交通事故の通院交通費|交通手段別自賠責保険から支払われる範囲
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松山南警察署が公表している「令和4年交通白書」によると、令和3年中に松山南署管内で起きた交通事故は378件で、433名もの方が負傷しています。交通事故により通院を余儀なくされている場合、通院にかかる交通費を加害者に請求することが可能です。その交通費は、交通事故によって生じた本来負担する必要のない費用といえるからです。
では、タクシーで通院した場合は全額請求できるのでしょうか。その他、自家用車で通院した場合、交通費はどのように計算されるのか、病院が自宅から遠い場合でも全額が支払われるのかなど、わからないことも多いと思います。
そこで今回は、通院交通費として自賠責保険や相手方の保険会社などから認められるものや、通院交通費の計算方法、請求の方法などについてベリーベスト法律事務所 松山オフィスの弁護士が解説します。
1、通院交通費とは?
通院交通費とは、交通事故によるケガの治療のため病院に通院するために必要となる交通費です。交通事故でケガをした場合、診察や治療のために病院に通わなければならなくなりますが、その交通費は、交通事故に遭わなければ支払う必要のなかった費用なので、基本的に加害者(保険会社)に損害賠償として請求することができます。
損害賠償金の請求は、通常、損害額が確定した後(≒治療終了後)に行われますが、通院交通費については、実際に出費しているものであり、かつ、金額が明確なので、1か月単位などで請求することができます。もちろん、他の損害額が確定した後にまとめて請求することも可能です。
交通手段としては、基本的にバスや電車などの公共交通機関や自家用車を利用する方が多いと思いますが、タクシーで通院することも認められることがあります。ケガの状況的に自家用車での通院が難しいものの地方などで公共交通機関が極端に少ない場合があるからです。
ところで、交通事故でケガをした本人の通院交通費が支払われるのは当然として、通院に付き添った人やお見舞いに行った人の交通費は請求できるのでしょうか。
付添人や見舞い人の交通費が認められるかどうかは、付き添いが必要不可欠な状態かどうか、お見舞いをすることについて心情的に理解できるかどうかによって変わります。
ケガをしたご家族に寄り添いたいというお気持ちは十分に理解できますが、残念ながら、ひとりでも問題なく通院できるような場合に付添人が付いていったとしても、それは損害賠償として認められません。他方で、高次脳機能障害を負って電車に乗って通院することに不安があるなどして、医師から付き添いの指示がある場合やひとりで通院することができない幼児などである場合には、付添人の交通費も認められることになります。また、入院して生死の境をさまよっている家族を見舞うために支出した交通費については認められる可能性が高いといえるでしょう。
裁判例としては、独身者の被害者の姉が飛行機で見舞いに来て6回付き添ったことを損害として認められたものがありますが、これは3か月以上の入院を要する重傷において、他に見舞う者もいないことを理由としています(名古屋地方裁判所 平成19年5月30日判決「平成17年(ワ)第2969号」)。
この他、韓国人留学生が交通事故で入院した際に両親が韓国から日本に来た費用が損害であるとして認定された事案もありますが、認定されたのは請求された20回のうち6回のみであることにも注意が必要です(神戸地方裁判所 平成8年12月12日判決「平成7年(ワ)第87号」)。
2、通院交通費の請求方法
通院交通費の請求に必要な書類としては、「通院交通費明細書」があります。通院交通費明細書に必要事項を記入して保険会社に提出することで、通院交通費が支払われます。公共交通機関を利用した場合には領収書は必要ありませんが、タクシーを利用した場合や自家用車で駐車場を利用した場合には領収書が必要になります。
通院交通費明細書の書式は保険会社によって異なるので、一律の書き方があるわけではありませんが、通院日、医療機関名、交通手段の種類、区間または距離、利用料金などを記載します。
前述のとおり、治癒または症状固定後にまとめて請求することもできますし、通院が長期となるような場合には、1か月ごとなど、定期的に請求することも可能です。
なお、通院交通費を請求する場合に注意が必要なのは、自宅からではなく会社から病院に行く場合です。この場合には、会社から病院までの交通費しか請求できません。自宅と会社の交通費は会社から支給されているはずだからです。ただし、足を骨折して電車に乗れないため、会社までタクシーで通勤した場合などには、追加で要した費用を請求することが可能です。
通院交通費の請求先が保険会社の場合、銀行振り込みで受け取ることになります。
3、交通手段別の請求方法と注意点
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(1)電車やバスを利用した場合
電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合、料金は区間によって決められているので、自宅の最寄り駅(最寄りのバス停)から病院の最寄り駅(最寄りのバス停)までの区間分の往復の交通費を請求することができます。料金は誰でもわかるので、領収書の添付は必要なく、請求が認められないということは基本的にありません。
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(2)タクシーを利用した場合
通院交通費は、公共交通機関を利用した場合の費用が支払われるのが原則なので、タクシー代を請求するためには、タクシーを利用することが必要であることを証明しなければなりません。たとえば、足を骨折して歩けないとか、地方で公共交通機関の本数が極端に少なくタクシーを利用することが相当と判断されるなどの事情を理解してもらう必要があります。
タクシー代の場合、同じ病院に通う場合でも料金は日によって変わるため、領収書の添付が必要になります。タクシー代の場合、支払われないという可能性もあるので、あらかじめ保険会社と協議しておくことが望ましいでしょう。 -
(3)自家用車を利用した場合
自家用車を運転できる状態の場合、自家用車で通院することもあると思います。その場合には、ガソリン代や駐車場代を請求することができます。ガソリン代は、通院に使用した量を正確に知ることは難しいため、実費ではなく1キロメートルあたり15円で計算されます。高速代については、遠方にしか専門病院がないなど、高速道路を利用することが必要と判断される場合には請求することが可能です。ちなみに、ディーゼル車やハイオク車でも1キロメートルあたり15円という金額は原則として変わりません(燃費が悪い車で通院し、それ以上のガソリン代がかかったという場合には、特別な立証が必要になります)。
たとえば、自宅から病院までの距離が往復10キロメートルの場合、15円×10キロメートル=150円ということになります。この他、駐車場代や高速代がかかれば、その実費が支払われます。駐車場や高速道路を利用した場合には領収書の添付が必要になります。これに通院日数を掛けて計算します。
最近は電気自動車なども普及してきましたが、今のところ電気自動車も同じ計算式で通院交通費が支払われています。今後さらに電気自動車等の低燃費車が増えれば、それらについては計算方法が見直される可能性はあるでしょう。 -
(4)自転車・徒歩の場合
自転車や徒歩で通院していた場合には、金銭的な支出をしていないので、通院交通費は請求できません。財産的損害が生じていないからです。
4、まとめ
今回は、通院交通費について見てきましたが、算出方法が明確なこともあって争いになることはあまりありません。問題になるのは、付添人の交通費や高速代、タクシー代などの費用が認められるかという点です。
入院を要するような交通事故に遭った場合、家族などが付き添いをすることが多いと思いますが、これらの交通費を請求する場合には、相手方保険会社が抵抗を示す可能性があります。そのような場合には、弁護士を活用して交渉することをおすすめします。
交通事故の被害に遭われ、お悩みの際には、ベリーベスト法律事務所 松山オフィスへお気軽にご相談ください。交通事故処理についての知見が豊富な弁護士が、あなたが適切な損害賠償金を得られるよう力を尽くします。
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