連れ子は相続できるの? 再婚で起こる相続問題を松山の弁護士が解説
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昨今は、再婚する方の割合も増え、再婚する際、連れ子がいるケースも珍しくはないでしょう。しかし、中には再婚相手に連れ子がいると、相続はどうなるのだろうとお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
実の子であれば血縁関係があるので悩むことはありませんが、連れ子はまったく相続できないのか、それとも相続できるのか、気になるところでしょう。また、再婚相手との間に生まれた子どもの相続はどうなるのだろう、という疑問もあるかと思います。
現在の配偶者や子どもたちのことを考えれば、できるだけ将来の相続でトラブルを避けたいと思うのは当然のことです。
そこでこの記事では、再婚相手に連れ子のいる方向けに、相続の原則と対処方法について、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
1、連れ子に相続権はある?
再婚相手に連れ子がいると、一緒に生活をはじめるため、普通の親子関係となる方も多いと思います。そのようなときに、何もせずとも連れ子へ財産を残すことはできるのでしょうか。
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(1)法律上、連れ子の相続権はない
法律において、相続できる者として認められているのは、法定相続人です。法定相続人は基本的に、死亡した人の配偶者と血族のことを指し、血縁関係のない連れ子はそのどちらにもあてはまりません。
たとえ再婚相手の連れ子と幼い頃から一緒に生活し、長期間同居していたとしても、適切な措置を講じなければ、法定相続人とすることはできないのです。 -
(2)養子縁組すれば連れ子でも相続できる
再婚相手の連れ子を我が子同然に育てたなど、さまざまな理由から、連れ子に遺産を相続させてやりたいという気持ちになることもあるでしょう。
そのようなケースでは、連れ子と養子縁組をすることで、相続をさせることが可能になります。
養子縁組とは、本当の親子でないふたりの者を法律上の親子にする法的手続きのことです。
養子縁組には、2つのタイプがあります。 -
(3)普通養子縁組
当事者の合意があれば自由に養子縁組できるのが「普通養子縁組」です。基本的に、再婚相手の連れ子と養子縁組を行う場合は、こちらを利用するケースが多いでしょう。
普通養子縁組を行うときは、基本的に以下のような条件に合致している必要があります。
- 養親が成年であること(令和4年4月1日以降は20歳に達した者であること。)
- 養子が目上の親族や年上でないこと
- 後見人が被後見人を養子に取る場合は、裁判所の許可を得ること
- 配偶者のある者が養親または養子となるときには、配偶者の同意を得ること
- 養親が夫婦の場合は、その両方が養親となること
- 15歳未満を養子とするときは、法定代理人からの承諾を得ること
- 未成年者を養子とする場合は、家庭裁判所の許可を得ること。なお、自分または配偶者の直系卑属(子ども・孫など)を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は必要ない
- 養子縁組に関する届出を市区町村役場に提出し、受理してもらうこと
なお、普通養子縁組はあくまでも戸籍上の親子関係であり、実の親との親子関係には影響を与えません。そのため、たとえば再婚した妻の連れ子と普通養子縁組をしたとしても、その連れ子は実夫の遺産を受け取ることができます。
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(4)特別養子縁組
「特別養子縁組」は実の親との関係を断ち切る養子縁組の方法です。そのため、養子は関係が断ち切られた実の親から、相続を受けることはできなくなります。
このように、特別養子縁組を結ぶと元の親子関係が断絶されてしまうため、普通養子縁組よりも、条件が厳しくなっていることが特徴です。条件としては、以下のようなものが設けられています。
- 夫婦共同で養親となること(夫婦の一方が、他の一方の嫡出である子どもの養親となる場合を除く。)
- 夫婦のどちらかが25歳以上で、もうひとりが20歳以上であること
- 養子となる子どもが縁組の請求時に15歳未満であることおよび縁組成立時に18歳未満であること
- 実の親がその子どもを育てるのに著しく不適切などの事情があり、養子縁組が子どもの利益のために特に必要であること
- 実の親が同意していること(当事者が自由に意思を表示できない場合や養子となる子どもが虐待を受けているなどの事情がある場合は、同意は不要)
- 特別養子縁組の請求後、6か月以上の期間の監護を経ること
2、養子縁組をした連れ子と実子の法定相続分
実際に、連れ子と養子縁組をした場合、実子の相続分に影響を与えるのか気になるでしょう。
ここでは「夫、妻、妻の連れ子、夫婦間の実子の4人家族。夫が死亡して相続が発生した」という条件で、養子縁組の前と後でそれぞれの相続分がどうなるかを具体的に解説していきます。
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(1)連れ子の養子縁組前の相続分
養子縁組を行っていない場合、先ほど触れたように、連れ子には相続権がありません。また、法定相続分のルールとして、配偶者は財産の2分の1を受け取ることができ、子どもはその残りを受け取ることになります。
そのため、法定相続分は以下のとおりです。
- 妻……2分の1
- 実子……2分の1
- 連れ子……なし
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(2)連れ子の養子縁組後の相続分
連れ子を養子縁組していた場合、連れ子は相続に関して実子と同等に扱われます。そのため、配偶者が受け取る2分の1を除いた財産を、実子と連れ子が分け合うことになるのです。
- 妻……2分の1
- 実子……4分の1
- 連れ子……4分の1
このように、連れ子が養子縁組しても配偶者の相続分は影響を受けませんが、実子は連れ子と相続分が同じになるため人数に応じて比例配分されることになります。
3、養子縁組する際に注意したいこと
連れ子を養子縁組することで、財産を相続させることが可能となるため、連れ子に財産を残したい方は、すぐにでも養子縁組を届け出たいと思うかもしれません。しかし、焦って養子縁組をしてしまうとさまざまなトラブルが発生するケースがあります。
そこで、養子縁組する際に注意したいポイントを押さえておきましょう
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(1)前の配偶者からの養育費
再婚した相手に連れ子がいる場合、前の配偶者から養育費を支払われているケースがほとんどでしょう。
連れ子との養子縁組が成立すると、養育費が減らされたりストップされたりする可能性があります。養育費は子どもの権利であるため、今後の養育について、再婚相手だけでなく前の配偶者とも十分に話し合うことが大切です。 -
(2)養子縁組の解消
普通養子縁組は役所で手続きすることで、解消することが可能です。たとえば、養子にした後で、養親と養子の折り合いが悪く親子関係を維持できないようなケースや、再婚相手と離婚したケースなどでは、養子縁組を解消することも想定されます。
一方、特別養子縁組については、親子関係を解消するには家庭裁判所の離縁審判を経なくてはなりませんので、注意が必要です。
4、遺言でトラブルを回避する
養子縁組をすれば再婚した相手の連れ子に相続させることができますが、「理由があって養子縁組をしたくない、しかし相続はさせたい」という場合もあるでしょう。そのような場合には、遺言により連れ子に相続させることが可能です。
遺言は相続する人や相続させる財産の割合を指定できるため、遺族同士が相続争いをすることをある程度抑えることができます。
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(1)連れ子に財産を遺贈する
相続権のない者に財産を譲り受けさせる方法として、遺贈という手段があります。養子縁組をせずに連れ子に財産を遺贈するためには、財産を譲る旨を遺言書に残しておかなくてはなりません。
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(2)遺言の形式に注意
遺言には主に、自分で作成できる自筆証書遺言と公証役場で公証人に遺言の内容を直接話して作成してもらう公正証書遺言があります。自筆証書遺言は費用がかかりませんが、遺言を有効にするにはルールがあり、要件を満たしていない場合、遺言が無効になるかもしれません。
無効となった遺言書に書かれている内容は否定されるため、連れ子への遺贈は無効となります。
連れ子に確実に遺贈するためにも、費用はかかっても公正証書遺言を作成することをおすすめします。 -
(3)遺留分侵害額請求に注意
遺言を作成すれば連れ子にも財産を与えることは可能ですが、遺留分には十分注意をしましょう。遺留分とは、一定範囲の相続人が相続できる最低限の財産のことです。相続人は、法定相続分の半分を遺留分として請求できます(ただし、直系尊属のみ相続人の場合は3分の1が遺留分となります。)。
後々のトラブルを避けるため、遺留分にも配慮して遺言書を作成してください。
5、弁護士に相談しよう
いずれの手続きも個人で行うことは可能ですが、遺言書などは書き方によって無効になる場合があります。また、遺言書で遺贈を指定する際に、親族間で事前に話し合いを行いたいケースなどもあるでしょう。
再婚相手の前の配偶者と養育費や面会権について、話し合うケースも考えられます。
無用なトラブルを避けるためにも、早めに弁護士に相談し、対処方法について考えておくといいでしょう。
6、まとめ
一般的に相続はもめることが多く、再婚相手に連れ子がいるとさらにトラブルになる可能性が高くなります。しかし、長年一緒に生活して実の親子同然に暮らしてきたのに、連れ子だけ相続できないという事態は避けたいところでしょう。元の家族との関係を悪化させないためにも、相続について心配のある方は事前に弁護士へ相談してみることをおすすめします。
再婚相手の連れ子の相続でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士に、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています