されるでしょう。
5、まとめ
今回は、遺言書が見つかった場合の対応について解説しました。
遺言書が自筆証書遺言や秘密証書遺言の形式だった場合、検認を受ける必要があります。
また、相続には非常に多くの手続きが発生し、中には期限が設けられている手続きもあります。書類作成や資料収集をスピーディーかつ正確に進めなくてはなりませんが、一般の方にはなかなか難しい面があります。専門家に依頼できる部分は可能な限り委ねることが賢明です。
ベリーベスト法律事務所・松山オフィスでは、相続のご相談、手続きの代行をお受けしています。トラブルのない相続手続き遂行のためにも、ぜひ一度ご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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