遺言書にはどういう効力がある? 書き方と無効にならないための注意点

2018年10月19日
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遺言書にはどういう効力がある? 書き方と無効にならないための注意点

松山市の県社会福祉協議会によって行われている愛媛県高齢者大学校が、2016年に開講した「終活」についての講義は、受講希望者が定員を超えたとの報道もあり、老後の生活や相続問題に対して人々が持つ興味関心の高さをうかがわせます。

相続問題を考える上で、「財産を誰にどう遺すか」という意思表示をすることは非常に重要なことです。あなた自身の意思を反映させるためだけでなく、遺された家族が末永く仲良く暮らしてもらいたいと願うのであれば、より明確かつ詳細に意思表示しておいたほうがいいと考えられます。すなわち「遺言書」の作成は、避けて通れないものといってよいでしょう。

今回は、遺言書の効力や書式、作成した遺言書が無効となってしまわないための注意点などについて、松山オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。

1、状況や方法によって異なる遺言書の種類とは?

遺産相続の話題で必ず登場する「被相続人」とは、相続可能な財産を遺して亡くなった方を指します。今回で解説する「遺言書」を遺す方です。そして「相続人」は、被相続人が遺した財産を受け取る権利を持つ方です。相続人に該当する方は、民法によって定められています。

あなたが「被相続人」となるときは、遺言書によってそのほかの方を指定しない限りは、基本的に配偶者や子ども、孫、両親などの親族が「相続人」になります。

遺言書は、被相続人が自らの意思でどのように財産を分配するかなどを指定できる手段です。ただし、遺言書が効力を発生する時点で、書いたご本人は当然亡くなっています。つまり、遺言書に曖昧な記述や不明確な部分があったとしても、真意を確かめることができません。そこで、遺言書の解釈で無用な混乱が生じるのを避けるために、書き方や有効となる内容を厳格に定められています。

まずは遺言書の種類を解説します。遺言書は、遺す状況や作成方法によって、3種類の普通方式と4種類の特別方式に分けられます。

  1. (1)普通方式の遺言書

    普通方式の遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

    ●自筆証書遺言
    被相続人本人が内容と日付、氏名を直筆で手書きし、押印することで成立します。手書きするのがポイントであり、パソコンやスマートフォンで打ち込んで印刷しても、無効となります。また、保管は自分で行うため、改ざんや紛失などのデメリットがあります。また、内容確認を公式に行うため、相続のために開封する際は、裁判所による検認という手続きが必ず必要となります。

    ●公正証書遺言
    公証人が遺言の内容を聞き取り、公正証書として作成します。作成時には2名以上の証人の立ち会いが必要です。自筆証書遺言と比べてやや手間と費用がかかりますが、その代わり、原本は公証役場で保管されますし、専門家である公証人が作成するため、形式不備による無効の心配が要らないというメリットもあります。相続の際は公証役場でコピーを入手するだけで、手間がかかりません。

    ●秘密証書遺言
    被相続人自ら、本人の署名と押印によって作成し、公証人および2名以上の証人を必要とする作成方法です。保管は自分で行います。公証人が証明してくれるのは遺言の存在と、それが本人の書いたものであるという事実に限られます。よって、内容自体は秘密にしておくことができます。ただし、誰にも内容を知られないというメリットは、相続のタイミングではデメリットとなり、内容の証明がなされていないため、遺言書開封時には裁判所で検認手続きを行う必要があります。また、内容に問題があり遺言としての要件が欠けることも少なくありません。

  2. (2)特別方式の遺言書

    特別方式の遺言には、「一般危急時遺言」「難船危急時遺言」「一般隔絶地遺言」「船舶隔絶地遺言」の4種類があります。

    これらはそれぞれ危篤のとき、遭難したとき、伝染病で隔離されているとき、船上にいるときの例外的な場合に認められる遺言です。遺言者が普通方式の遺言書ができるようになってから6ヶ月生存した場合は、効力を失います。

2、遺言書ではなにを指定できる?

遺言書は、「どのような内容でも書き遺せば法的な効力を持つ」というわけではありません。遺言書としての効力を発効されたときには、本人が亡くなっているため、曖昧な内容や広範な内容を認めることはできないためです。

遺言によって法的な効力を持たせることができる事項は、大まかに分類すると「財産関係」「手続き関係」「身分関係」の3種です。法律で定められた「遺言事項」以外は、遺言書に記載しても法的な効果は認められず無効と扱われます。

ただし、遺言事項以外のことに関してや、家族へのメッセージは、「付言事項」として書き残すことが可能です。書き残すことはできますが、法的な効力はない点に注意が必要です。たとえば「付言事項」へ、なぜそのように相続するよう指定をしたのかなどを付記することによって、遺していく家族へ気持ちが伝われば、相続人への説得力が増すため、より円満な相続となる可能性があるでしょう。

  1. (1)財産に関すること

    遺言書といえば、相続について記すものだと思う方が多いのではないでしょうか。実際に、遺言書では、誰に、どのくらい、どのような分け方で財産を相続させるかを決められます。また、死後5年間を限度として遺産分割を禁じたり、財産の担保責任の範囲を定めたりすることもできます。

    具体的には、以下の事項を定めることができます。

    • 相続分の指定・指定の委託
    • 遺産の分割方法の指定
    • 特別受益者の相続分に関する指定
    • 推定相続人の廃除とその取り消し
    • 遺産分割の禁止
    • 共同相続人間の担保責任の定め
    • 遺留分減殺方法の指定
    • 相続人の担保責任指定
    • 相続財産の処分(包括遺贈および特定遺贈に関することなど)
  2. (2)手続きに関すること

    遺言では、財産に関することだけでなく、相続する際に必要となる手続きに関することも定めておくことができます。具体的には「遺言執行者の指定・委託」と、「祭祀(さいし)承継者の指定」が可能です。

    「遺言執行者」とは、土地の登記名義や銀行口座の名義を換えるといった、相続に必要不可欠となる事務手続きを行う者です。遺言執行者は、家族だけでなく、弁護士など第三者を指定することもできます。ただし、未成年の子どもや破産者などは指定できません。

    「祭祀(さいし)承継者」は、神棚や仏壇、お墓などを管理する方のことです。

  3. (3)身分に関すること

    さらに、遺言では、「認知」、「未成年後見人・未成年後見監督人の指定」など、遺された家族の身分に関することを記すことで、効力を持たせることができます。

    たとえば、あなたに、諸事情で生前は認知できなかった子どもがいるとしましょう。その子どもにも相続させたいときなどは、遺言によって「認知」するよう指定できます。認知された子どもは法定相続人となり、あなたの財産を相続する資格を得ることができます。

    また、被相続人が亡くなることによって親権者がいなくなる子どもがいる場合には、未成年後見人の指定もしておくことができます。

3、遺言書が無効とならないための注意点

せっかく手間暇をかけて作成した遺言書が、残念ながら法的な効力を失っていたというケースは少なくありません。たとえば、遺言書に記載してある財産の金額が現実から大きく異なっていたときや、遺言書をしたためた日付などの記載がない、自筆証明遺言書であるにもかかわらずパソコンで作成されていた……などのケースです。

無効となる遺言書を作成しないためには、登記情報など自らの財産内容を改めて洗い出して正確に書き写すなどのほかに、主に3つのポイントがあります。これから遺言書を作成する際は、留意が必要です。

  1. (1)遺言書を有効に作成できる能力がない

    そもそも、遺言書が本当に法的効力を持たせられるか否かについて、まずは検討しなければなりません。

    まず、遺言書を遺した被相続人が満15歳以上である必要があります。幼過ぎると自分の財産の処分を適切に判断できないと見なされ、遺言は無効となることが、民法第961条によって定められています。

    次に、被相続人自身の意思能力(事理弁識能力)も必要です。判断能力との関係で、たとえば認知症の方が書いたとする遺言書は原則として無効とされます。なお、成年後見人が就任している成年被相続人については、民法第973条にのっとり、一時的に自身の意思能力や判断力が回復したときに、2名以上の医師の立ち合いなどによって作成した遺言書の効力が認められます。

    もちろん、詐欺・強迫によって記された遺言書も無効となります。本人の意思が適切に反映されたものではないためです。

  2. (2)法で定められた作成手順が守られていない

    遺言書に法的な効力を持たせるためには、法で定められた手順を満たさなければ無効となります。特に自筆証書遺言の「手書き」という点や、公正証書遺言、秘密証書遺言の証人、日付や押印など、定められた要件をきちんと確認しながら、不備が出ないよう気を付けて作成する必要があります。

    弁護士に依頼することで、実際の財産の洗い出しや登記簿情報などの内容確認、遺言書そのものの内容チェックなどを実施してもらえることもあります。不安な点があるときは、弁護士に相談してみることをおすすめします。

  3. (3)遺言書の作成に本人以外がかかわっている

    民法第975条では、「2人以上が同一の書面で遺言を作成することはできない」と明記しています。たとえば、夫婦で同じ気持ちだからといって連名による「共同遺言」を作成しておいたとしても、法的には無効になるということです。また、自筆証明遺言書においては、代筆された遺言書も無効になります。

    遺言書は、他者からの影響を受けずに意思を示したものである必要があります。混乱を招かないようにするためにも、遺言書はあくまでも被相続人1名だけの内容で作成するようにしてください。

4、まとめ

遺言書では、どのようなことが指定できるのかという基本的な部分や、遺言書が無効になってしまうケースについて紹介しました。遺言書は、要式や記載内容が法律で厳格に定められています。特に財産の相続に関しては、不明確なことを書くと親族間でのトラブルを招く可能性もあります。注意して作成する必要があるでしょう。

法的効力を持つ遺言書を作成したい、相続争いにならないようにしたいと強くお考えであれば、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。法で定められた手順や方式から内容に至るまでの注意点や、トラブルを避けるためのポイントをアドバイスするだけでなく、遺言書作成のサポートも行います。

ベリーベスト法律事務所では、税理士や行政書士などとも連携して、より良い遺言づくりのサポートをしています。松山オフィスの弁護士も尽力いたしますので、遺言書を作成する際は、ぜひお気軽に相談してください。

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